調理クラブは存在するのか?
「蔵持先生、こちら頼まれていたアオリイカの料理です」
「ありがとうございます。これはタッパー代と調味料代です。今回は受け取って下さい」
「わかりました。メモ紙を貼ってますが、ホウレン草ときのこのバター炒めとイカステーキフライになります。ゲソは唐揚げにしてます」
「美味しそうですね」
「念の為にイカの肝は使っていませんので」
「わかりました。ま、今日中には全部食べてしまうので保存はしないですから安心して下さい」
「わかりました。では、失礼します」
登校したら職員室に寄り、蔵持先生に昨日釣ったアオリイカ料理を渡す。利き手の手首に少し痛みがあるらしく、捌くのが難しいから今回は遠慮すると言われたから調理して渡すことにしたのだ。
ちなみに、タッパーは新しいのを購入して渡しましたからね。
「あ、ひろ君お帰り。蔵持先生は大丈夫そう?」
「手首に包帯は無かったから大丈夫だと思う。ただ、日常生活は平気でもイカを捌くとなれば力を入れるから悪化する可能性もあるしね」
「そうだね」
雪華と蔵持先生の手首についての会話はこれでおしまい。その後は別の話題になるのだった。
◇◇◇
多澤先生「放課後なのに呼び出してすみません」
「それはいいんですけど、ナゼ調理室で1年もいるんですか?」
「実はこの子達は、この高校に調理関係のクラブがあると思ったらしいんですよ」
「学校のホームページには部活紹介もあるから、調理部が無いのは知ることが出来ますよね?」
「部活は無くても、学校非公認の同好会は複数存在してますよね?そこにあると思ったらしいです」
「なるほど」
「生徒の顔は写らないように調理実習や裁縫実習の風景や完成品は撮影してホームページに載せているのは知ってますよね?」
「確かにそうですね。調理実習の場合は撮影後に実食する流れですから」
「その調理実習で他の生徒と違うのを作製している班が内宮君達の班な訳ですよ」
「そうなるんですか?他のクラスや学年の調理実習の様子は知らないので」
「それで、その班が調理クラブと思ったらしくて会わせて欲しいと頼まれたんですよ」
「なるほど。皆さん、はじめまして。作製というより、班に指示していたのはご覧の通り平凡な男子です」
「あの、多澤先生、本当にこの先輩が1年の時からあれらの料理を作製したんですか?」
「ええ、そうよ」
「先日の大きな魚を最初から捌いたのも先輩なんですか?」
「そうよ。魚は自分で釣ってきたんですって」
「「「「「は〜〜」」」」」
「あのさ、多澤先生だけじゃなくて他の一部の先生も俺が調理しているのは知ってるぞ?何度も食べてもらった事があるからさ。その中には校長と教頭も含まれてるよ」
「確かにそうね。最初は反対していた教頭も今では普通に食べる側になってますからね」
「「「「「ほえ〜〜」」」」」
「あの、失礼だと思うんですけど、まだ疑っている部分もあるので実際に調理するのを拝見する事は出来ますか?」
「俺はいいけど。多澤先生、調理室の使用許可ってどうなりますかね?」
「う〜ん。上との相談になりますね」
「それなら、テスト最終日に先生方にまた昼飯を準備するカードを出してもいいですよ」
「ま、難色を示した場合は出しましょうかね」
「今更ですけど、本当に俺の事なんですか?料理が上手い人は他にもいそうですけど」
「内宮君で間違いないですよ。確かに個人で上手い人はいますけど、個人も班員との連携も一番上手いのは内宮君だけなので」
「そうっすか」
「という訳で、彼の調理風景は早くてもテスト週間の最終日になります」
「わかりました」
「あ、肉と魚と野菜のどれを使うのかは事前に教えてね。ピンポイントにこの料理ってのは作った事が無い場合があるから難しい場合もあるから」
「食材はこちらで用意するのはアリですか?」
「いいけど、材料の目利きは大丈夫?」
「え?」
「俺、食材の鮮度とかそういったのにはうるさいよ?」
「それは脅しですか?」
多澤先生「勘違いしないほうがいいわ。彼は魚介類と野菜の民間資格を取得しているから、純粋に聞いているだけよ」
「そうですか。では、時間はあるので相談します」
「なら、この件は多澤先生が窓口になってもらっていいですか?俺と直接交渉だと萎縮するかもしれないので」
「そうですね。では、何かあれば私のところに来なさい」
「はい!では、失礼します」
「「「「「失礼します」」」」」
頭を下げてから調理室を出て行く1年達を見送る。
多澤先生「悪いわね、巻き込んじゃって」
「平気ですよ。ただ、俺よりも知名度としては新しくクラスメイトになった洋食屋のオーナー息子のほうが適任だったのでは?」
「彼はダメよ!経営の勉強はしているんでしょうけど、調理はやってないみたいだから」
「そうなんすね」
「他のクラスにも上手い子は確かにいるけど、一番は内宮君だから嘘は言えないわ」
「何だか照れますね」
「ちなみに二番は石嶺さんよ」
「おー、夫婦揃ってとは嬉しいですね」
「うふふ。それじゃあ、この件は進展があれば連絡するわね」
「わかりました。では、俺も失礼します」
多澤先生に頭を下げてから俺も調理室を出て帰路につく。雪華はバイトだから先に学校を出てるから一人だけ。
バスの車内で内宮班のグループメッセージにテスト最終日に先生向け調理があるかもしれないと送信しておいた。




