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異種族の交わる町ゾイル

 新しくフェンリルが加入した俺達一向は山の麓にある町へとたどり着いた。

 町に入ると異様な光景が俺の目に飛び込んでくる。

 町に居る人達は、耳が長い人種や顔が獣の奴、人間の様だが角が二本生えている奴など色んな種族が入り乱れていて、ファンタジー世界を彷彿とさせる。

 フェンリルを連れて歩いていても、誰も驚きもせず普通に生活をしている。

 町を抜けた先にある山を越えるとゼイルさんの故郷があるはずだけど、山の麓には何やら関所みたいな物も見受けられた。

 (迂闊にあんな関所みたいな所には行けない。情報収集が先だな。)

(おい、シュウよこの町には魔族の反応がチラホラとあるぞ!喋りかけるなら魔族は避けろ)

 念話を介してカイザーが忠告をしてくるが、魔族を見分けるスキルなんて持ち合わせていない。

(どうやって見分けるんだ?)

(案ずるな、我は見分ける事が出来るから教えてやる。その代わりと言っては何だがアレだ、我は肉を所望する)

(えらく協力的だと思ったら肉かよ!でも、危ない橋を渡るぐらいなら肉なんて安いもんか)

(そういう事だ、ちなみに関所の方にも魔族の反応があるから気をつけろ)

 町に入ると居酒屋や武器屋の看板はあるが食料品を売ってそうな店は見当たらない。

 まぁ、情報収集するなら居酒屋がベストか?

 カイザーを連れ町の中を歩くがやはり食料品店らしき所は見当たらず仕方なく居酒屋へと入っていく。

(ついでに腹ごしらえでもするか)

 店に入るとカウンターの奥には人間らしき人が椅子に座っている。

「すいません、食事は出来ますか?」

「ん?飯か?居酒屋だから簡単なもんしか出せないよ?」

「酒のつまみでも大丈夫です。出来れば生肉とかあれば出してもらえますか?コイツに食わしてやりたいんで」

「へえー、ガルドムじゃねか兄さん魔物使いか?」

「んー似たようなもんだけど詳しくは言えない」

「確かにな、言っちまったら弱点言うのと大して変わんねーからな」

「待ってろ直ぐ作ってやる」

(あんまり気を抜くなよ、そいつは人間じゃなく獣人が人間に化けてるだけだ)

(そんな事も分かるのか?)

(我もオーラが見えるからな、そいつ悪意は感じられないから大丈夫だと思う)

(ありがとう助かるよ)

(フッ、我は肉の為にやってるだけだ)

「出来たぞ、野菜と肉の炒めたヤツだ。それとガルドムには生肉は少ししかねぇから、この浮遊魚の焼いたヤツでいいか?」

(ムッ!我が野菜のヤツを食うから貴様は浮遊魚を食え!)

(嘘だろ!)

「すまない、どうやら野菜炒めの方をガルドムは食いたいみたいだ」

「なんだそりゃ?ガルドムって野菜なんて食うのか?」

「さぁ、俺もよく分からないが野菜炒めの方がいいみたい」

「いただきまーす」

(浮遊魚も脂がのってて美味いんだけどな)

(ソイツは食い飽きただけだ。人が作る料理の方が断然美味いのは知ってるぞ)

(グルメ過ぎるだろ!)

「一つ聞きたいんだが、この町には食料品を売ってる店は無いのか?」

「ああ食料品か、関所ん所にあるぞ。ただ関所に居る4大魔族のバイゼルに許可をもらわないと通してもらえないぞ。なんせ関所の向こうの山を超えたら魔族の国だからな。兄さんは魔族の国に行くのか?」

「山を超えた先に人間の町があったはずなんだけど?」

「ああ、あの町ならもう無いぜ五年前に滅ぼされたからな。今は魔族の町になってるよ」

「魔族の町?」

「そうだ、まぁ魔族って言うと人間からすれば、恐怖を感じるだろうが一般人みたいな魔族がいるだけさ。行くってなら止めはしないが気をつけて行けよ」

「そうか、ありがとう少し考えるよ」

「カラーン」

 俺が店を出ようと席を立つと店のドアが開き、背中に漆黒の羽を生やした男が入ってきた。ソイツは俺の隣に座り店主に話しかける。

「久しぶりに来たけど閑散としてやがるな。元気にしてるのか?」

「はは、元気は元気だけど言われるように客はあんまり来ないですよ」

「ははは、いつでも俺の所に来ていいぞ?働き者は大好きだ。で、来客ってのはお前か?」

 男は品定めするように俺の顔を睨み付け威圧してきた。

「バイゼルさん、どうやら山の向こうに行きたいみたいだよ。」

「まぁ座れよ。この町を仕切ってる俺からすれば意味もなく関所を通すわけにはいかないからな。何しに行くか聞いてもいいか?」

(シュウよ、此奴そうとう強いぞ。今の貴様では全く歯が立たん。正直に話せ)

 カイザーからの念話を聞き俺はバイゼルの横に座り直した。

「山を超えた所に人間の町があったはずなんだが、その町に行こうと思ってこの町に寄った所だ」

「町には何の用だ?」

「友の育った町でね、俺が旅をしていると言ったら、ソイツの母の墓が、その町にあるから代わりに墓参りしてくれと言われただけだよ。」

「嘘は言ってなさそうだな。他には?」

「後は自分探しかな」

「自分探し?」

「ああ、情け無い話だけど実は俺には全く記憶が無い。目が覚めた時は大草原で倒れていたんだ。その俺を助けてくれたのが、さっき言った友だ。この世界を旅して回れば何か思い出すだろうと思って旅をしている」

「ははは、なんだそりゃ?記憶がねぇって災難だな。そういう事なら仕方ねぇか」

「それと自分が一体なんなのかさえ分からない。本当に人間なのか?って思っている」

「そうか、お前のオーラを見る限りでは、たぶん人間だと思うぞ?ただ魔族に近いがな」

「俺は魔族なのか?」

「いや違う、魔族なら俺のように漆黒の羽が生えている。普通の魔族は羽は生えてるが、こんな真っ黒じゃねえしな。中々面白そうなヤツだな、山を超えたいなら許可してやるよ。ただし、身の安全は保証しないがな。超えたいなら後で関所に来な、通してやるよ」

「ああ、後で寄らせてもらうよ。ありがとう」

「魔族にありがとうって変わったヤツだな。初めて言われたぜ!ははは!」

「じゃあ店主またな」

「ええ」

 バイゼルが出て行くと店主は正体を曝け出すように獣人の姿に戻る。

「ははは、悪いなこの居酒屋は不審者を見つける為にあるんだ。でも、お前すげぇな!バイゼルさんが気に入った奴なんか初めてみたぜ。ほとんどの奴が町から追い出されるか、反抗してぶっ殺されるだけだからな。運が良いよ」

「はは、殺されなかっただけラッキーと思っておくよ。じゃあ行くよ」

「ああ気つけてな!」

 店を出るとさっきまでいた町人達の姿は消えていて、無人の町と化していた。

(どうなってんだ?)

(ははは、簡単なことよ。バイゼルに恐れをなして家に引きこもってるだけだ)

 俺は無人と化した町を尻目に、バイゼルの待つ関所へ足取りは重いが歩みだした。

 いくら気に入られたとはいえ、力の差は歴然だ、俺の言動一つで生死が決まってしまう。

 関所前に着くと待ち構えていたバイゼルから声をかけてくる。

「おう、来たか」

「この山を越えれば魔族の国か」

「魔族と聞いてビビったか?」

「確かにビビってると思う。バイゼルさんみたいに話を聞いてくれる魔族ばかりじゃないだろうと思うし、何より交戦的な魔族が怖いな。俺からすれば恐怖の後を追いかけてるみたいなもんだよ」

「まぁ、しばらくは大丈夫だ。魔王城近くになるとそんなヤツも多い。それとコレが許可証だ」

「許可証?それは俺の位置を把握するためじゃないのか?」

「ははは、中々察しがいいな、その通りだ。俺が通した以上責任は俺にあるからな、くだらない事すれば殺しに行かなきゃなんねえ。それと一応だが俺の名前が入っているから少しは守ってくれるかもな。あと、この許可証を持って魔王城近くの町に居る俺の部下に渡してくれ。悪いようにはしないはずた。」

「分かった。でも、もっと放ったらかしかと思ったけど意外と身は守れるみたいだな。何とか辿り着いてみせるよ」

「ほんと変わったヤツだな、あと名前聞いてなかったな」

「俺はシュウ。悪いがコレだけしか思い出せてない」

「シュウよ、一つだけアドバイスだ。俺意外にも4大魔族ってのがいる。アゼルってヤツは変わり者だが、ガイゼルってヤツは魔族の中でも嫌われてる。人を殺すのに何の躊躇いもなくて、平気で卑怯な事もしやがる。特にお前みたいに魔族にありがとうとか言うヤツは狙われるかもしれん。アイツが死んでも誰も悲しんだりしないが出来れば遭遇しても戦闘は避けろ。」

「あと一人は?」

「そいつは俺もよく知らねぇ。もしかしたらアゼルなら知ってるかもな」

「分かった、とにかくガイゼルって魔族には気をつけるよ。色々ありがとう」

「ケッ!そういうのは無しだ寒気がしやがる。だが死ぬなよ、出来ればまた会いてぇ」

「ああ、行ってくるよ」

 バイゼルに許可証をもらい食料の調達を済ませた俺は、山の麓にたどり着く。道のりは遠そうだが行くしかなさそうだ。

 少し登った所で天使のアイが姿を現し俺に話をしてくる。

「ここから先は魔族の国だから私は姿を見せれないし、念話も出来ないよ。魔族の国を抜けたら、この笛を吹いてちょうだい、そうすればまた会いにくるわ。しばらくは私も神様の所に居るわ。気をつけてね」

「ああ、ありがとう。またね」

 アイと別れ俺はカイザーと魔族の国を目指す。

 

「シュウよ、鬱陶しい天使も消えた事だ、この世界の事を教えてやろう。たぶんあの天使は偽物だ!」

「えっ?」

「道すがら色々教えてやろう」

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