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魔族と天使と転生者と獣神

 結構歩いたな。日も暮れてきたし、そろそろ寝る所を探さないとな。

 近くに川とかがあればいいけど、そんな都合良くあるわけない。

「おっ!」あそこなら雨風防げそうだな。

 岩山の少し凹んだ所を見つけ、もらったテントを張ることにするが、ふと耳入ってくる声に緊張が走る。

 岩山に近づくとその声はあからさまに大きくなる。

「グルルルっ」

 岩山の一番上を見ると毛の長い狼っぽいモンスターが、口から涎を垂らし俺を睨んで威嚇する。

 マジか・・・今から戦闘かよ。町を出てから一度もモンスターなんか出なかったのに。

 剣を構えようとした瞬間モンスターが大きな口を開け飛びかかってきた。

「くっ!」油断しすぎたな。かろうじてモンスターを躱したが、モンスターの爪が防具を掠めた。

 あの爪・・・結構やばいな。

「シュウ油断しすぎだよ。この世界はモンスターだらけだよ。」

「そいつは、ガルドム。素早い動きで爪と噛みつきで攻撃してくるよ。」

 剣先をガルドムに向け間合いを測る。

 ガルドムは、俺の周りをグルグルと回り出し少しずつ距離を詰めて来る。

 さっき獲得したスキルを使ういい機会だな。

 町を出た後にもらったスキル・・・拳賦。

 どうやら、このスキルには派生スキルみたいなのがあって、戦闘を繰り返す事で覚えられるスキルがあるみたいだ。

 拳賦を獲得した時に最初から付いてきたスキル、拳波。

 少し力を溜め拳を撃ち抜くと、拳から拳圧が放たれる。

 射程距離は約2メートルぐらいで溜めに必要な時間は1秒程。溜めてる間も行動が出来るってのもメリットだ。

 俺は剣をしまい拳にメタルナックルを装備した。

 実戦で初めて使うスキルだから色々やってみないとな。

 俺は左拳に力を溜めながら、右拳が当たる間合いまで詰めた。ガルドムは睨みを効かせ噛みついてくる。

 噛みついてきたガルドムの顔を右拳で殴りつけたがダメージはあまり無さそうだ。

 サラマンダーより防御力はありそうだな・・・

 攻撃を喰らったガルドムは、俺を睨みつけながら距離を取るために後方へジャンプした。

 俺はそのジャンプに合わせるように、ガルドムの右側へとジャンプし、ガルドムの脇腹を目掛け左拳を繰り出す、拳から拳圧が放たれガルドムの脇腹に当たるとガルドムは、吹き飛び岩山へと激突した。左の拳破を放った直後に右拳に力を溜め追い打ちの右拳破を放つ。放たれた右拳破はガルドムの顔面を撃ち抜いた。

 ガルドムはそのまま倒れ痙攣を起こしている。

「まぁ、倒したから殺すのはやめとこうか・・・俺がコイツの住処に入ったみたいだし。」

「レベルが上がりました。新しい派生スキルを覚えました。」

 おっ!派生スキル?何だ?

 ステータスオープン。派生スキルは双竜拳破?

 両手の拳から同時に拳破を放つ事が出来る、ただし次に使う時は30秒のクールタイムが必要。

 おっ!クールタイムは長いけど必殺技みたいな感じだな。

 とりあえず明日起きたら使ってみよう。

 痙攣してるガルドムの横にギルからもらったカバンからテントを取出し設置する。

「って言うか、こんなモンスターのいる所で寝て大丈夫なのか?」

 設営したテントの前で火を起こしシュウは、貰った干し肉を口に入れた。

「さすが名産品だね、噛み締める度に旨みが溢れ出てくるよ。」

 腹が満たされ、気絶しているガルドムの横で深い眠りへと落ちていく。


「寝たみたいだね。神様、魔族が接触してきましたが如何いたしましょうか?」

「今のシュウでは、まだ勝てないだろう。魔族に勝てるのは転生者だけだ、神である私は下界には干渉出来ないからな。これからのシュウ次第だが、魔族に目を付けられた以上気を抜かないようにせねばな。アイよ、シュウのサポート頼んだぞ」

「分かりました。」

「ああそれと、さっき戦っていたガルドムだが、ソイツはモンスターではないぞ。まだ子供で見た目は似ているが、おそらくフェンリルの子であろう」

「ゲッ!獣神フェンリルの子だとしたら、シュウは獣神にも目を付けられる事になるのか」


「んーっ、なんかモフモフするな。」

 目を覚ました俺の横には、寝る前に倒したガルドムが寄り添うような形で寝ていた。

「ゲッ!何だコイツ、すげぇモフモフじゃんか。って何で俺に引っ付いて寝てんだよ。倒したから仲間になったとかか?」

 フェンリルとは知らずに倒してしまった俺は、異世界ならではのモフモフを味わいながら、再び眠気に襲われた。

 朝日がのぼり、太陽の光がシュウを照らすと眩しさで目を覚ました。

「ああー、よく寝た。今何時だ?って異世界だったな。時間なんて分かんねえわ」

 目を覚ました俺の傍らでは、昨日の戦いが嘘だったようにガルドムが毛繕いをしている。

「まだ居たのかよ。まぁ攻撃して来そうもないから大丈夫と思うけど、ちょっとリラックスし過ぎじゃねえか?ってコイツ俺の干し肉勝手に食ってやがる」

「やっと起きたね。おはようシュウ。さっそくだけど、そのガルドムに関してなんだけど、その子実は獣神フェンリルの子みたいだよ。たぶんシュウに負けたから懐いちゃったと思うよ。」

 フェンリルは、シュウに近寄りシュウの顔を舐め出した。

「もう何だよ。めっちゃ戯れてくるじゃんか」

「私の名はカイザーだ」

 ん?何だ?何処から聞こえた?

 辺りを見渡しても声の主は見つからない。キョロキョロと見渡していると頭の中に再び喋りかけてくる。

「鈍感だな貴様。今は念話と言うスキルで貴様の脳に直接喋りかけておる。」

 フェンリルの方を見るとフェンリルが、もう一度舐めてきた。

「お前か?」

「お前じゃない、カイザーだ。天使が隣にいるところをみると、貴様転生者だな。魔族と戦うつもりならやめておけ。貴様など、1分も掛からず殺されるぞ」

「幸い、転生者とはバレてはないんだろ?なら、ひっそり暮らすべきだな。」

「バレてはないんだけど、魔族の大事にしてたペットを倒しちまって、目を付けられてる状態だよ。どのみち狙われてるのには変わりない」

「お主シュウと言ったか、貴様少々危うい性格をしとるの。素直に何でも答え過ぎだ、仮にも獣神であるフェンリルとはいえ、人間と仲が良いとは限らんぞ?ワシが魔族側だとしたら、お前の情報を話すかもしれんぞ?」

「言われればそうだけど、カイザーが魔族側なら俺の寝込みを襲ってるんじゃないか?後は何となく大丈夫だと思っただけだ」

 (此奴面白いな異界人でこの世界を知らないとはいえ、真っ直ぐな目でワシを見よる。死なせるには惜しい心の持ち主だな)

「フン、感だけでワシの事を判断するな。魔族に襲われても助けたりせんぞ」

「俺より弱いのにどうやって助けるんだよ?」

「貴様、ワシの事を弱いだと?今は力を失ってるだけじゃ!全盛期の100分の1程度しかない我を相手に手こずってる小僧が生意気だぞ!力を取り戻したら、いの一番に仕留めてやるわ!」

「はいはい、分かったからもういいよ。先を急ぐから、またな」

 テントをカバンに直し、山の麓にあるという町へと向かう準備をしているとカイザーが念話で喋り掛けてくる。

「小僧!貴様我を軽く見ておるな?面白い、貴様が野垂れ死ぬのを見るのも一興だな。」

「案内人もいることだし、別に付いてこなくていいよ」

「何!まだ我を愚弄しよるか!そのか細い寝首をかいてやるわ!」

「シュウ!後々面倒だがら獣神に喧嘩売るな!」

「面倒だと?貴様も、我を愚弄するか!力が戻ったら二人まとめて血祭りにしてくれるわ!」

 やべ、相当お冠だな。こういう時はにげるが勝ちだな「アイ行くぞ」

 アイと念話で逃げる算段をつけ、カイザーを置き去りにする。

「カイザーすまない、お詫びと言っては何だが特産品の干し肉でもどうだ?」

「干し肉?さっきの美味いやつか?よこせ!」

 干し肉をカイザーに渡すフリをして、町とは逆に思いっきり投げる。

「貴様何を!」

 カイザーは獣の本能が出てしまい投げられた干し肉を追いかけてしまう。

「食べ物を粗末に扱うとはなんたる愚行か!」

「今だ!」

 俺とアイは、カイザーから逃げるように全力で走り出した。

 上手くいったな、戦闘じゃないから身体強化は使えないけど、このまま走り続けたら逃げ切れるだろう。

 街道を走り続けた俺達は、大きな橋がある開けた街道へ出る。後ろを振り返ってもカイザーの姿は見えずヤツから逃げおおせたと溜め息混じりて深呼吸をして橋を渡る。

「やっぱ獣神とはいえ犬だったな。まぁ犬とか言ったらブチ切れて噛みついてきそうだけど」

「誰が犬じゃ!」

 前と後ろを見るが、カイザーは見当たらない。

「我から逃げおおせるとでも思ったか?小僧よ」

 橋の欄干から唸り声が聞こえ、恐る恐る顔を向けると、そこには牙を剥き出しにしたカイザーが俺達を睨んでいた。

「ゲッ、追いついたの?」

「当たり前だ!貴様らより先に着いておったわ。所詮は人の足だ。スキルが使えないなら、追いつくなど造作もないこどだ。観念して干し肉をよこせ」

「バカ、今ので最後だ!人が寝てる間にほとんど食っただろ!俺の一週間分の干し肉だったんだぞ!次の町まで芋しか食うもんねえんだぞ。そんなに腹減ってんなら自分で狩しろよ」

「何?もう無いだと!仕方ない次の町で食料の補給だ。さっさと行くぞ」

 何か付いてくる雰囲気で喋ってやがるけど、コイツ本当に獣神とかいう凄いヤツなのか?単なる食い意地はってるだけにしか見えないぞ。

 まぁ悪いことしそうな感じじゃないから、大丈夫と思うけどあんまり信用できそうじゃないのも確かだ。

 

 かくして人間一人、獣神一匹、天使一人?の度は幕を開けるのであった。

 

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