雅の為に…
「雅…もう大丈夫よ。姿を変えなさい…目立つとそなたが危険なだけよ…」
「…母様…。わたし…兄を殺してしまいました…蘭は何もしてないのに…兄は…兄は…」
「そうね…零はやり過ぎたわね…私達があの子を甘やかしたせいね…城に戻りなさい、雅」
「はい…母様…どんな処分も覚悟しています」
「そなたをどうこうする訳がない。ずっと縛りつけてたのは妾なのだから…」
「母様…とても幸せな日々を過ごしました…それだけでどんな事にも耐えられます…」
「ファンタシア王国に居たのよね?そう…幸せだったのね…もう、そなたを苦しめさせない。妾がそなたを守るから安心なさい」
「母様…でも里はわたしが居ないと力を失ってしまいます」
「そうではない…雅…里は眠りにつく時期がきただけよ…さぁ…行きましょう」
「はい、とても眠いです…母様…」
ファンタシア王国にて
「鬼人族の里に行くだけだ!話をする!何故、止める?」
「エスター様、落ち着いて下さい!」
「雅は私の妻になるんだ。鬼人族の王と話すだけだ!戦争しに行く訳じゃない」
「鬼人族は他の種族との交流はしません。先ずは書面で様子見しましょう」
「結界が張ってあるんだぞ!私以外、どうやって書面を渡す事が出来るんだ!?」
「結界を壊すのは無理ではないとしても…鬼人族が許さないでしょう?」
「なら、どうすればいいんだ!雅を取り戻したいだけだ」
「里の結界の側に行けば鬼人族が中に入れてくれるかもしれません。方法が有るのかと。実際、鬼人族は定期的に攻めて来ましたし…」
「私が行く!その為の邪眼の力なんだから」
「エスター様、雅様には何か事情が有るようですし…ここは慎重になって下さいませ」
「雅は私の妻だ…誰にも渡さない!」
エスターが叫んでいるとハロルドがやってきた
「何をそんなに叫んでいる?バカ弟子が!落ち着け!雅は力の制御が出来なくて迷惑を掛けるから里に戻っただけだろう?」
「師匠…好きで帰った訳じゃ有りません。雅は記憶がなかったけど…取り戻した後、私を思い出してくれました。それに、永遠の別れみたいに言いました。だから迎えに行かなきゃ…」
「もう少し様子をみてからじゃ。雅にも考えが有るんだろうて」
「…分かりました…しばらく待って鬼人族の動きがなかったら様子を見に行きますから」
鬼人族の城にて
「あなた…雅を解放してあげませんか?もういいでしょう?鬼人族は文献によると眠りについて力を増すと有りました。妾達は雅の力を搾取してきたけれど…もうあの娘の事を異形の者として苦しめるのは堪えられません。どうか…雅を…」
「雅はどうするのだ?解放して?」
「ファンタシア王国の王が雅を大切にしてくれますから心配有りません。ただし、雅には一度死んでもらいます…。大樹に力を戻すのです」
「雅を死んだら生き返るのか?そんな事出来るのか?」
「妾が雅を殺したらこの大樹から作った実のようなコレに雅の生命エネルギーを流します。私の生命エネルギーと一緒に…。多分、雅が大樹から復活するはずです」
「死ぬ覚悟なのか?紅蓮?そなたは…」
「妾は雅を産まれた時に殺せなかった…そして今まで雅を苦しめてきた。妾がやらないでどうするのです」
「紅蓮…」
「多分、エスター王がこの里にやってくるでしょう…。その時に雅を…もしかすると邪眼の力がショックで暴走すると妾の未来視で分かりました。それを止める時に妾は命を落とします。だから…あなたは実を大樹に。そうすれば3年後には雅は新たに生まれ落ちます。エスター王に3年後に来るように伝えて下さいませ」
「私が変わりに暴走を止めるのではダメなのか?」
「あなたは目が覚めた一族を治めるのが仕事です。何年かかるか分かりませんが長い眠りにつく事でしょう、」
「そうか…それなら仕方ないな…連も居るしな…」
「やっと解放されるのだな…」
「えぇ…やっと…」




