テナガエビ釣り
鳳来「内宮、あの魚って何だろね」
「あれは多分スズキだね。ハゼ釣りの時にたまに釣れるやつの大型のほう」
笹嶋「あの大きさも釣れるんだね」
「泥抜きと加熱調理が必須だけどな」
今日の天気はくもり。関東より西の地域は梅雨入りが発表された。そんな6月下旬に鳳来さん希望のテナガエビ釣りに来ている。俺達は一見チマチマとブロック周りとかを攻めている中、大物を釣り上げている人がいた。ただなぁ、俺にとっては汽水域のスズキの味は格下なんだよな。
鳳来「体格が違うエビが釣れたよ」
「あー。これアメリカザリガニの稚エビだね。食べられないよ」
「残念」
鳳来さんはその場でリリースした。
雪華「貰わなくて良かったの?」
「1匹だけ持ち帰ってもなぁ。雪華が考えているのってイシガメの餌用だろ?」
「うん」
「あのサイズなら業者から安価で大量購入出来るからさ」
「そっかー」
鳳来さんが釣ったアメリカザリガニのサイズならイシガメの他にもウナギの餌にもなるから、俺にとっては当たり前なんだよな。
雪華「小魚がいるけど、ガサガサはしないの?」
「ここはハゼ釣りの場所よりも上流域だろ?万が一密漁対象魚種の稚魚だった場合、面倒臭いことになるからやらない」
「あそこは平気なの?」
「ここよりも対象魚種が少ないし、見分けがつきやすい魚種だしね」
「そうなんだね」
密漁対象魚種は場所によって違うし、増加する場合もあるから常にチェックしているのだ。
「テナガエビ大漁ですね」
「そうですね」
「泥抜きについて聞いてもいいですかね?」
「どうしたんですか?」
「ひと晩置いておくと、数匹になってしまうんですよ」
「あー、それは共食いが原因ですね。テナガエビは攻撃的なんですよ。だから泥抜きをする場合、1匹ずつにする必要があるんですよ」
「そんなに手間がかかるのですか」
「どこで釣ったテナガエビか知りませんが、ここの水域なら2〜3時間の泥抜きで平気ですよ」
「え?」
「ひと晩の泥抜きが必要なのは魚類だけですよ」
「そうなんですね」
初老の男性がバケツを覗いてテナガエビが釣れているのを見て質問してきたから答えてあげた。知らないと翌朝に数匹だけになっていたら驚くよな。
鳳来「釣れたわね」
「だな。鳳来さんの要望だから、もう一回来る予定だけど」
笹嶋「ここと同じ場所?」
「違う場所。同じ場所ばかりだとテナガエビの数が減るからさ」
笹嶋「わかった」
夕方前になったから納竿する事にした。近場にある水道水で泥抜きしながら釣りをしたから帰宅したらすぐに素揚げにして食べることが可能。楽しみだぜ!
「「ただいまー」」
「お帰り。実は支社長さんが来たのよ。広也に渡したいものがあったんですって。その発泡スチロールよ」
「わかった」
「おお、広也お帰り。支社長がカワハギの船釣りに行ったらしくてな。ただ、シーズン初めで数は釣れなかったらしくカワハギのお裾分けは無しだが広也にはお土産があったぞ」
「おう、母さんから聞いたよ。今日は俺達が釣ったテナガエビがあるから安心してくれ」
「おっ、そうか。それとな、今度会社の記念パーティがあるんだが広也も招待されてな。良ければ来て欲しいとのことだ。これが招待状な」
「へー。父さんも出席するのか?」
「もちろんだ。本社の社長も出席されるパーティだからな」
「そんなパーティに何で俺が出席出来るんだよ?」
「正直、わからん。ただ、ビンゴ大会とかのイべントもあるから楽しめると思うぞ」
「へえ。服装はどうするの?それと、テーブルマナーは知らないぞ?」
「服装は高校の制服で構わないぞ。ただ、長袖がいいから冬服がいいかもな。あと、立食パーティだからマナーは気にする必要は無い。広也は食べ方がキレイだから問題無いだろう」
「わかった」
「すまないけど雪華ちゃんは招待されていないんだ。ごめんね」
「いえ、大丈夫です。あたしは留守番しているから、ひろ君は楽しんできてね」
「ははは。まだ先の話だよ」
記念パーティはまだ先!それよりも晩飯の準備のほうが重要だぜ。
「雪華大変だ!すぐに来てくれ!」
「ど、どうしたのよ」
晩飯のテナガエビの素揚げと野菜の天ぷらを食べ終えて入浴までのダラダラタイム中なんだけど、雪華を急いで呼びにいく。
「支社長が持ってきてくれた魚なんだけど、とんでもねぇ魚だったんだよ」
「そうなの?」
「ああ!こいつはムスメベラ。深場に生息するべラだから防波堤の釣りでは入手出来ないんだ!うひょー、最高だぜ」
「んもう。ビックリさせないでよ」
「すまん。ついテンションが上がっちまった」
「釣り船の船長もこのべラの価値を理解していないのかな?」
「ターゲットや食用以外の魚種には興味無いんだよ、きっと」
「そうなんだね」
支社長が持ってきてくれたのは3匹。支社長が持ってきてくれて、飼育している魚種も増えたなー。




