第三話 「黄泉ネット開発計画② 網と漁場」
第三話 「黄泉ネット開発計画② 網と漁場」
「田中殿。一つ聞きたい。」
私は技術者へ向き直った。
「お主が言っておった「いんたあねっと」とやら。」
「はい。」
「結局のところ何なのだ?」
田中殿は少し考え込んだ。
「そうですねぇ……。」
しばらく唸った後、突然こう言った。
「忠清さま、漁はご存じですよね?」
「もちろんだ。」
「じゃあインターネットは網です。」
「網。」
あまりにも簡潔な答えで、私は思わず聞き返した。
「はい。世界中に張り巡らされた巨大な網です。」
「なるほど。」
私は頷いた。
「では、その網で何を捕まえるのだ?」
「情報です。」
「情報?」
「はい。」
田中殿は机の上に紙を置きながら説明を続けた。
「例えば、誰かが『今年は米が豊作だった』と書いたとします。」
「ふむ。」
「別の誰かは『新しい菓子が流行っている』と書く。」
「ふむ。」
「さらに別の誰かは『幕府の政治について』何かを書く。」
「それら全部が魚です。」
「魚。」
「はい。」
私は腕を組んだ。
「つまり下界には無数の魚が泳いでおるということか。」
「そういうことです。」
「そしてインターネットという網が、それらを捕らえられるようにしておる。」
「その理解でほぼ合っています。」
私は感心した。
なるほど。
網そのものが情報を作るわけではない。
魚を捕らえる仕組みが網なのだ。
「では、その魚はどこにおるのだ?」
田中殿はにやりと笑った。
「それが『サイト』です。」
「さいと。」
田中殿がちょっと間を置いて、ゆっくりとした口調でつづけた。
「魚が集まる“場所”に名前がある」
「それをこちらでは“サイト”と呼んでいます」
私は思わず膝を打った。
「漁場か。」
「え?」
「漁場だ。」
私は確信した。
「魚が集まる場所がある。」
「そこへ網を使って行く。」
「そして必要な魚だけを持ち帰る。」
「それが「いんたあねっと」ということだな。」
田中殿はしばらく黙っていた。
やがて苦笑しながら言った。
「……まあ、かなり乱暴ですけど。そんな感じです。」
私は満足した。ようやく少し分かった気がした。
「なるほど。下界の者たちは毎日、海へ漁に出ているようなものなのだな。」
「言いえて妙ですが、その通りです。」
理解したことに、私は少し興奮してしまったが、
冷静になれと自らを律した。
だが、数時、笑みが止まらず、隠すのに苦労した。
「さて、、、田中殿、これから作ろうとしておる仕組みには「ふたつの先」があるのはお分かりか?」
田中殿がうなずいた。
「ひとつ、黄泉の国内部での情報伝達、
ふたつ、黄泉の国から下界の「網」へのつなぎ」
私は情報というものが共有されることの大切さを身に染みて感じてきた
田中殿はふたつ目の方に重きを置いて居るように感じるが、
私としてはひとつ目の方に重きを置いて行いたいと思って居る
閻魔様からも、そのように仰せつかっておる
私は、今までの閻魔さま、小野篁さまとのやり取りを田中殿にはなした。
田中殿は、時間はいくらでもありますので、気長にやっていきましょうと。
あっさり、ひとつ目に重きを置いて行っていくことを了承した。
案外、ひょうひょうとした人柄なのだなと、少しうらやましく思えた。
私は少し固いといわれる。
大きな失敗したら自害しなければいけない世で生まれた。
有能な人物があらぬことで疑われ、誤った内容で自害したことを知っておる。
それはあってはならぬと感じ、出来る範囲で自害を禁止した。
その実、このものがひょうひょうと生きられる世の中になったのかもしれぬ。
あの施策は無駄ではなかったと思える。
少し有余、余計なことが頭をよぎったが、本題に戻らねば。
田中殿はひとつ目を行うにあたり、
からくり箱と、
からくり箱から情報を受け取るからくり箱、
その二つをつなぐ線、
からくり箱を動かすための力が必要だと言った
田中殿は二つをつなぐ線を構築できるが、
線自体を作ることはできないという。
あと、からくり箱を作ることは出来ないし、
情報を受け取るからくり箱も作れないといった。
そして、
からくり箱を動かす力として利用できる物は黄泉の国にはないかと聞いてきた。
二人で「う~~~ん」と悩んでしまった。




