彩夏ももうすぐ夏休み
「おにいちゃん、ありがとね」
「平気だよ。ところでメダカはどうなったの?」
「2学期から教室で育てるんだよ。メダカは先生が買うんだって」
「そうなんだ」
「おにいちゃんと同じかい方なのかな?」
「お兄ちゃんとは全然違う飼い方だよ。だから、参考にしたらダメだよ」
「そんなー」
「お兄ちゃんのはマニアの飼い方になるからな。学校じゃ無理なんだよ」
「そうなんだ」
彩夏の小学校も、もうすぐ終業式。俺が高校から帰宅後、夏休み前に家に持ち帰る物があるみたいだから彩夏と一緒に学校に向かっている。
来年は愛美と朝輝も小学校に入学するからふたりの荷物も取りに行く事になるかもな。
小学校に着いた俺達は彩夏は昇降口へ、俺は職員玄関へと向かい許可を貰う。
「おにいちゃん、お待たせ〜」
「それじゃあ、教室に行こうか」
「うん!」
彩夏を先頭に教室へと向かっていく。
教室に入ったらまずは彩夏の机や机の中、それとランドセルロッカーを確認するけど、彩夏に対して不穏な気配は感じないから安心する。来年の5年になるとクラス替えがあるから再度確認する必要があるな!
え?毎年確認してるだろ!だって?そりゃ当然だろ!小学校時代の雪華を見てたから心配になるって。
「よし!荷物はこれだけ?」
「うん!」
「そうだ。メダカの水槽はどこに置く予定なの?」
「あそこ」
彩夏が指を差したのは黒板のある前方窓側だった。ふむ、コンセントも近くにあるから水槽器具の電源確保も大丈夫そうだな。
「何cmの水槽になるんだろうね」
「ねー」
そんな会話をしながら教室を出る。
「あやちゃん達が育てているへチマも見たいな」
「いいよ!それじゃあ外で待ってて」
「おう」
彩夏と職員室前で別れたらカバンの中身を確認してもらう。入っているのは彩夏が図工の授業で作ったやつだけだけどね。
「おにいちゃん、ここだよ」
「おー。育ってるね」
「(小声で)これがヒョウタンだよ」
「ほほう。いい感じだな」
彩夏に連れてこられたのは職員室の窓がある花壇だった。職員室の上にある教室のべランダまで園芸ネットが張られていて、そこにへチマの蔓が絡まっていた。花も咲きはじめているから実にも期待出来るだろう。
「夏休みの間の水やりとかはどうするの?交代で登校して水やりするの?」
「じむいんさんがやってくれるみたい。他にも育てている植物もあるから」
「なるほどね」
へチマの育ち具合を見た俺達は帰宅する為に校門を出たんだけど、その時に彩夏の友達のひとりと出会った。その友達は母親と一緒で、母親は自転車だったけど、多分荷物を運ぶだけの気がするな。
「「ただいまー」」
「「おかえりなさーい」」
彩夏と一緒に帰宅したら愛美と朝輝が出迎えてくれた。部屋で遊ぶときは彩夏がキューちゃんの面倒を見ているから、キューちゃんはまだカゴの中。
持ち帰ってきた荷物を彩夏の部屋の勉強机に置く。
「このまま、ここに飾るの?」
「正直じゃまなんだよね」
「あはは。折角図工で作ったんだから、そんな悲しいこと言わないで」
「ごめーん」
「とりあえず、このクローゼットに入れておこうか」
「うん」
彩夏のクローゼットは俺達みたいに制服があるわけじゃないから、この置物も邪魔にはならんだろう。中学生になる頃には自室から物置き部屋行きになるだろうからな。
雪華「彩夏ちゃんの小学校どうだった?」
「問題無かったよ」
「? 問題って?」
「彩夏がクラスメイトにイヤな気分にされていないか、ってことじゃないのか?」
「あー。そっちじゃなくて、教室どうだったのかなって。去年はホラ、イモ虫が集まっていたんでしょ?今年はどうだったのかなって」
「残念ながら、メダカもイモ虫もいなかったよ。2学期からメダカを育てるみたいだし、イモ虫も集まるみたいだよ」
「なるほどね、先生も大変だ。話しは変わるけど彩夏ちゃんはこれから気にしてあげる必要があるよ。その辺は凪咲さんがフォローするだろうけどね」
「それって」
「女性になるからね」
「! 確かにそうだな。だけどそれは母さんの役目だな。雪華も義姉として相談にのってあげてくれな」
「もちろん」
和室で妹弟がキューちゃんと遊んでいる中、俺と雪華はダイニングテーブルで冷やしほうじ茶を飲みながら、晩飯の準備までまったりと会話する。
「あんちゃん、お待ち!」
「大将悪いね。店に買いに行くのに」
「この近くに配達があったからよ、問題無いぜ!」
「ところで、ウナギっていつから入荷予定?」
「本職と違って冷凍品だからな、いつでも平気だぜ!」
「それなら近い内に店の前の炭火で軽く焼いてよ」
「おう!いいぜ。ウナギの宣伝にもなるしな」
「それじゃ後日、店に行くから」
「おう!待ってるぜ」
大将が頼んでおいたヤマメの塩焼きを届けてくれた。このヤマメ以外は準備が終わっているから熱々とまではいかないけど、温かい内に食べられる。
俺が朝輝から聞かれたと思っていたヤマメの陸封型と降海型について熱弁をしていると。
母さん「広也、熱弁しているところ悪いけど、あっくんはお味のことを言っているのよ」
「そうだったのか?ごめんな、あっくん」
朝輝「いつものおにいちゃんだから、へいきだよ」
「そっかー」
朝輝の頭を軽く撫でていたら愛美が「あみもー」と言ってきたから愛美の頭も撫でておいたよ。




