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第12話 ひとつの終わり

 真っ向斬りの構えを取る。ラビピョンとの距離はあるけれど。

 

「怨嗟刀!」

 

 呼び掛けに怨嗟刀が応え、魔法が自動で発動する。ラビピョンとの間にある空間。魔法が発動して空間が削られ、ラビピョンを目の前まで強制的に移動させた。

 

「厄介ピョン」

 

 本人の意思一つで発動した魔法に、ラビピョンは驚愕する。こんなのは、予備動作無しで魔法を使用しているのと大差変わりない。

 

「だったら!」

 

 ラビピョンが何か仕掛けようとしている。面白い。

ラビピョンの右拳に一点集中で練られたピュアエナジー。この拳をもらえばダメージは内部にまで到達し、臓器がやられる。

 

 それがどうした?

 

「別に、欲しいならあげるよ」

 

 ノーガード。それでいて怨嗟刀の握る手を強くする。

 

(たかが臓器の一つや二つ、今更要らない)

 

 それに拳が振り抜かれる前に叩けばいいだけの話。実際、ラビピョンが速いのは脚だけ。動作だけならこちらの方が一枚も二枚も上。

 

 怨嗟刀がラビピョンの拳ごと斬った。

 

「残念だったピョン!」

 

 直前でラビピョンの拳が消えた。

 

(これって)

 

 殺気が込められた華麗なフェイント。そして、本命である拳は顔面へと迫り、綺麗にクリーンヒットして頭部が弾け飛ぶ。

 

「いくら魔法少女でも、一点集中のピュアエナジーの打撃を食らえば頭くらい簡単に壊せるピョン」

 

 怨嗟刀を握る手が緩む──筈もなく寧ろ逆に斬り掛かる。

 

「何ッ⁉︎」

 

 予想外の事で防御も間に合わず、ラビピョンの左肩から右腰骨斜めに切り裂かれる。負傷箇所から血が噴水の如く噴射し、辺り一面を真っ赤に染め上げる。

 同時に怨嗟刀が黒く光る。そして、砕け散った筈の頭部が元に戻り見据える。

 

「ダメだよ油断しちゃ。私と戦うなら死んでも最後まで目を離さない」

 

 死すら回避、いや無かった事にするこの魔法。

 

「ホント、イライラしちゃう」

 

 脳内にチラつく母親の惨劇。この魔法さえあれば救えた命があった。この魔法を使えなかった自分につくづく思う。

 

「私は私を許せない。だけど、お前達ピュアアニマルはもっと許せない」

 

 ラビピョンの頭を掴み、そのまま空へと投げ飛ばした。

 

「ピョンはまだ!」

 

「さっきは初見で上手く斬れなかったけど、二度目はない」

 

 ラビピョンは両腕を大きく広げ、不可視の壁を生成する。

 

「その魔法は、もう見切ってる」

 

 一文字斬りでの斬撃を放つ。バギン、といいう音。それは、不可視の壁が崩れ落ちる音を聞いた。最初の一太刀で壁を壊し、そこから返す刀で。

 

「怨嗟斬」

 

 予備動作も無く、怨嗟刀が魔法を発動する二段構え。

 

「お前達みたいな、人間に害する動物をなんて言うか知ってる?」

 

 怨嗟刀から黒い稲妻が獲物の喉元へと駆け昇る。巻き付き、締め上げ、そして最後は。

 

「害獣って言うの」

 

 首を斬り飛ばした。

 

「ピョ……」

 

 首を斬り飛ばされても尚、ラビピョンは状況を理解出来ていなかった。刹那の間で魔法が破られた挙句、自分が死を実感するのを。

 

「やったわね……」

 

 その様子を黒美達一同目にしており、信じられないという衝撃も相まって言語化も出来ないでいた。

 

 空中で斬り飛ばされた頭を両手でキャッチ。正面を向けさせ、目と目が合う。僅かにだが、目元がヒクついている。感覚が残っているのか定かではないが、一応ラビピョンに声を掛ける。

 

「魔法少女にしてくれてありがとう。でも、私はラビピョンの思うように動く操り人形じゃない。だから私はピュアアニマル共をこの世から一匹も逃さず殺す」

 

 感謝の言葉と改めて口にする宣言。この言葉は嘘偽りにない。なりたかった自分にもなれた。その代償は割に合わなかったが。

 両手に力を入れる。ラビピョンの頭から血が滲み、骨が軋む音がする。

 

「じゃあ、バイバイ」

 

 グシャ、と盛大な音と共にラビピョンの頭は潰れた。桁違いの握力によって頭だったものが、今や見るも無惨な姿となっている。

 

 その場で回れ右をし、草陰に隠れているピッピーとココモリへと足を歩ませる。

 

「残るは2匹」

 

「ま、待つッピ! ピッピーを手元に置いておくと便利ッピ! ピッピーは《変》属性の魔法で、姿形なんでも変えられるッピ! だからだから──」

 

「いいよ」

 

 即答した事に、ピッピーの表情は一瞬固まったが和らいだ。ニンマリとした顔のままで差し出された手の平の上に乗っては頬擦りをしてくる。その様子を見てココモリは。

 

「あーあ、何をやっているココ?」

 

「ふんだ、ピッピーはノアに寝返るッピ!」

 

「そうココ。まあ、ピッピーがそれでいいなら何も言わないココ」

 

 ピッピーはココモリに唾を吐き、こちらに対して最大限の媚を売る。

 

「それじゃあノア、今から目の間に居るピュアアニマルを駆逐するッピ!」

 

「そうだね」

 

 笑顔で応え、そして次の瞬間手の平に居るピッピーを握り潰した。ベシャ、とピッピーは一瞬で肉片と変わり果てた。

 

「言わんこっちゃないココ」

 

 こうなる事を見越して、ココモリはピッピーに忠告していたのにこの有様。

 

「ココモリ、最期に何か言う事ある?」

 

「別に何も無いココ。だからこうして達観しているココ」

 

「他のピュアアニマルと違って潔いんだね」

 

「どう足掻いたって詰みココ。ならいっその事、現実を受け入れるココ。誰かさんと違って」

 

 ココモリは横目で肉片と化したピッピーを見ながら言う。

 

「さあ、一思いにやるココ」

 

 言われずもかな。ココモリを縦に綺麗に斬ってやり、身体が綺麗に二つに割れてその場で崩れ落ちる。この場でやれる事は全てやった。

 

 怨嗟刀を鞘に納め、小さく「はぁ」と息を吐く。

 

「これで全部元通りになったよ、黒美ちゃん」

 

「えっ?」

 

 怨嗟刀を納める間際、黒美ちゃんの怪我や衣服を元通りにして、咲夜ちゃんも優良健康体の身体へとさせた。

 

「随分と変わりましたね」

 

「黒美ちゃん、これが今の私なの」

 

 血塗られた魔法少女。この姿が、多分一番性に合っているんだと実感した瞬間だった。

 本来ならこの話で終わらせるつもりだったのですが、少なからずのブグマだったり、様々な反応の頂いたりと至りに尽せりでもう少し続けようかと思い踏み止まりました。嬉しい誤算です。

 ただ、ストックが今回で尽きましたので今後は出来次第更新という形にします。

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