第五十四話「黄泉ネット開発計画53 サーバー構築」
第五十四話「黄泉ネット開発計画53 サーバー構築」
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三か所が繋がってから、次の問題が見えてきた。
情報が届くようになった。
だが、届いた情報をどこに置くのか。
誰でも取り出せるようにするには、どうするのか。
田中殿が言った。
「サーバーが必要です。」
「さーばー。」
「はい。情報をしまっておく、大きな場所です。」
「情報をしまっておく場所、か。」
「はい。からくり箱が届けた情報を、
一か所にまとめてしまっておく。
必要な者が、そこから取り出せるようにします。」
私はしばらく考えた。
「大きな書庫のようなものか。」
「はい。まさにそうです。」
「書庫に本をしまっておいて、
必要な者が取り出して読む。」
「そういうことです。
書庫が、サーバーです。
本を取り出す者が、クライアントです。」
「くらいあんと。」
「サーバーから情報を受け取る側です。」
「書庫から本を借りる者、ということか。」
「はい。」
田中殿は言った。
「これを、クライアントサーバーシステムといいます。」
「難しい名前だな。」
「仕組みは単純です。
書庫に本をしまう。
借りる者が来たら、貸し出す。
それだけです。」
「それだけか。」
「はい。単純な仕組みが、長続きします。」
「田中殿。」
私は聞いた。
「この「さあばあ」は、誰が作るのだ。」
「私が作ります。」
田中殿は珍しく、迷いなく言った。
「ネットワーク技術者として、
これが一番得意な仕事です。」
「そうか。」
「チューリング殿と後藤殿に手伝ってもらいます。
三人でできます。」
「他の者は何をする。」
「久兵衛班が、サーバー用のからくり箱を作ります。
通常のからくり箱より、記憶する力が大きいものが必要です。」
「記憶する力が大きい。」
「はい。たくさんの情報をしまえるように。」
「書庫が大きいほど、たくさんの本がしまえる、ということか。」
「そうです。」
「久兵衛に話はしてあるか。」
「はい。パーツを大きめに作ってもらうよう、
すでにお願いしています。」
「用意周到だな。」
「田中殿に教わりました。」
私は少し驚いた。
「私が?」
「はい。問題が起きた時に困らないよう、
先に手を打っておくものだ、と。」
「……そんなことを言ったか。」
「言いました。」
田中殿は笑った。
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サーバーの構築が始まった。
田中殿が設計図を広げた。
チューリング殿が隣に座り、
後藤殿が橋渡しをしながら議論が続いた。
「田中殿は、楽しそうだな。」
私は後藤殿に小声で言った。
「はい。」
後藤殿も小声で答えた。
「生前の仕事に一番近い部分だからだと思います。
ネットワークの設計は、田中殿が最も得意なことです。」
「得意なことをしている顔は、違うな。」
「そうですね。」
「生前も、得意な者に任せれば、仕事は早く進んだ。
苦手な者に無理に任せるより、
得意な者に任せる方が、結果が良い。」
「それが、合議の本質ですね。」
後藤殿は静かに言った。
「それぞれが得意なことで貢献する。」
「そうだな。」
私は田中殿を眺めた。
設計図に向かい、文字打ち板を叩き、
画面を確認する。
その動きが、これまでより速かった。
「田中殿。」
私は声をかけた。
「はい。」
「捗っているか。」
「はい。」
田中殿は顔を上げずに答えた。
「思ったより早く進んでいます。
設計自体は、生前に似たものを作ったことがあるので。」
「生前の経験が、活きているのか。」
「はい。黄泉の国の環境に合わせる部分だけ、
チューリング殿と後藤殿に手伝ってもらっています。」
「またか。」
「またです。」
田中殿は少し笑った。
「無駄な経験は、ないんですね。」
「後藤殿がよく言う言葉だな。」
「私も、そう思うようになりました。」
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数日後。
田中殿がサーバーの基本的な設計を終えた。
「できました。」
「早いな。」
「得意分野ですから。」
田中殿はさらりと言った。
チューリング殿が設計図を確認した。
後藤殿が訳す。
「理論的に正しい、と。
黄泉の国の環境にも、よく適合している、と。」
「チューリング殿のお墨付きか。」
「はい。」
「では、次は実装か。」
「はい。久兵衛さんのからくり箱が完成したら、
中に設計を入れます。」
私は久兵衛のもとへ向かった。
「久兵衛。さあばあ用のからくり箱は、どうだ。」
「もう少しでございます。」
久兵衛は手を動かしながら答えた。
「記憶する部分を大きくするのに、
少し時間がかかっています。」
「急ぐか。」
「急ぎません。丁寧にやります。
急いで作ったものより、丁寧に作ったものの方が、長く使えます。」
「そうだな。」
私は頷いた。
「丁寧にやってくれ。」
「はい。」
久兵衛は静かに言った。
「使われてこそ、意味があります。
使われ続けるものを作ります。」
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私は書き留めた。
さあばあ設計、完了。田中殿主導。
くらいあんとさあばあ
書庫にしまい、必要な者が取り出す仕組み。
チューリング殿「理論的に正しい。黄泉の国の環境にも適合している。」
久兵衛、さあばあ用からくり箱を製造中。
私は筆を置いた。
得意な者に任せる。
それだけで、仕事は速く進む。
田中殿が網の設計をし、
チューリング殿が理論を確かめ、
後藤殿が橋渡しをし、
久兵衛が形にする。
それぞれが、それぞれの得意なことで動いている。
合議とは、そういうものだ。
黄泉国情報網計画。
書庫が、できる。
次は、その書庫に情報を届ける番である。




