第五十二話「黄泉ネット開発計画51 本当の意味」
第五十二話「黄泉ネット開発計画51 本当の意味」
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衝突の問題が解決してから、久兵衛班の作業が続いた。
作業場から仮判定所まで引いた線は、うまく機能していた。
次は、仮判定所から閻魔庁への線だった。
三号機が完成し、閻魔庁に置かれた。
「久兵衛。次の線を引いてくれるか。」
「はい。」
久兵衛は静かに答えた。
「仮判定所から閻魔庁まで、引きます。」
「どれくらいかかる。」
「二日ほどでございます。」
「頼む。」
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久兵衛班が動き始めた。
仮判定所から閻魔庁への道を、慎重に歩きながら、
線を引いていく。
壁を通す場面では、久兵衛が道具で小さな穴を開け、
線をそこに通した。
床を通す場面では、アルベルトが丁寧に線を這わせ、
ヴィクトルが固定した。
ジョゼフが最後を確認しながら歩く。
二日かけて、線が繋がった。
「できました。」
久兵衛が報告に来た。
「ご苦労だった。」
私は言った。
「三か所が、線で繋がったのだな。」
「はい。作業場、仮判定所、閻魔庁。
三か所が一本の線で繋がっています。」
田中殿が言った。
「これで、道が繋がった。」
「そうだな。」
私は頷いた。
「一本の線が、三か所を繋いでいる。」
「はい。」
「この線が、黄泉ネットの骨格になるということか。」
「そうです。ここから、線を増やしていきます。
繋がる場所が増えれば、網になります。」
田中殿が接続の最終確認をした。
一号機から、二号機へ。
二号機から、三号機へ。
三号機から、一号機へ。
それぞれ、情報が届いた。
「全て繋がっています。」
田中殿が報告した。
「衝突は起きないか。」
「はい。三台同時に試しましたが、
正しく届きました。」
「三台でも大丈夫か。」
「はい。台数が増えても、
衝突したらやり直す仕組みは変わりません。」
「では、問題ない。」
「問題ありません。」
私はしばらく、三台のからくり箱を眺めた。
作業場に一号機。
仮判定所に二号機。
閻魔庁に三号機。
それぞれが、一本の線で繋がっている。
田中殿が感慨深げに言った。
「三台、線で繋がっています。」
「そうだな。」
田中殿は少し笑った。
「また「そうだな」しか言いませんね。」
「大事なことが、目の前にある時だ。」
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旭殿から声が届いた。
使いの者ではなかった。
二号機のモニターに、文字が現れた。
「仮判定所より。
線が届いているか確認したく。
あっはっは。」
作業場に、笑いが起きた。
「旭殿が使っている。」
田中殿が笑った。
「早いですね。」
「あの方は、新しいものへの順応が早い。」
私も思わず笑った。
田中殿が返信を打った。
「届いています。ありがとうございます。」
しばらくして、また文字が現れた。
「承知しました。
これは便利でございます。
忠清さまにも、よしなに。
あっはっは。」
「旭殿らしいな。」
私は静かに言った。
「文字の端々から、あの方だと分かる。」
「そうですね。」
田中殿は笑った。
「文字にも、その人らしさが出るんですね。」
「そうだな。
生前、報告書を読む時も同じだった。
誰が書いたか、文字を見れば分かった。」
「忠清さまは、何人分の文字を読んできたんですか。」
「数えたことはない。
だが、三百年分は読んでおる。」
田中殿は少し考えてから言った。
「……それは、すごいですね。」
「そうかもしれぬ。」
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私は書き留めた。
三台のからくり箱、線で繋がる。
作業場(一号機)、仮判定所(二号機)、閻魔庁(三号機)。
旭殿「これは便利でございます。あっはっは。」
私は筆を置いた。
一本の線が、三か所を繋いだ。
この線の上を、情報が走っている。
見えない線の上を、見えない情報が走っている。
だが、確かに届いている。
旭殿の「あっはっは」が届いた。
文字は、その人らしさを運ぶ。
情報だけでなく、人柄も届く。
それが、黄泉ネットの本当の意味かもしれない。
黄泉国情報網計画。
一本の線が、繋いだ。
次は、この線を網にする番である。




