兄妹弟だけで出かけた日曜日 後編
彩夏が英語の勉強を始めたから俺も晩飯の下ごしらえを始める。まずはカワハギを唐揚げ用に捌いて、昨日保存していた中骨や頭部も含めて鍋に入れて出汁を取りはじめる。
次に小アジを手で内臓を取り除くやり方で捌いていると「ただいまー」と雪華がバイト先から帰宅した。
「雪華どうした?閉店時間より早いし、連絡も無かったけど。体調でも悪いのか?」
「心配しないで。全商品が売り切れたから早目に終わったのよ」
「そうだったのか。日曜とはいえ珍しいな」
「おやつ時から売れはじめてね。店長の奥さんの話によると、ケーキとかスイーツの話題の内容がテレビ番組で放送されたみたいでね、刺激された人達が来店したんじゃないかって」
「なるほどな。でも、独りで帰宅するのは心配だよ」
「んもう。過保護すぎるわよ!ひとりで出かけたり内宮班の女子グループで買い物したりしているんだから平気よ」
「ごめんごめん。どうしても小学生時代の事を考えてしまってな。高校も卒業する年齢だし俺も変わらないとな」
「ふふっ、そうだね。でも嬉しいよ チュッ」
ほっぺにチュッとしてくれて、部屋着に着替える為に自室へと向かっていった。今はキッチンで誰からも見られていないから口同士でやりたかったなー。
「あたしも晩ご飯の準備を手伝おうか?」
ラフな服に着替えた雪華が晩飯の手伝いを申し出てくれたけど別な作業をお願いする。
「今日さ、農家の直売所で枝豆を買ってきたから莢をはずす作業をお願いしていいか?晩飯の後に茹でて冷凍庫に保存したいから」
「Kyllä」
「枝豆は外に置いてあるけどリビングの窓のすぐそばにあるから。それと、莢をはずした株は明日のゴミで捨てるから頼むな」
根の部分には土が付着しているから一旦外で根を切ってから、リビングで莢をはずす作業を始めた。愛美と朝輝はいつもの光景だからか興味は無いようだ。
彩陽「もうすぐ終わる予定だよ」
「わかった。今日は随分と盛り上がってたみたいだね」
「今日はパズルとかのゲーム感覚で勉強したからね。堅苦しく教科書との“にらめっこ”だけじゃダメだからさ」
「なるほどなー」
彩陽姉さんから勉強が終わりそうと伝えられたから、カワハギと小アジを唐揚げにする為に揚げはじめる。
彩陽「わたしだけお刺身もいいの?」
「俺達は昨日食べたからさ」
「唐揚げなら居酒屋メニューにもあるよね〜」
「小アジの唐揚げならあるだろうけど、カワハギの刺身と唐揚げは無いと思うよ」
「そうなの!?」
「あってもウマヅラハギだろうね。これは本カワハギだから、料亭や回らない寿司屋で提供されるような魚だぜ」
「そうすると、このお味噌汁も」
「味噌汁はカワハギの中骨とかで出汁を取って、具材はキュウセンという魚の身だよ」
「な、なるほど」
唐揚げと一緒にお皿に盛り付けたサニーレタスとミニトマトは栽培しているのを収穫したやつだけど、それは黙っていよう。
「あのさ、広也君」
「彩陽姉さん、どうかしましたか?」
「家庭教師の日の晩ご飯だけどさ、少し豪華じゃない?」
「母さんから頼まれているんですよ。今の時点では授業料の支払いは無いから、晩飯は豪華にしてあげてって」
「そうなんだ」
「一応は塾の時給計算以上の晩飯代になっているんですよ」
「それは、ありがとうございます」
「ただ、フラッと食べに来る日はそこまでじゃないし、お代もいただいてますからね」
「感謝するのはわたしのほうだよ。どうしても楽な外食に頼りがちだからさ、ありがたいんだ」
「それなら今後ともお互いよろしくってことで」
「だねー」
帰り際、彩陽姉さんから晩飯のことについて聞かれたから答えておいた。
「今日は妹ちゃん達と一緒に散歩に行ったんだって?愛美ちゃんに聞いたよ」
「おう。小学校への道順を愛美と朝輝に教える目的で枝豆を買いに行ったからな」
「小学校への道順を双子ちゃんに?」
「来年から小学生だからさ。郊外だけど大型の危険な野生動物は生息していないから集団での登下校は無くて個人での登下校だからさ」
「なるほどね」
「彩夏の下校時の寄り道ルートもなんとなーく知れたんだよね」
「あはは」
今日の行動を枝豆を茹でながら雪華に報告。別々はあったけど兄妹弟の4人だけで散歩とはいえ、出かけて楽しかったな!来年の夏休みには日帰り旅行に行くのもアリかもな。雪華には申し訳無いんだけどね。




