第五十五話「黄泉ネット開発計画54 管理」
第五十五話「黄泉ネット開発計画54 管理」
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久兵衛が作ったサーバー用のからくり箱が完成した。
通常のからくり箱より、一回り大きかった。
田中殿が設計を組み込んだ。
チューリング殿と後藤殿が確認した。
「問題ありません。」
後藤殿が訳した。
「では、試してみます。」
田中殿が一号機から、サーバーへ情報を送った。
サーバーが受け取った。
「届きました。」
「取り出せるか。」
「はい。」
田中殿がサーバーから情報を取り出した。
「取り出せました。」
「書庫に本をしまって、取り出せた、ということか。」
「そうです。」
田中殿は静かに言った。
「クライアントサーバーシステム、完成です。」
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「田中さん。」
久世殿が前に出た。
「はい。」
「管理の仕組みについて、確認させてください。」
「どうぞ。」
久世殿は記録帳を開いた。
「このサーバーに、誰でも情報を入れられるのですか。」
「はい。繋がっているからくり箱からなら、誰でも。」
「誰でも取り出せるのですか。」
「基本的には、はい。」
久世殿は少し考えてから言った。
「では、誰かが悪意を持って、
情報を書き換えたり、消したりすることはできますか。」
田中殿は少し間を置いてから言った。
「……できます。今の仕組みのままでは。」
「それは、問題ですね。」
「はい。」
久世殿が私を見た。
「忠清さま。」
「なんだ。」
「誰でも使えて、しかし誰かが壊せない仕組みにしたいのです。」
私はしばらく考えた。
「合議制と同じだな。」
「どういうことですか。」
「誰でも意見を言える。
しかし、一人が独断で決めることはできない。
皆が使えて、しかし一人に権力が集まらない仕組みだ。」
久世殿は静かに頷いた。
「忠清さまの言葉で、方向性が分かりました。」
田中殿が言った。
「管理者を決めます。
サーバーの情報を変えられるのは、管理者だけにする。
管理者は、一人ではなく、複数にします。」
「複数にするのはなぜだ。」
「一人に任せると、その一人が問題を起こした時に、
誰も気づけません。
複数の者が互いを確認できれば、不正が難しくなります。」
「合議制の仕組みと同じだな。」
「はい。忠清さまがずっとやってきたことです。」
私は少し驚いた。
「私がずっとやってきたこと、か。」
「はい。一人に権力が集まらないよう、
複数の者で確認し合う仕組みです。
サーバーの管理も、同じ考え方でできます。」
「からくり箱の管理に、合議制を使うとは思わなかった。」
田中殿は笑った。
「でも、本質は同じですよね。
どんな仕組みでも、一人に権力が集まると壊れる。」
「そうだな。」
私は頷いた。
「人が作る仕組みは、時代が変わっても、
同じ問題にぶつかるのかもしれぬ。」
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久世殿が管理者の仕組みを整理し始めた。
「管理者は、三人にします。」
「三人か。」
「はい。一人が問題を起こしても、
残り二人で気づけます。
三人全員が問題を起こすことは、まずありません。」
「三つで安定する、か。」
田中殿が言った。
「忠清さまがよく言いますよね。
一つは点、二つでは揺れる、三つで安定する、と。」
「言ったか。」
「言いました。」
「……覚えておるものだな。」
「忠清さまの言葉は、覚えやすいんです。
具体的で、短くて、何かに似ているから。」
「何に似ているのだ。」
「格言に似ています。」
私は思わず苦笑した。
「格言とは、大げさだ。」
「でも、後から考えると、いつも当たっているんです。」
久世殿が頷いた。
「私も、記録帳に書き留めています。」
「私の言葉を、記録帳に。」
「はい。週一回の寄合で、忠清さまが言った言葉を、
気になったものは書き留めています。」
私はしばらく黙っていた。
「……余計なことをするな。」
「忠清さまのおかげで、仕事が進むことが多いので。」
久世殿は静かに言った。
「記録しておかなければ、もったいないと思いました。」
田中殿が小声で言った。
「忠清さまの格言集、できそうですね。」
「黙れ。」
田中殿は笑った。
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管理者の仕組みが決まった。
田中殿が実装した。
久世殿が確認した。
後藤殿が技術的な観点から問題がないか見た。
「問題ありません。」
「では、完成か。」
「はい。」
田中殿が言った。
「クライアントサーバーシステムと、
管理者の仕組みが揃いました。
これで、黄泉ネットの骨格が整いました。」
「骨格が整った。」
「はい。あとは、これを実際に使っていくだけです。」
「使っていく、か。」
私はさあばあを眺めた。
「骨格ができた。次は、この骨格に肉をつける番だな。」
田中殿が笑った。
「忠清さまの例え、今日も好きです。」
「三百年分の体の知識から来ておる。」
「え、それはどういう意味ですか。」
「人を動かすには、骨格だけでは動かぬ。
肉がつき、血が通い、皮膚で覆われて、初めて動く。
仕組みも同じだ。」
田中殿はしばらく考えてから言った。
「……それは、確かに名言ですね。」
「今日で何度目だ。」
「数えていません。」
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私は書き留めた。
くらいあんとさあばあ、完成。
管理者の仕組み、三人体制で決定。
「一人に権力が集まらぬよう」——合議制と同じ考え方。
久世殿、忠清さまの言葉を記録帳に書き留めていると判明。
私は筆を置いた。
骨格が整った。
合議制と同じ考え方が、
からくり箱の管理にも使えた。
時代が変わっても、人が作る仕組みは、
同じ問題にぶつかる。
そして、同じ答えに辿り着く。
それが、人というものなのかもしれない。
黄泉国情報網計画。
骨格が、整った。
次は、この骨格を動かす番である。




