第四話 「黄泉ネット開発計画③ 動かす力」
第四話 「黄泉ネット開発計画③ 動かす力」
黄泉の国は、真っ暗だと思われるが、ずっと白く明けきらぬ夜のような明るさを保っている。
悩んでいる間、田中殿はずっと上を見ていた。
このものは悩むときに上を見る癖があるのか?と思っていたが、
田中殿はこの明るさのもとは何かと問うてきた。
「あ~あれは、言葉を持たぬ動物たちの魂の粒が、空に溶けて光となっておる」
田中殿は一言「光、、、」とつぶやき
数時、独り言をつぶやいて、、、急に顔を上げた。
光を凝視し、
「もしかしたら、蓄電できるか?」
と分からぬことをつぶやいた。
「ちくでんとな?」
私は聞き返した。
田中殿は目を輝かせたまま言った。
「光を溜めることです。」
「光を、溜める?」
「はい。」
私はまったく意味が分からなかった。
「光というものは、溜められるものなのか?」
「溜められます。」
田中殿は断言した。
「下界では太陽の光を溜めて、からくり箱を動かしております。」
「太陽の光を。」
「はい。」
私は天井を見上げた。
白く柔らかい光が、どこからともなく満ちている。
動物たちの魂の粒が、空に溶けて光となったもの。
これを溜めることが出来るというのか。
「田中殿。」
「はい。」
「光を溜めるとはどういうことだ。」
「そうですねぇ。」
田中殿はしばらく考え込んだ。
そして言った。
「忠清さま、水瓶はご存じですよね。」
「もちろんだ。」
「雨が降ると水が溜まる。」
「そうだな。溜まった水は、雨が降っていない時でも使える。当然だ。」
「蓄電はそれと同じです。」
私は少し考えた。
「つまり、光が降り注いでいる間に、どこかへ溜めておく。」
「そうです。」
「そして溜めた光を、からくり箱を動かすために使う。」
「その通りです。」
私は腕を組んだ。
「では、その水瓶にあたるものは何だ。」
田中殿は少し困った顔をした。
「それが問題でして。」
「問題?」
「下界では電池というものを使います。」
「でんち。」
「はい。光を溜めておく入れ物です。」
「そのでんちとやらは作れるのか。」
「材料があれば。」
「材料とは。」
田中殿はしばらく考えてから言った。
「砂と、金属です。」
「砂と金属。」
私は思わず立ち上がった。
「田中殿。」
「は、はい。」
「黄泉の国には砂がある。」
「え?」
「川がある。その川には砂がある。」
田中殿の目が丸くなった。
「本当ですか?」
「ある。金属も、生前に武具を持ったまま来た者が、いくらでも持ち込んでおる。」
田中殿はしばらく固まっていた。
やがて、ゆっくりと笑い始めた。
「忠清さま。」
「なんだ。」
「黄泉の国って、意外と何でもありますね。」
私は思わず膝を打った。
「そうなのか。」
三百年、当たり前すぎて気にも留めなかった。
だが言われてみれば、確かにそうであった。
川がある。
砂がある。
金属がある。
そして光がある。
「田中殿。」
「はい。」
「材料は揃うかもしれぬ。」
「でも問題が一つあります。」
「何だ。」
田中殿は少し申し訳なさそうに言った。
「電池を作れる技術者が、、、私にはできません。」
私はため息をついた。
「つまり。」
「はい。」
「また、誰かを探さねばならぬということか。」
「そういうことです。」
二人は同時に「う~~~ん」と唸った。
黄泉国情報網計画。
まだまだ先は長い。




