夏休み最初のガサガサ
彩夏「行ってきます!」
母さん「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「行ってらっしゃい!何かあれば先生に言って連絡してくるんだぞ」
「うん!」
彩夏にとっては少し大きめのリュックを背負って学校へと向かって行った。今日から1泊2日の林間学校だからな。野外炊飯は明日の午前中に作って昼飯で食べたら帰宅の流れとなるようだ。
実は彩夏にはもしもの時について話しておいた。もしも、イタズラや間違って飯ごうやカレーに麦茶を入れても慌てずにそのまま作るようにってね!
雪華「林間学校は1泊2日なんだね」
「みたいだな。ただ、来年の修学旅行や6年の卒業旅行は2泊3日みたいだよ?」
「へー」
愛美と朝輝は父さんが保育園へ行く準備をしている。だから昨日の内に『行ってらっしゃい』の挨拶はしてあるからお見送りは無し。ま、俺達の時と違って明日には帰ってくるからかそれ程悲しんでいなかった。
彩夏が行く場所は近場に川が無いから少し安心している。彩夏も泳げるけど、流れがあると泳ぎづらいからな。俺達の住んでいるのは郊外だけど、泳げるような清流は無いから川で泳いだ経験は無い。だから、川で泳げるかどうかは別問題だからな。
さて、彩夏も林間学校に出発したから俺達も出発しますかね!
「くあー!ひっさしぶりのガサガサだー」
「ちょ、ちょっと、雪華落ち着いて」
潮溜りにやって来て、準備を終えた雪華がお叫びになられた。
「さ、潮が満てくる前に沖側に向かうぞ」
「おー!」
まずは潮が引いている最先端まで向かう。
「ひろ君、カゴカギダイが採れたけど、な〜んか違うんだよね」
「どれ」
観察用のケースに入れて確認してみる。
「! これ、イレギュラーバンドの個体じゃないか!」
「イレギュラーバンド?」
「ほら、ここの縞模様が他の個体と違うだろ?スゲー珍しいよ」
「やったね!もちろん飼育するんだよね」
「当然だろ!」
「飼育するのは、あの水槽?」
「おう!」
小学校時代に雪華と採集したカゴカギダイは、いなくなったからな。別の水槽に飼育しているのを移すか雪華と相談した結果、今夏に採集したのを導入することにしたからな。
「雪華、悪いけど底付近を重点的にガサってくれるか?テッポウエビが欲しいからさ」
「りょーかーい」
「ただし、下手したら密漁対象がいるかもしれないから慎重にな」
「Kunnossa」
「ひろ君、赤いエビが採れたよ」
「どれ? ふうーっ、ハサミがあるから大丈夫だな」
「どしたのよ?」
「ほら、イセエビの稚エビの可能性があるだろ?稚エビとはいえ、イセエビは密漁対象だからな」
「あ、そうだよね。で、このエビの種類は?」
「わからん!」
潮が満ち始める時間になったから、陸側に戻りながら採集を続けている。欲しかったテッポウエビも10匹近く採集出来たから満足だし。
「雪華、時間ギリギリまでこの潮溜りで粘るぞ」
「何かいるの?」
「ハクテンハタの幼魚がいる」
「! 関東にもいるの?」
「わからん!わからんけど、ここにいるから採集するぞ」
「おー!」
ちょっと深めの潮溜りにヤツはいた!こういうのがいる潮溜りって他にも珍しいのがいる可能性があるから楽しみだぜ!
「ひろ君!」
「慎重にな!もう少し、もう少しで採集出来るぞ」
「う、うん!緊張するね」
雪華と二人合わせて4本の網で追い込んでいく。逃げこめる岩の隙間から離すことに成功した、あとは底のほうに向かわなければ採集出来る。
「よっしゃー!」
「やったー!」
追い込んだ雪華の網に無事に入り、採集出来たからパチンとハイタッチする。
「この容姿を見ると模様が逆のサラサハタも飼育したくなるよな」
ハクテンハタの幼魚の模様は黒の体色に白の斑点で、サラサハタは白の体色に黒の斑点で真逆だから比較すると面白いんだよな。
「移動する?」
「いや、ここに海水が流れこむまでまだ時間があるから続けよう」
「うん」
波の状態をチラチラと確認しながら、ガサガサを続けていると。
「ひろ君、模様が変なイシダイが採れたよ」
「これはイシダイとイシガキダイの交雑種かもしれないな」
「飼育する?」
「おう!水槽内で育ってからは、その時に考えよう」
「あはは」
その後も魅力的?な潮溜りの採集を少し続けて陸地側へと戻ってきたら、磯釣り装備の釣り人が向かっていったけど、潮溜りが出来る地形だから磯釣りなんて出来ないと思うんだけど。穴釣りの間違いだよね?ね?
「今日はこのまま帰るの?」
「おう!防波堤での岸壁採集はヤメて帰るよ。採集出来たのが多彩だったからな」
「そうだね」
と、いう事で帰路につく。
帰りの電車内で雪華と会話しながら、ふと思う。彩夏は今頃大丈夫かなぁ?




