彩陽姉さん
彩陽「これって、アイリスの衣装だよね?今はこういうの売ってるんだね」
ごっこ遊びも終わり、今はオヤツタイム。妹弟達と雪華は着替えて彩陽姉さんが買ってきてくれたケーキを食べていて、俺は久しぶりに会った彩陽姉さんの相手をしている。
「本当に売っているのかもしれないけど、これは俺の手作りだよ」
「え?マジで?」
「法被みたいに羽織るだけだし、リボン部分は幅広の柔らかい素材があればいいしさ」
「まあ、言うのは簡単だけど実際に作るとなると面倒臭いって親のほうが多いと思うな」
「ウチってごっこ遊び好きだろ?だから衣装があったほうが盛り上がるんだよ。アイリスを選んだのは衣装が複雑じゃ無いのと、俺が戦闘BGMが好きだからだね」
「なるほどね〜。戦闘BGMは分かるわー。明るい曲調でいいよね」
「ところで彩陽姉さんはどうしてウチに?海外に行ってたのは知ってたけどさ」
「実はこの近くのマンションに引っ越ししたんだ。今日はそのご挨拶にね」
「へえ。どこのマンション?」
「ここの最寄りのバス停から行けるマンションだよ」
「あそこか!」
「凪咲さん、今度から気軽に来てもいいですかね?」
「いいわよ。ただし、ウチでご飯を食べる場合はお米代だけは欲しいわね」
「あはは。お渡しします」
「今日の晩ご飯の予定はあるの?」
「いえ。部屋もまだ片付いてないから外食の予定です」
「なら、ウチで食べていきなさい。今日はお刺身だから」
「いや、お刺身の時なんて悪いですって」
「平気よ。お刺身代は節句の時に来た両親のお金だから」
「なるほど。あの子達以外は節句のお祝いなんてしない年齢ですもんね」
「そゆこと。だから、少し遠慮して食べてくれるなら食べていきなさい。今日は引っ越し祝いでお米代はいいから」
「ありがとうございます!では、お言葉に甘えて晩ご飯ゴチになります」
「姉さんさ、連絡先とマンションの部屋教えてよ」
「広也君?あんた何を考えてるの?あんなに素敵な恋人を裏切るつもり?」
「あのなあ、イトコ同士は結婚出来るけど俺達に恋愛感情なんてねーだろがい!」
「そらそうだ。じゃ、何でよ?」
「俺は釣りが趣味だろ?最近は頻繁に釣りに行くから、お裾分けで持って行くよ。食費の節約になるだろ?」
「いいの?それはありがたい!でも、釣りばかりしてんじゃないわよ?」
「平気だって。恋人の雪華も釣り好きだからデートになるし」
「てことは、あんたの趣味に関して理解してくれてるのよね?」
「理解というより、共通してる」
「あんた!絶対に雪華ちゃんを手放すんじゃないわよ?あんたみたいな多趣味な男を受け入れてくれる人なんて現れないからね!」
「手放さないに決まってるだろ!」
「一途なのは女性側は嬉しいんだけど、女性慣れしてない男性は変な女にコロッと騙されるから心配。世の中には略奪が好きな女とかもいるのよ」
「女友達として出かける程度じゃダメなの?」
「あんた、女友達いるの?」
「うん。内宮班て呼ばれているグループの班長だから。雪華も含めて女子が8人いるよ。その内の5人は釣り倶楽部のメンバーでさ釣りに一緒に行くんだよ。ただ、必ず雪華は同行するけどね」
「へえ、あんたがねえ。どんな人なの?」
「ケーキ屋の店員」
「は?」
「だから、姉さんがケーキを購入した洋菓子店の店員だよ。雪華もあそこでバイトしてるんだ」
「ごめん。今日だけじゃ思考が追いつける気がしないわ」
右の手の平をおでこに当ててぐったりした姉さんに「お大事に」と言って姉さん見せた愛美の衣装を仕舞いに行く。
朝輝「おにいちゃん」
「ん?どした?」
「いとこのおねえさんになかむらさんをみせたい」
「いいぞ。あっくんはあのお姉さんを知ってるの?」
「うん。このまえ、ママのじいじのおうちにいたからしってる」
「愛美ちゃんも知ってるの?」
「うん」
なるほどな。朝輝の“この前”がいつかは不明だけど会っていたから怖がらなかったのか。
「彩陽姉さん。朝輝が姉さんに仕事の場面を見せたいって言うから見てくれる?」
「仕事?何のお仕事かな?」
「あっくん、いくよ」
「うん!」
俺のスマホからトランペットの音がする。そして、オモチャの刀でザシュっと空を斬る。
朝輝「あのよでまたあおうぜ!」
「どうすか姉さん、朝輝の名演技は」
「うん。ツッコミどころが満載とだけ。朝輝君は楽しいの?」
「うん!ほいくえんのあとはしごとだぜ!」
「あはは。そっかー」
「ちなみに愛美は将軍様の御庭番の女忍者役が好きなんだよ」
「あはは。なるほどね、おじいちゃん達が物をあげても喜ばないと言うわけだー」
「広也ごめーん。大将からお刺身のお皿を受け取ってくれる?お母さんは支払いするから」
「はいよ」
時間は過ぎて晩飯のお刺身を大将が届けてくれた。この頃には雪華の緊張もほとんど無くなり、女子トークもするようになっていた。
愛美と朝輝はマグロの赤身はまだ苦手。だけど中トロの炙りなら食べられるかな?と思ってやってあげたのを少し口に入れたけどダメっぽい。
愛美と朝輝はサーモンは食べられるから、チーズを乗せて炙ってあげたら好評だった。
ただ、それを見た人達によって卓上炙り器は人気となってしまった。
雪華「んーっ。大トロの炙りって最高」
ま、雪華の幸せそうな笑顔を見れたからヨシ!
晩飯後、彩陽姉さんはマンションに帰り、俺達も順番に風呂に入れば雪華と約束した就寝前の時間となる。俺と姉さんの会話を聞いていたみたいで互いに恋愛感情が無いからホッとしたというのと、会話からは嫌な感情は無いから大丈夫かもと言われた。母さんが食事に誘っていたから会う機会も増えるだろうし、雪華が嫌な気持ちにならなくて良かった。
あ、姉さんには恋人が同居しているのは両親や祖父母には必ず内緒にしてくれと言っておいた。姉さんも何かあったみたいで疲れたような表情になり「だよねー。わかっているから安心して」と言ってくれたよ。




