第13話 終わりとそれから
嘘吐きました。なんか1話分ストックありました。なので出しました
今日も街の噂は魔法少女の事で持ちきりで、絶える事は一切なかった。特に最近話題として上がっているのが、先日とある公園で起きた魔法少女同士の戦い。出来る限り魔法少女は姿形を残さないよう徹底しているものの、今回に限ってはそう上手くはいかなかった。
その理由としては、単純に派手に暴れ過ぎたという。公共の場でとも理由だったりその他にも色々あるが。
この一件で、この街の魔法少女達は自粛するようになった。秘密結社アークも出没する具合も落ち着き、より魔法少女が世に出る頻度は少なくなっている。
だけど1人だけ、それでも尚毎日街中を駆け抜ける魔法少女が居る。
「よし、今日も1匹殺せた。それにしても、次から次へとゴキブリのように湧いてきてるね」
とあるビルの屋上で独り言を呟く。月夜に照らされ、風で靡く髪や衣服を抑えながら街全体を見渡す。うっとりする街の明かり、そして夜だというのに未だ鳴り止まない喧騒。
そこへ。
「のあちー偶然ね。こんな所で何をしているのかしら?」
「黒美ちゃんこそどうしたの? 珍しいじゃん」
黒美は乃亜の隣に座り込み、下から覗くようにしてのほほんとした表情を浮かべる。
「ただの散歩よ。するにはもってこいだと思いませんこと?」
乃亜ははにかんだ表情で「そうだね」と返した。
「咲夜ちゃんは?」
「さくよんはお家で寝ていますわ」
公園での一件後、3人は魔法少女としての動き方が大いに変わった。
乃亜はピュアアニマルを見つけては始末すべく、毎日休まず街中を駆け回って探索している。その地道な努力のお陰か、今日までに13匹とピュアアニマルを狩る事が出来た。
黒美は周辺の魔法少女の所在について調べている。1人でもこちらに協力してくれる者を探す為に。ただ、未だひとりとしてピュアアニマルを全滅させる事に賛同してくれる者はおらず、全て空回りで終わっている。
咲夜はそんな2人のサポートに徹している。とはいえ、それは渋々という形でだが。まだ咲夜は2人みたいに割り切れておらず、少しばかり迷いが生じている。これからどう魔法少女として活動するかは、見極め中とのこと。
「毎日毎日、よくもまあ動けますね。そんなに体力が有り余っているのでしたら、黒美の相手をしてくれますと助かります」
「え、嫌だけど」
即答で断る。
「ねえ黒美ちゃん、黒美ちゃんはどうして私に協力してくれるの?」
「それは愚問。同じ魔法少女同士だから。それに、得体の知れない謎生物がこの地球を侵略しようとしているのを分かっているのに、何もせずというのは如何かと?」
「事情の知らない魔法少女からしたら、私達は悪党にも見えるけどね」
黒美はクスリと笑う。彼女は別段そこまで気にしてはいないようだ。
「争いは避けて通れない。他の魔法少女からしたら、黒美達のやっている事は秘密結社アークとなんら変わりません。ですが」
黒美は立ち上がり、変身を解除した後に微笑んで言った。
「それでも、のあちーは止まらないんでしょう?」
「うん、止まらないよ。止まれない。もう後戻りが出来ない所まで来ちゃってるし」
「でしたら、その様な考えはゴミ箱へポイして下さいな。いざという時、それが弊害となってこれまでやってきた事のしっぺ返しが降ってきますわよ?」
悪党にも悪党の正義があり、訳がある。自分達だってピュアアニマルを殺すのはこの地球を守るため。
例え誰になんと言われようとも、自分達がやっている事は皆の為だと胸を張って言う。
でないと、精神が保たない。
「のあちーは明日もピュアアニマルを探すつもりで?」
「勿論」
「そう気張るのは良い事ですが、偶には息抜きも必要です。なので、景気良くパーっと3人でぶらりと遊ぶのはどうでしょう?」
乃亜は眉を顰めて難しい表情を浮かべる。わざわざ顎に指を当てて考える始末。そして数秒後、小さな吐息をして口を開く。
「分かりましたー。じゃあ何時にから遊ぶ?」
「折角ですから、スイーツ巡りなんてどうでしょうか?」
乃亜は明日の予定を楽しみに計画立てる黒美の声に聞き耳立てながら、夜の街の風景に黄昏る。
(もし私が魔法少女になっていなかったら、ああやって家族と団欒して今日を過ごしてたんだろうなぁ……)
今となっては叶わない夢に思いふけながら、溢れ出しそうな気持ちをグッと堪えて呑み込んだ。
(でも、これは私自身が選んだ事だから。嘆くなんて許されない)
自分が置かれている状況に思わず鼻で笑ってしまう。どうやらそれが黒美にも聴こえていたらしく、何が面白いのか首を傾げていた。
「まだまだ夜の風は寒いし帰ろっか。続きは帰ってから通話で。それに黒美ちゃん、変身解いて裸だし……」
「そうね、じゃあ解散!」
黒美が手を叩くのと同時に姿を消した。
乃亜はスマホを操作して1枚の写真を見る。その写真は、母親とのツーショット写真。目尻から熱いものが込み上げる。それを拭い、電源を切ってポケットにしまい込んだ。
「お母さん、この先自分でもどうなるか分かんないけど、出来る限りの事はやろうと思うの。私が選んだ事だから」
靴を音を立てながら、乃亜はその場を去った。
明日も明後日もその次の日も彼女は戦う。自分が魔法少女で、いつの日かの使命を全うする為に。




