第3話 少女じゃなくて幼女なんかい!
昨日の事を振り返ってみよう。
巷で噂の魔法少女に憧れていた乃亜は、その願いが届いて見事変身を遂げました。そして、秘密結社アークのアクアクという怪物を蹴散らしました、とさ。
なのだが、いきなりなったものだから色々と問題が起きてしまった。
裸体を晒している咲夜の介抱、そして誰にもバレずに体操服を着せた。その後は自分だ。ピッピーから聞かされた通り、変身を解いたら乃亜も咲夜同様に素っ裸になっていた。
学校では体操服を着て適当な理由付けで誤魔化せれたけれど、家ではそうはいかなかった。当然ながら母親から雷が落ちて大激怒。
制服は毎日着用するものとはいえ、高いから数も少ない。無駄に一着分ダメにしたから大目玉を食らった。
「と、まあ、私が魔法少女になって早数日。未だに実感が無いんだよね」
「思ってた割に随分と能天気ピョン」
「うわっ、ビックリしたー!」
自室で独り延々と語っていると、まさか返答する者が居るなんて思いも寄らなかった。そんな乃亜に相槌を打ってくれたのは、昨日助けようとした兎。まさかの窓から登場だ。
「此処2階だよ? どうやって登って来たの?」
「跳んで来たピョン」
8メートル近く飛び跳ねるアオザメも仰天ものだ。ただ、サラッと言ってしまうあたり本当なのは確かみたい。
「誰かに見られたりしたらどうするつもりだったの?」
「生き物っていうのは、信じられない光景を目の当たりにしたら『目の錯覚だ』『きっと疲れているに違いない』って自分に言い聞かせるピョン」
(凄く説得力のある言葉だ)
乃亜は軽く息を吐いて、時計に目を移してからカレンダーに視線を移す。
今日は土曜日。学校はお休みで、時間帯は午前十時を回ろうとしていた。
「今日は暇な日だから質問し放題だね」
「気が合うピョン。ピョンも魔法少女について、なんなのかを話そうと思っていたピョン」
なるほど、だからわざわざ乃亜の部屋まで訪問して来たのだね。
「その前に、お互い自己紹介が先ピョン。ピョンはラビピョン。《ピュアアニマル》という魔法少女の手助けをする妖精ピョン」
「えっと、私は剣城乃亜って言います。ご丁寧にどうも」
まさか、律儀に挨拶をするなんて。兎が頭を下げている姿が愛くるしく、なんか可愛い。なんて、乃亜は思っていたりする。
「ノアには、魔法少女がどんなものかちゃんと理解する必要があるピョン。今後の為にもピョン」
「今後の為?」
「秘密結社アークと戦う為にピョン。因みに、ノアは魔法少女の事をどんな風に想像しているピョン?」
「可愛い姿に変身して悪党を魔法で懲らしめ、困っている人々を助ける、かな?」
「全然違うピョン。強靭な肉体と魔法を駆使して悪党を捻り潰し、二度と歯向かわないよう徹底的に蹂躙するピョン」
解釈違いもここまでくるとなると、いっそ清々しいまである。蹂躙とか、普通キャピキャピとした可愛い妖精が口にしちゃいけない単語上位だ。
「それもうヤクザだよ……」
「強大な力を持つという事はそういう事ピョン」
「なんか、私の思ってた魔法少女とイメージ反転しちゃうな」
「力こそパワーピョン」
「物騒過ぎるしアホっぽいピョン」
あまりにも脳筋だった。動揺して、ラビピョンの語尾が真似したくなるくらい。
「あっ、言い忘れてたピョン。ノアは、まだ魔法少女じゃないピョン」
乃亜は驚愕した。じゃあ、自分が変身した姿は一体何なのか?
「一括りに言えば魔法少女ピョンけど、魔法少女にも三段階のレベルとそれに伴った呼称があるピョン」
「三段階のレベル? それに呼称?」
「《魔女》《魔法少女》《魔法幼女》と言った上、中、下の格付けがされているピョン。因みにノアは、まだまだひよっこの魔法幼女ピョン」
なんともややこしい名前だ。
「それにしても少女じゃなくて幼女なんだね、私」
高校2年生にもなって、まさか幼女呼びとはなんとも言えない気持ちだ。
「魔法少女にレベルアップするには、今以上の純粋な想いが必要になるピョン。そしてそれが最高潮に達すると、魔法少女に覚醒するピョン」
「因みに咲夜ちゃんは?」
「魔法少女ピョン」
その差は何だ? 何を持って魔法少女と呼び、魔法幼女と呼ばれるのか疑問でしかない。
「魔法少女には、その人だけにしか扱えない特別なアイテムが授けられるピョン」
「特別なアイテム? 杖とかそんな類い?」
「その魔法少女によって大きさや形は変わるピョン。昨日の魔法少女なら、あのハンマーがきっとそうピョン」
やはり、あの手にしていた長細いハンマーがそうだったか。
「《マジピュアアイテム》を持つ人が、魔法少女の証明ピョン」
「そのマジピュアアイテムを持っていたら、やっぱり強いの?」
「強いも何も、魔法少女が持つ魔法を最大限まで引き出す強力なアイテムピョン。魔法だけじゃない、他能力も向上するピョン」
へぇー、と感嘆の息を吐く。持っていないだけでも昨日みたいな力だったのに、更に今以上の力を得るとなると相当なアイテムだ。
自分もいつか、マジピュアアイテムを手にしたいな、と心の中で思った。
「私の魔法も、マジピュアアイテムを持てば強くなれるんだね」
「幼女でも十分強力ピョン」
「……幼女って言うのやめてほしいな。せめて、頭に魔法少女を付けて」
「幼女は幼女ピョン」
恥ずかしい。人前で喋らないとは思うけど、私自身も細心の注意を払った方がいいと思う。多分だけど、いつか釣られて「幼女」って言いそうになる。
「さてと、そろそろ魔法少女の存在意義を話すピョン」
「秘密結社アークを倒すんじゃないの?」
「ピョン。それで大体合ってるピョン」
「大体? 正解じゃなくて?」
「魔法少女は、秘密結社アークを倒す為に生み出された存在ではないピョン。元々、幸せを振り撒く為の存在ピョン」
現魔法少女と比べると、確かにその存在意義が全然違う。昔の魔法少女を例えると平和の為に。現代の魔法少女を例えると戦う為に。コンセプトが違う。
「秘密結社アークという存在が世に出回り始めた辺りから、魔法少女が使う魔法にも影響が出てるピョン」
「それが、私や咲夜ちゃんみたいな相手を倒す為の魔法」
「それでも使い様ッピ。自分達の魔法をどの様な形で使うかは、人それぞれッピ」
そうだ。何も、相手を倒す為の魔法だからと言って選択肢がそれだけという訳でもない。自分自身の魔法を如何にして使い、どんな形で活かすのか。全部己の気持ち一つ。
「ラビピョンは、私の魔法をどんな風に使って欲しいとかあるの?」
「ピョンは、昔のように誰かの為に魔法はあると思っているピョン。でも、ピョンは魔法少女じゃないピョン。最終的にそれを決めるのはノアピョン」
ピョンはノアに付いて行くだけピョン、と最後に付け足した。その言葉を聞いて、乃亜は少し安心した。
使命に駆られて、それを全うするのが魔法少女じゃないって。少なくてもラビピョンは、自由に魔法を使って良いって言っている。
だったら乃亜のやりたい事は一つしかない。
「私は、街の皆を守りたい。その為にこの魔法を使うと約束するよ」
「そう言ってくれて、ピョンも安心したピョン」
乃亜はギュッと拳を握り、この約束を強く心に刻み込んだ。
「ピョンの話はここまで。ここからは、魔法少女の先輩に聞いてみるのも悪くないピョン」
「魔法少女の先輩?」
「昨日の女の子ピョン。神城咲夜ピョン」




