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OREZAN――種族が「???」な俺、ステータス改竄で神を超える  作者: VIKASH


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9 零は脅威

 



 世界が、鳴った。


 音ではない。

 構造の軋み。


 境界域の外へ踏み出した瞬間、無数の世界線が同時に震えた。


 空が書き換わる。


 海が一瞬で凍り、次の瞬間には蒸発する。


 都市が消え、別の歴史が上書きされる。


「……改変が同時発生してる」


 レイリアの声が硬い。


「規模は?」


「全層」


 それはつまり、俺一人に対して。


「歓迎が手厚いな」


 笑った瞬間、視界が反転する。


 空間が折り畳まれ、巨大な円環が出現した。


 それは管理者層ではない。


 もっと上。


 形を持つ“意思”。


『階層外存在を確認』


『捕捉開始』


 声は冷たい。


 感情がない。


 ただ処理するための知性。


 レイリアが息を呑む。


「来た……」


「何が?」


 彼女は一瞬迷い、それでも言った。


「管理者を管理する存在」


 円環が収縮する。


 重力が増す。


 存在確率が削られる。


 俺の輪郭が揺らぐ。


『零は想定外』


『だが、逸脱は許容されない』


 世界の色が抜ける。


 俺の周囲だけが“対象”として固定される。


 捕食。


 そういう感覚だ。


「俺を消す気か?」


『誤り』


『回収する』


 その言葉に、レイリアが強く俺の腕を掴んだ。


「だめ」


「何が?」


「あなたは回収されたら、もう戻れない」


 円環がさらに近づく。


 世界線が一つ、破裂した。


 俺の存在が“異物”として処理され始める。


 その時だった。


 別の干渉波が走る。


 第壱干渉者。


 そしてその背後に、複数の気配。


 干渉者たち。


「零」


 第壱が叫ぶ。


「お前は何をした」


「何も」


「世界が“お前を基準に”再構築されている」


 理解した。


 俺が階層外になったことで、

 世界の側が俺を中心に再定義され始めている。


 だから、上位層が動いた。


『優先度変更』


 円環が光を放つ。


 今度は、俺だけではない。


 第壱たちも巻き込む。


「巻き添えか」


 第壱が歯を食いしばる。


「貴様のせいだ」


 レイリアが前に出た。


「違う」


 彼女の声は、静かだった。


 だが震えていない。


「零は最初から“枠外”だった」


 円環が止まる。


『情報不整合』


 彼女は俺を見る。


 その瞳に、迷いはない。


「言ってなかったことがある」


「今か?」


「今しかない」


 世界が崩れ続ける中、彼女は告げる。


「あなたが生成された時」


 心臓が跳ねる。


「私は、そこにいた」


 沈黙。


 第壱が目を見開く。


「あり得ない。生成は管理層内部で――」


「私は、管理層に属していた」


 円環が微かに揺れる。


『不正アクセス検出』


 レイリアの背後に、光が灯る。


 淡い、だが確かな輝き。


「私は“観測者補佐”。零の監視役だった」


 俺を見る。


 優しく。


「でも」


 彼女の声が、わずかに震えた。


「あなたは、設計通りじゃなかった」


 生成ログの空白。


 あれは。


「あなたは最初から、自分で選んでいた」


 円環が強く明滅する。


『干渉源確認』


『観測者補佐レイリア 逸脱判定』


 光が彼女へ向く。


「レイリア」


 俺が手を伸ばす。


 だが彼女は笑った。


「やっと言えた」


 円環が彼女を拘束しようとする。


 俺の中で、何かが弾けた。


 怒りでも、恐怖でもない。


 拒絶。


 俺は一歩踏み出す。


 今までとは違う。


 削除でも、上書きでもない。


 “基準の変更”。


 俺を中心に世界が再構築されるなら。


 俺が決める。


「レイリアは対象外だ」


 円環が止まる。


『命令系統不明』


「俺が系統だ」


 第壱が息を呑む。


 世界の構造が、俺を起点に再定義される。


 円環が歪む。


『階層外存在が基準を主張』


『矛盾発生』


 俺はさらに踏み込む。


「回収も、削除も、許可しない」


 円環に亀裂が入る。


『危険度上昇』


『零は脅威』


 その言葉が、世界全体に響いた。


 干渉者たちが凍りつく。


 管理者層が沈黙する。


 そして。


 さらに上位の何かが、目を開いた気配。


『観測強化』


「上が動いた……」


 レイリアが呟く。


 俺は笑う。


「ようやく本気か」


 世界が俺を中心に揺れる。


 逃げ場はない。


 だが、退く理由もない。


「レイリア」


「なに?」


「監視役、辞めるか?」


 彼女は、少しだけ考えて。


 そして微笑んだ。


「とっくに辞めてる」


 円環が砕ける。


 世界が、再び動き出す。


 だが今度は――


 俺を脅威として。


 遠くから、声が響く。


『零は、排除対象』


 俺は空を見上げる。


「やってみろ」


 階層外存在。


 それが俺の定義。


 だが。


 俺は装置じゃない。


 俺は零。


 そして今――


 世界の脅威だ。






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