表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

第11話 私の魔法は全てを断ち斬る

 その目で見た惨状を見て、乃亜は即座に理解した。ラビピョン、ピッピー、ココモリのピュアアニマル3匹と咲夜と黒美が戦って敗北したのを。

 何をされたのか知らないが、咲夜に関しては身も心も完全に堕ちてしまっている。ああなってしまえば、もう元には戻らないだろう。魔法でも使わない限り。

 

「のあちー、あのですね……」

 

「言わなくても分かってるよ。秘密結社アークがこれまでしてきた事は、本当はこの世界の為にやってたこと。ピュアアニマルが地球外知的生命体だって事も全部知ってる」

 

「……あの使えない魔法少女、全部吐いたッピね」

 

「それもあるけど、大体の全容はピュアアニマルから聞き出したの」

 

 乃亜は、腰に付けていた巾着袋をラビピョンの足下に放り投げた。その際、紐が緩んで中身の物が転がって散乱した。散らかった物を見て、ピュアアニマル3匹は顔色を変えた。

 

「随分とまあ、残酷に仲間を殺したピョン」

 

 巾着袋の中身は、酷い悪臭と赤黒く変色した血溜まりの塊となったピュアアニマルだったものの残骸。巾着袋自体大きくはないものの、かなり中に敷き詰められており数を数えるとなると大体7匹分の亡骸がある。

 

「拷問でもしたピョン?」

 

「やだなぁラビピョン、ちょっとお話だよ。抵抗するもんだから対抗しただけ。でも、知りたい事は粗方口にしたから後はどうでもいいんだけどね」

 

 ハハ、と満面の笑みを浮かべる。

 

「ピュアアニマルは何千何万……ううん、もしかしたらそれ以上の数かも知れない。しかも未だその数を増やしている。そんな有象無象の内のたった7匹が死んだところで、誤差にすら入らないよね?」

 

「人間の分際でふざけた事をぬかすなッピ!」

 

「ピッピー、少し黙ってて欲しいピョン」

 

 ラビピョンの圧のある言葉にピッピーは萎縮して、口を閉じてしまう。

 

「それでノア、キミは此処へ何をしに来たのピョン? まさか、ピュアアニマルを7匹殺したっていう自慢話をする為だけに来た訳じゃないピョン?」

 

 そうだ、乃亜が此処へ来たのはたった一つ。

 

「宣言する。私が、この世から1匹残らずピュアアニマルを全て殺す。根絶やしにする。もうこれ以上、犠牲者を出さない為に。そして、私自身の為に」

 

「自分の為ピョン?」

 

「復讐だよ。お母さんを殺したあの魔法少女にも同じ苦痛を与えさせたけど、私の気は晴れなかった。寧ろモヤモヤとした気持ちが溢れてきて、どうしたらスッキリするんだろうと考えて、答えを出した」

 

 マジピュアアイテムである怨嗟刀を抜刀し、その切先をラビピョンに向ける。

 

「そもそも元凶はラビピョン、貴女だった。貴女が居なかったらこんな事にはならなかった。裏で操っていた貴女も同罪。ラビピョン貴女を……ううん、お前を殺す」

 

 一歩踏み出し、俊敏な動作で怨嗟刀を振り、斬撃を飛ばした。斬撃のスピードは凄まじく、易々と避けれる代物ではない。

 

「速いピョン。でも、ピョンはもっと速いピョン」

 

 ほぼノーモーションからラビピョンは右へと跳躍し、これを回避した。

 人間の姿形になっても、兎のピュアアニマルには何ら変わらない。やはりと言うべきか、脚力がかなり厄介だ。

 

「ピョンの動きについて来られるピョン?」

 

 ラビピョンはその強靭なる脚力を活かして地面を蹴り、左右に揺さ振りを掛けながらもう接近して来る。

 

「ちょこまかと!」

 

 斬撃による一太刀を振るうも、斬ったのは残像。ラビピョンの姿を捉え切れない。奥歯を噛むも昂る感情を自制する。焦らず、冷静さを保ち、一太刀浴びせればその俊敏な動きにも乱れは出るだろう。

 

「斬! 斬!」

 

「全然当たんないピョン」

 

 振っても振っても当たらない。遠距離からの攻撃は掠りもしない。

 

「……慣れない事はするんじゃないね」

 

 切り替え。怨嗟刀を鞘に納め帯刀。接近して来た所に居合術でのカウンターで斬り伏せる。

 

(もう少し)

 

 間合いを測る。とても素早い動きだが、見えない訳じゃない。ある程度の予測を加味して、間合い入ったその瞬間。

 

(今だ、斬る!)

 

 間合いに入った足が地面に着く前に反応し抜刀。今から別方向に逃げる手立ては無い。足が地面に着かなければ、切り返しなんてとても。

 しかし、それとは裏腹にラビピョンの足は途中で見えない何かを踏み、天高くジャンプして怨嗟刀の居合を回避した。

 

「狙いはバッチリ、反応も満点ピョン。でも、ピョンの方が一枚上手だったピョンね」

 

 跳び上がったラビピョンは空中で体勢を整えた後、()()()()()()()()()()()()()

 

(タイミングは完璧だった。でも、意図的に外された。居合術が来るのを見越したとしても、あの体勢からじゃ避けれないと思ったのに)

 

 それに不可解な点が見受けられた。

 

(一瞬だけど、見えない何かを踏んで跳んだのを見た。もしかしてだけど、空中で立っているのもそのせい)

 

 考えられるのは一つ。

 

「魔法、か」

 

「正解ピョン。でも、何の魔法かは不明。それでも尚戦うピョン?」

 

「当たり前!」

 

 怨嗟刀を高く振り上げ、力強く左足を一歩前に踏み出す。

 

 どんな相手や魔法だろうと、乃亜が扱う魔法の前では全て斬り捨てられるだけ。その自信と共に、怨嗟刀に黒いピュアエナジーが練り込まれ、刀身に纏われる。

 

 必殺無敵の回避不可能な一太刀を繰り出す。

 

「怨嗟斬!」

 

 魔法だろうがなんだろうが、その概念ごと斬り捨てる魔法。ピュアアイテムでパワーアップした斬属性の魔法なら。

 刀身が黒く光り、斬る対象を捉えた。一度怨嗟刀に映り込めば逃げるのは不可能。

 

「これで終わり!」

 

 勝った、と確信したその時だった。甲高い音が公園に鳴り響いた。それでいて、ラビピョンには傷一つ全く付いていなかった。

 

「私の魔法が、通じてない?」

 

 予想外の事態に、状況を上手く呑み込めず困惑する。

 

「失敗したの? でも、魔法は発動していたし手応えもあった」

 

「失敗してないし手応えもあるピョン。だったら何故無傷で、と思うピョン。簡単な話ピョン、防御したからに決まってるピョン」

 

 防御したからと言って、無傷で済む魔法ではない。

 

 無理矢理接近戦を挑むか、もしくは敢えて一度一歩引いての戦い方をするか。相手の出方を伺う素振りで身を軽く引くと、ラビピョンが動いた。

 

「近接タイプの魔法少女が身を引いてどうするピョン!」

 

 見逃さなかった。今度はこっちの番と言わんばかりに、即座に飛び出しては一瞬にして距離を詰められ、間合いに入られた。

 僅かな隙、臆した所を付け狙われた。

 

(防御……違う、敢えて一撃を受ける。捕まえて、直接怨嗟斬を押し付ける!)

 

 迫り来る拳。わざとその拳を振り抜かせ、伸び切ったその瞬間を狙えば、次の動作に入る前に確実に一撃を与えられる。

 

 肉を切らせて骨を断つ。


「ふぅん、ノアの考えは全部お見通しピョン」

 

 ラビピョンの拳が右上腹部に叩き込まれた筈が、全身から痛みと衝撃が走り大きく吹っ飛ばされた。地面の上を数回跳ね、ゴロゴロと転がりようやくその勢いは止まった。

 

「今の、は?」

 

 今のはあまりにも不可解だった。一点の攻撃の筈が、自身が受けたのは全身という広範囲なものだった。面積のあるもので殴られたような感覚。だけど、ラビピョンの手には何も手にしていない。

 

「厄介な、魔法だね」

 

 怨嗟刀を杖代わりとして使い、重たくなった身体を起こす。受けたダメージがそれなりに大きい。魔法で、自分が負った傷を斬って負傷をしたという事実を斬って元に戻した。

 

「大した魔法ッピ。だけど、傷は治せても痛みや体力までは戻せないッピ」


「そうだね」

 

「今はまだ」と付け加えた。

 

 ラビピョンの言うように、便利且つ使いようによっては万能にも思える魔法だがそこまで以上の使い勝手はない。

 

「もう少し、ノアの実力と魔法を知りたいと思うけど長引いても仕方ないピョン。だから、そろそろ終わりにするピョン」

 

 ラビピョンは両腕を大きく広げ、何か仕掛けようとしている。大きな攻撃が来る事は間違いないなのだが、未だにラビピョンの魔法の種が判明していない。

 

(もう一度、私の魔法を向き合おう)

 

 斬撃を放つ斬属性の魔法。マジピュアアイテムである怨嗟刀のお陰で自分が認識出来るもの、もしくは怨嗟刀の刀身に映り込んでいるものなら概念だろうと事実を捻じ曲げられる事が出来るようになった。

 

「私と怨嗟刀でも引っ掛からない魔法」

 

 魔法と認識しているけど、その魔法が認識出来ない。認識が出来る、出来ない。

 

(待って、ラビピョンが使っているのが本当に魔法なら)

 

 見つけた。

 

(これは賭けね)

 

「もしも」の綻びを見つけた。これでもし、これからやる事に少しでもズレが生じれば負けは確実。何も果たせないままただ死ぬだけ。

 

「これで、トドメピョン!」

 

 ラビピョンが両手を合わせる。その直前でラビピョンよりも早く魔法を発動させる。

 怨嗟刀から膨大な赤黒いピュアエナジーが解放され、周囲の草木を枯らしながら。

 

「斬ったよ、ラビピョンの手」

 

 ラビピョンの左手が斬り飛ばされ、赤く熱を持った血液が止めどなく吹き出した。

 

「ピョンの左手が⁉︎」

 

 今更驚くか。斬られた事すら認識出来ておらず、その反応を示すのにも遅れている。斬り飛ばされた左手は地面に落ちており、斬られた断面図を目にする。

 

「おかしいピョン。ピョンの魔法は、ピョンの魔法は《壁》属性の魔法。ピョンにしか見えない壁、ピョンにしか認識出来ない魔法を何で斬れたピョン?」

 

 苦痛の表情のまま、自分の身に何が起きたのか斬った本人に直接問いただしてきた。

 

「簡単な話だよ。ラビピョンの()()()()()()()()()して斬ったの」

 

「は?」

 

「その壁属性の魔法は認識出来なかったよ。でもね、ラビピョンが魔法を使っているというのは認識していたから、その魔法を斬ったまで」

 

 大雑把な括りだけど、これが一番有効で唯一の打開策でもあった。斬属性の魔法の特徴を知れば知るほど、案外単純で強力な魔法。ちょっとの解釈で相手の魔法そのものを斬れてしまうのだから。

 

「もし魔法じゃなかったら、完全に不発で終わってたけど良かった。偶には自分の勘を信じてもいいもんだね」

 

「勘で、ピョンの魔法を斬るなんて……そんな魔法デタラメピョン!」

 

「そういうデタラメやあり得ない事をするのが魔法で、私達魔法少女じゃないの?」

 

 自分自身、本当に出来ると思っていなかったからラッキーなのだ。

 それと同時に、魔法についても少しだけ理解した。要はその人自身の解釈によって魔法は強くもなるし弱くもなる。勿論、同じ魔法でも別の人が使えばそれは別種になる。

 

 魔法の種類だけ魔法があるのではなく、人の数だけ魔法がある。

 

「決着の時だよ」


 乃亜の復讐にも、もう間も無く終わりを迎えようとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ