第五十一話「黄泉ネット開発計画㊿ 衝突」
第五十一話「黄泉ネット開発計画㊿ 衝突」
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線が引き終わったのは、それから数日後だった。
久兵衛班が、作業場から仮判定所まで、
丁寧に線を引き終えた。
田中殿が接続を確認した。
「繋がっています。」
「では、試してみるか。」
「はい。」
田中殿が一号機の文字打ち板を叩いた。
仮判定所に置かれた二号機のモニターに、文字が現れた。
「届いた。」
田中殿が静かに言った。
「届いたな。」
私も静かに言った。
「はい。一号機から二号機へ、情報が届きました。」
「これで、繋がったということか。」
「まだ、一方向だけです。
今度は二号機から一号機へも届くか確かめます。」
二号機から文字を送った。
一号機のモニターに、文字が現れた。
「双方向、届きました。」
田中殿が振り返った。
「繋がりました。」
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しかし。
次の問題はすぐに出てきた。
田中殿と阿部殿が、二台のからくり箱を同時に操作してみた。
一号機から情報を送りながら、同時に二号機からも情報を送る。
「どうなるのだ。」
「試してみます。」
田中殿が一号機を操作する。
同時に阿部殿が二号機を操作する。
しばらくして、田中殿が眉を寄せた。
「……おかしい。」
「何がだ。」
「一号機から送った情報が、正しく届いていません。
二号機から送った情報も、途中で壊れています。」
「どういうことだ。」
「二台が同時に送ろうとしたため、
線の上で情報がぶつかりました。
ぶつかった情報は、壊れます。」
「衝突したのか。」
「はい。」
田中殿は少し頭を抱えた。
「これが、衝突の問題です。」
「どうする。」
私は田中殿に聞いた。
「シャノン殿から聞いていた通りです。
衝突したら、待って送り直す。
待つ時間をバラバラにすれば、また衝突しません。」
「衝突したら、やり直す。それだけか。」
「それだけです。でも、それが確実なんです。」
田中殿は静かに言った。
「街道で荷馬車が行き違う時と同じですね。
どちらかが少し道を譲れば、ぶつからずに通れる。」
「そうだな。」
私は頷いた。
「では、実装してくれ。」
「はい。」
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実装が始まった。
阿部殿と稲葉殿が、衝突した時に待って送り直す仕組みを、
からくり箱に組み込んだ。
後藤殿とチューリング殿が、技術的な確認を行った。
田中殿が全体を調整した。
数日後。
「試してみます。」
田中殿と阿部殿が、また同時に操作した。
今度は、情報が正しく届いた。
「届きました。」
田中殿が言った。
「衝突は起きなかったのか。」
「起きました。
ですが、待って送り直したので、最終的に届きました。」
「衝突したのに、届いたのか。」
「はい。衝突しても、諦めずに送り直す。
それだけで、届きます。」
私はしばらく黙っていた。
「失敗しても、諦めずにやり直す。
それだけで、届く。」
「そうです。」
「……それは、からくり箱の話だけではないな。」
田中殿が静かに聞いていた。
「どういうことですか。」
「生前も、何度も壁にぶつかった。
その度に、やり直した。
やり直し続けたから、ここまで来た。」
田中殿は少し間を置いてから言った。
「……忠清さまも、衝突したらやり直す仕組みで動いていたんですね。」
「そうかもしれぬ。」
私は静かに笑った。
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私は書き留めた。
衝突問題、発生。
二台が同時に送ると、線の上で情報がぶつかり壊れる。
シャノン殿の解決策:
衝突したら、少し待って送り直す。
待つ時間をずらすことで、再衝突を防ぐ。
実装完了。衝突しても届くことを確認。
私は筆を置いた。
衝突したら、やり直す。
それだけか、と思った。
だが、それだけで届く。
単純な仕組みが、確実だ。
失敗を前提にした設計が、強い。
シャノン殿の言葉が、また証明された。
黄泉国情報網計画。
衝突しても、届いた。
次は、この仕組みを広げる番である。




