彩夏の頼みごと
「なあ雪華。烏野さんの親戚の娘はどうだ?もし、やりづらいならシフトが被らないように姉御先生に伝えておくぞ?」
「今日が初めてだったし、美夜子ちゃんが一緒だったから問題は無かったよ」
「そうか。何かあれば必ず報告してくれよ?」
「んもう。過保護なんだから」
「俺が隣にいる以上、もう傷ついて欲しくないからさ」
「……ありがとね」
「おうよ!」
今日の雪華はバイトだった。雪華を迎えに行った時には烏野さんの親戚は烏野さんと一緒に店長と話し合っていたからまだ会っていない。話し合いが終わるのを待っていてもいいけど、相手は俺の性格を知らないから待ち伏せされたと勘違いされても困るからな。
一応、烏野さんからは紹介すると言われているから待つことにしている。
「おにいちゃん。学校の理科でメダカを育てるみたいだから持っていきたいんだけど、いいかな?」
「いいぞ!どのメダカにする?可愛いダルマメダカにする?残念だけど、一般的なヒメダカはウチにはいないけど餌用に販売されているのを購入出来るぞ」
「わかんないから、先生に聞いてくるね」
「わかった、また教えてね」
「うん!あとね、へチマを育てるんだって」
「鉢植えで育てて夏休みには持って帰ってくるの?」
「学校の外のまどで育てるみたいだよ。グリーンカーテンって言うんだって」
「なるほどねー。へチマの実はどうするのかな?」
「わかんなーい。あとね、あとね。虫も育てるかもしれないんだって」
「虫かー。お嬢様も楽しみにしてそうだね」
「うん!」
帰宅して、雪華と一緒に晩飯を食べて、リビングで寛ぎながらテレビを見ていると彩夏がメダカを学校に持っていきたいと頼みごとをしてきたので快諾する。
彩夏「あとね、宿題みたいな感じで月や星ざ観察もあるみたいなんだけど夜にやるでしょ?おにいちゃん、いっしょにいてくれる?」
「もちろんだ!お友達も一緒に見るなら呼んでもいいからね」
「ありがと、おにいちゃん」
彩夏の友達も一緒に星座観察するなら家に送るのも含めて面倒を見てあげてもいいかな。
肝心の星座観察は都市部では明るくて星を見るのも困難みたいだけどここら辺は郊外。マンションもあるけど3等星くらいまでなら肉眼で見る事が出来るから勉強になるだろう。
〜彩夏が風呂へと向かった後〜
雪華「小学校に持っていくメダカはクロメダカじゃダメなの?」
「ダ〜メ。貴重な個体群ばかりだから渡すことは出来ません」
クロメダカも外で一見無造作に飼育しているように見えるけど、とても大切な種類なのだ。
「あはは。育て方も教えてあげるの?」
「俺が教えたら教科書とは全然違うマニア向けになっちまうぞ」
「あー。稚魚の餌でゾウリムシやらミドリムシやらが教室に並ぶことになりそうだね」
「おうよ。しかも光合成細菌のアレな臭いが教室内に漂うかもしれないぜ?」
「学校の教科書には記載が無いだろうから、先生も困惑するだろうね」
「扱いに困って頭を抱えるかもしれないぞ」
「確かに。ところで水槽に濾過装置はあるんだよね?」
「一応は教材扱いなんだから、あるに決まっていると思いたいな」
「だよねー」
彩夏の通う小学校では理科の授業でメダカとへチマを育てるらしい。理科の教科書を見ると春夏秋冬の虫の様子も記載があるから、また色々な虫が教室に集まるかもしれないから先生も大変になるぞ、これは。
そういや、今年も教育実習生が彩夏の学校とクラスには来るみたいだけど、俺達の高校は教育実習生の受け入れは今年は無しみたいだ。ま、去年あんな事があったから受け入れないのは当然かもしれないな。
「へチマの育て方も問題無いかもね」
「だな。俺の家庭菜園でウリ類の成長や収穫を体感しているから上手に育てられるかもな」
「ひろ君のおかげで彩夏ちゃんの強みになっているね」
「いや、彩夏自身に興味が無ければ意味の無いことだよ」
「それもそうか」
そんな会話を雪華としていたら彩夏が風呂から上がってきたのでおしまい。
「あやちゃん、へチマはタネから育てるの?」
「ううん。苗から育てているんだよ」
「そうなんだ。これをあげよう」
「これは?」
「ヒョウタンのタネだよ」
「どうするの?」
「今からタネで育てると成長に差はあるけど面白いことになるぞ、きっと」
「おにいちゃん、お主も悪よのぉ」
「先生を混乱させてあげなさい」
「「ふふふふふふふ」」
彩夏の次に雪華が風呂に入ったから彩夏にヒョウタンのタネを渡す。へチマの中にヒョウタンが実ったら先生が大混乱するだろうな。彩夏からの報告が楽しみだ。




