表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/72

第五十一話「黄泉ネット開発計画㊿ 衝突」

第五十一話「黄泉ネット開発計画㊿ 衝突」


----------


線が引き終わったのは、それから数日後だった。


久兵衛班が、作業場から仮判定所まで、

丁寧に線を引き終えた。


田中殿が接続を確認した。

「繋がっています。」


「では、試してみるか。」


「はい。」


田中殿が一号機の文字打ち板を叩いた。


仮判定所に置かれた二号機のモニターに、文字が現れた。


「届いた。」

田中殿が静かに言った。


「届いたな。」

私も静かに言った。


「はい。一号機から二号機へ、情報が届きました。」


「これで、繋がったということか。」


「まだ、一方向だけです。

 今度は二号機から一号機へも届くか確かめます。」


二号機から文字を送った。


一号機のモニターに、文字が現れた。


「双方向、届きました。」


田中殿が振り返った。

「繋がりました。」


----------


しかし。


次の問題はすぐに出てきた。


田中殿と阿部殿が、二台のからくり箱を同時に操作してみた。


一号機から情報を送りながら、同時に二号機からも情報を送る。


「どうなるのだ。」


「試してみます。」


田中殿が一号機を操作する。


同時に阿部殿が二号機を操作する。


しばらくして、田中殿が眉を寄せた。


「……おかしい。」


「何がだ。」


「一号機から送った情報が、正しく届いていません。

 二号機から送った情報も、途中で壊れています。」


「どういうことだ。」


「二台が同時に送ろうとしたため、

 線の上で情報がぶつかりました。

 ぶつかった情報は、壊れます。」


「衝突したのか。」


「はい。」


田中殿は少し頭を抱えた。

「これが、衝突の問題です。」


「どうする。」

私は田中殿に聞いた。


「シャノン殿から聞いていた通りです。

 衝突したら、待って送り直す。

 待つ時間をバラバラにすれば、また衝突しません。」


「衝突したら、やり直す。それだけか。」


「それだけです。でも、それが確実なんです。」


田中殿は静かに言った。


「街道で荷馬車が行き違う時と同じですね。

 どちらかが少し道を譲れば、ぶつからずに通れる。」


「そうだな。」


私は頷いた。


「では、実装してくれ。」


「はい。」


--------------


実装が始まった。


阿部殿と稲葉殿が、衝突した時に待って送り直す仕組みを、

からくり箱に組み込んだ。


後藤殿とチューリング殿が、技術的な確認を行った。


田中殿が全体を調整した。


数日後。


「試してみます。」


田中殿と阿部殿が、また同時に操作した。


今度は、情報が正しく届いた。


「届きました。」


田中殿が言った。


「衝突は起きなかったのか。」


「起きました。

 ですが、待って送り直したので、最終的に届きました。」


「衝突したのに、届いたのか。」


「はい。衝突しても、諦めずに送り直す。

 それだけで、届きます。」


私はしばらく黙っていた。


「失敗しても、諦めずにやり直す。

 それだけで、届く。」


「そうです。」


「……それは、からくり箱の話だけではないな。」


田中殿が静かに聞いていた。


「どういうことですか。」


「生前も、何度も壁にぶつかった。

 その度に、やり直した。

 やり直し続けたから、ここまで来た。」


田中殿は少し間を置いてから言った。

「……忠清さまも、衝突したらやり直す仕組みで動いていたんですね。」


「そうかもしれぬ。」


私は静かに笑った。



--------------


私は書き留めた。


衝突問題、発生。


二台が同時に送ると、線の上で情報がぶつかり壊れる。


シャノン殿の解決策:

衝突したら、少し待って送り直す。

待つ時間をずらすことで、再衝突を防ぐ。


実装完了。衝突しても届くことを確認。


私は筆を置いた。


衝突したら、やり直す。


それだけか、と思った。


だが、それだけで届く。


単純な仕組みが、確実だ。


失敗を前提にした設計が、強い。


シャノン殿の言葉が、また証明された。


黄泉国情報網計画。


衝突しても、届いた。


次は、この仕組みを広げる番である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ