高校最後の夏休みパーティ 前編
「さあて、今日は鮮直市場で買い物だー」
「どしたのよ、突然」
「今日は内宮班パーティだろ?だから色々と買おうと思ってさ」
「でも、厳田君が牧場育ちの鹿肉を持参するんでしょ?」
「みたいだな。家族旅行に行って美味しい鹿肉を食べたから、このパーティで振る舞ってくれるんだって」
「あたし達の猪肉に似ている流れだね」
「だな。俺、鹿肉なんて初めて食べるから楽しみだよ」
「調理は厳田君がやるの?」
「ハンバーグに加工済の真空パックなんだって。調理方法も裏面に記載されているから大丈夫っぽい」
「なるほどね。でも、パーティがある日に釣りに行かないなんて初めてだね」
「だよな。これも卒業が近づいたって事なのかな」
「そうだね。千奈津ちゃんと美夜子ちゃんはバイトだけど、眞代ちゃんは時間まで塾で佳奈ちゃんも何やら用事があるって事だもんね」
「流石に内宮班パーティ全員分の魚を釣るのを俺と雪華だけでってのは大変だからな」
「大きな群れが来ないと厳しいもんね」
「そゆこと。それに蔵持先生がこの前チラッと見てしまった養殖アワビを食べたいと言ったからね。リクエストに応えようと思ってさ」
「美夜子ちゃんの自宅の分も買うの?」
「写真を送ってとは頼まれているから、場合によっては買うかもね」
「なるほどね。ところでさっきから何をしているの?」
「これは小バエを捕獲した容器だよ。上陸したばかりのカエルの餌にするからさ」
「あー。綺麗にしていてもどこからともなくやってくるよね、このショウジョウバエって」
「だよな。例えば野菜くずを一晩放置しただけで飛んでいるんだよなコイツら」
「ひろ君の家に侵入したのが運の尽きだね。餌として食べられちゃうんだから」
「雪華が飼育しているのには小さいから不向きだけどな」
実はカブトムシとかの甲虫類の飼育マットにも小バエが湧くことがあるけど、これも餌にしているのだ!残念ながら餌代の節約までにはならないんだけどね。
愛美「おでかけするの?」
朝輝「どこいくの?」
「鮮直市場だよ。たけのこ採りの帰りに寄るお店だね」
朝輝「たけのこもとるの?」
「たけのこは採らないよ。お店で買い物するだけ」
「「ざんねーん」」
昼飯のつけめんを食べ終わり、鮮直市場へ行く準備をしていると愛美と朝輝がお出かけの気配を感じとって俺に聞いてきたから答えておく。
「なん…だと…」
「ひろ君落ち着いて。本来の目的を忘れちゃダメだからね」
彩夏「おにいちゃん?どうしたの?」
鮮直市場に到着して俺と雪華、それと彩夏は鮮魚売場に来たんだけど、淡水魚のカジカが生きた状態で販売されていた。
「ふふふ。これは全匹購入だな」
「あーあ」
彩夏「? あーあ?」
「あとは養殖アワビの値段は…この前買った店より少しだけ高いな」
「でも、ポイント付くからいいじゃん」
「まあね」
店員さんに許可を貰ってアワビと値段をスマホで撮影して鳳来さんに送って返信を待つことにした。
母さん達と合流するために青果売場に行くと、俺に気付いた愛美がトテトテと近づいてきて。
「おにいちゃん。こんどはあみとてをつないでー」
「はいはい」
彩夏とばかり手を繋いでいたから愛美が手を繋いでくれと言ってきた。朝輝もしまった出遅れたといった表情をしているし、と思っていると。
「モテモテだね、お兄ちゃん」
と雪華がからかってきた。
「それじゃあ、パーティ会場までは雪華と恋人繋ぎしてあげるからね」
「えー。暑いよ」
「ひどい!」
「あははははは」
母さん達の買い物を終えて車に荷物を入れていると鳳来さんから返信があって、買う必要は無いとの事だった。
「父さん、悪いけど返信があったから買い物してくるな」
「わかった」
朝輝「おにいちゃん、こどはぼくとー」
「あっくんゴメン。荷物で両方塞がるから手は繋げないんだよ」
「ざんねーん」
「戻ってきたら頭をナデナデしてあげるからね」
「うん!」
鮮魚売場でカジカと先生達のアワビ、それと味噌汁用にワタリガニの一種のガザミのオスを購入して車に戻って帰路につく。
渋滞も無く無事に帰宅。俺が購入したもの以外は冷蔵庫に入れて、アワビとガザミはクーラーボックスに入れて玄関に置いてすぐに持ち出せるようにしておく。
カジカは予定外だったけど水槽の準備はしてある。それを底物のカジカ用にすればいいだけなんだけど。
「ひろくーん。そろそろレンタルキッチンに向かう時間だよ」
「おーう」
と、いう事なので明日やる事にして今は海水魚の薬浴と同じでコンテナボックスで泳いでもらっている。
クーラーボックスを肩からかけて雪華と一緒に玄関を出て、高校最後の夏休みパーティへと向かうのであった。




