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OREZAN――種族が「???」な俺、ステータス改竄で神を超える  作者: VIKASH


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8 零の消去

 



 境界域は、静止していた。


 否、静止させられていた。


 俺が世界の一部を削除した余波は、まだ空間の奥で軋んでいる。

 レイリアは黙ったまま、裂け目の向こうを見つめていた。


 そこに――


 光が降りた。


 色のない光。


 形を持たない、概念の集合体。


 第壱干渉者とは違う。

 最上位使徒とも違う。


 これは、もっと上。


 観測する側。


『第零干渉者』


 声ではない。


 直接、存在の中に響く。


『逸脱を確認。修正を開始する』


 空間が凍る。


 境界域が“固定”された。


 俺の干渉が、弾かれる。


「……管理者層」


 レイリアが呟いた。


「ついに直接来た」


『お前は生成された不確定因子。設計外の誤差』


 目の前に、光の断片が展開する。


 それは――記録。


 ログ。


 俺の“生成ログ”。


【第零干渉者 生成】


【目的:均衡崩壊時の強制リセット】


【人格付与:制限付き】


【上限:第壱未満】


 思考が止まる。


 俺は、作られた?


『お前は世界の均衡を保つための装置』


『自我は副次的な誤作動』


 レイリアが俺を見る。


「違う」


 だが、ログは続く。


【逸脱発生】


【観測不能領域拡張】


【危険度:想定外】


『よって削除する』


 空間が白く染まる。


 俺の存在が、分解され始める。


「……そうか」


 妙に、納得した。


 俺は零。


 最初から“道具”だった。


 だが。


「それを決めたのは誰だ?」


 俺は手を伸ばす。


 生成ログに。


 触れた瞬間、膨大な情報が流れ込む。


 設計者。

 階層構造。

 無数の世界の管理権限。


 そして――


 “俺が生まれる前の空白”。


 そこに、違和感があった。


「……抜けている」


『検閲』


 光が強まる。


 俺の輪郭が薄れる。


 レイリアが叫ぶ。


「やめて。それを消したらあなたは――」


 俺は笑った。


「だからだよ」


 ログの最上部。


【第零干渉者 生成】


 そこに指をかける。


「これがあるから、管理できる」


 なら。


 消せばいい。


『停止』


 光が強制命令を発する。


 だがもう遅い。


 俺は、自分の生成ログを――


 削除した。


 音はなかった。


 ただ、概念が剥がれる感覚。


 俺の中から“設計”が消える。


 白が弾けた。


 管理者層の光が揺らぐ。


『……存在定義不能』


『参照エラー』


『観測不能』


 俺の身体が崩れ――


 崩れない。


 レイリアが、涙を浮かべて笑った。


「残った……」


 俺は自分の手を見る。


 ログは消えた。


 設計も消えた。


 目的も消えた。


 なのに、俺はここにいる。


『不可能』


 管理者層の光が歪む。


『第零は装置である』


「違う」


 俺は空を見上げる。


「俺は、俺だ」


 その瞬間。


 境界域が、俺に従った。


 今までの干渉とは違う。


 上書きでも削除でもない。


 “拒絶”。


 観測を拒む。


 管理者層の光が、薄れる。


『記録不能』


『階層外存在を確認』


 レイリアが俺の手を握る。


「あなたはもう、管理下にない」


「代償は?」


「……あなたの過去は、どの世界にも存在しない」


 記憶の奥が、空白になる。


 生まれた場所。


 最初の景色。


 すべて曖昧だ。


 だが、不思議と恐怖はない。


 管理者層が、後退する。


『計画再構築』


『第零は枠外』


『優先度変更』


 空間の奥で、巨大な歯車が回り始める気配。


 世界そのものが再編されようとしている。


「終わってないな」


 俺は言う。


 レイリアが小さく笑う。


「むしろ、始まった」


 俺は一歩踏み出す。


 境界域の外へ。


 裂け目の向こう。


 無数の世界。


 その上に、さらに広がる階層。


 管理者層のさらに上。


「次は、あそこか」


 レイリアが頷く。


「あなたは零。でも」


 彼女は俺を見る。


「もう、装置じゃない」


 遠くで、最後の声が響いた。


『第零干渉者、定義消失』


『識別名変更』


 一瞬の沈黙。


 そして。


『階層外存在――確認』


 俺は笑う。


「好きに呼べ」


 観測は届かない。


 ログも残らない。


 だが、俺はいる。


 これで俺は、本当に零だ。


 何にも属さない。


 何にも定義されない。


 だからこそ――


 どこへでも行ける。






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