調理実習(それぞれの視点編)
〜雪華side〜
「こんな時間に誰が来たの?」
「魚屋の大将だよ。今日、雪華が捌くイサキを持ってきてくれたんだ」
「鮮直市場でも買ったよね」
「念の為にね。でも、学校に持っていくならこっちにしなよ、太って体高もあるからさ」
「イサキ以外は買わなかったの?」
「俺が求める大きさはマダイしか無かったみたいでさ、他のは予算オーバーだから購入したのはイサキだけ」
「そっか。カマスがあるのに魚が増えてごめんね」
「気にすんなって」
「ところでヒゲダイはどうするの?」
「学校にはヒラスズキを持っていくから自宅用だな。今日の晩飯にでもするか」
「いいねー。実は楽しみにしてたんだ」
調理実習で魚を食べるのに早くも晩ご飯が楽しみになっちゃったよ。
〜鳳来side〜
舞原「美夜子ちゃんのアジ、大きいね」
「一番大きなのを持ってきたから」
今日は調理実習。昨日の日曜日は釣り倶楽部の皆でアジ釣りをして来た。まあ、アジよりカマスのほうが多く釣れたんだけどさ。
「刺身用の三枚おろしの場合は皮を剥くから平気だけど、この真ん中あたりから尾ビレまであるゼイゴは取り除く必要あるからね」
今は内宮がフライ用の開き方を実際にやってくれている。他の班は許可されたスマホの動画とかを見ながらやってるけど、うちらは丁寧に教えてくれる人がいるから楽だ。先生達も内宮に任せておけばいい、みたいな雰囲気だし。
「よし!評価を貰ってきたし揚げるわよ〜」
うちらの班はアジの他にもカマスも一緒にフライにする。これは、一緒に釣りをした皆とも共有して少しずつ持ち寄ったのだ。
ジャーという揚げ物特有の音がする中、対面の内宮のところからはバターの焼けるいいニオイがしてくる。実習後の食事タイムが楽しみね!
〜明槻side〜
「眞代ちゃんごめんね」
「いいって!ほら、学校に行こう?」
調理実習用のアジは眞代ちゃん家で保管してもらっていた。カマスの釣果があるのに、このアジを食べられたら釣りしに行った意味が無いからね!
〜舞原side〜
調理実習当日、内宮君と釣りに行く人達からカマスが2尾ずつ班員みんなに配られた。今日使うアジを釣りに行ったら釣れたからお裾分けだって。そして持参したアジも大きかった。ただ、アジは釣れた大きさがバラバラで一番大きなのを持参したみたいだけど、スーパーでわたしが購入したのより全員が大きかった。
カマスのフライって美味しいのね!干した開きしか食べたことが無かったけど。ただ、スーパーでは見たことが無いのよね、生のカマスって。
〜クラスメイトside その1〜
内宮君が魚を捌くって事で見学しに行く。どうせアジより少し大きな魚だろうと思っていたけど、まな板の上に乗せたのは60cm以上はありそうな魚だった。一緒に来た友達と思わずポカンと口を開けてしまったが、捌くのも手慣れていた。彼とは1年の時から同じクラスメイトだけど、やっぱりスゴいや。砥石を使った包丁研ぎも出来るみたいだし、将来お嫁さんになる石嶺さんが羨ましい。
〜クラスメイトside その2〜
内宮君が持参した魚の名前はヒラスズキというらしい。今は食事タイムだからスマホで検索してみると高級魚となっている。販売価格が気になり、引き続き調べてみるとキロ売りだった。しかも、全部のサイトが入荷未定となっている。えーっ?そんな魚を調理実習で食べてるのー?と思い内宮君に直接聞いてみると買えば1万円位するよ、とあっけらかんと答えた。いいなーと思い、残って無いか聞くも骨から出汁を取った味噌汁も無いとの事でガッカリしてると、石嶺さんからカマスという魚のフライをいただいた。この魚、アジよりウマイんですけどー。
〜蔵持先生side〜
調理室での食事も終わり、職員室の自分の机で寛いでいると九條先生が話しかけてきた。
「蔵持先生、今よろしいですか?」
「はい。クラスの事で何か連絡事項がありますか?」
「いえ。調理実習の材料費の事で」
「お米代なら不要ですよ。実家から送られてきたのを3合分だけ持ってきただけですから」
「ありがとうございます。それとは別に内宮君に渡す必要はありますか?調べてみると高級魚みたいなのですが」
「不要ですよ。昨日、自分で釣ってきたみたいですし」
「なら、交通費だけでも」
「彼はそういったのは受け取りませんよ。美味しく食べて、ごちそうさまをすれば喜ぶ性格なので」
「そうですか。わかりました」
今日は内臓処理をしていないから加熱調理のムニエルにしていたけど、内宮君なら刺身とかの生食を提供するのも可能。ヒラスズキの握り寿司を回らない店の場合は数千円。回転寿司でも特注品扱いでそれなりの値段になるのは九條先生には黙っておきましょう。




