プランクトン採集
陽翔と笹嶋さんとダブルデートした翌日の日曜に雪華とふたりで防波堤にやってきた。
「いい防波堤じゃないの。何で釣りで来ないの?」
「透明度があるから、海中覗いてみ」
「どれ。あー、なるほど。海藻がすごいのか」
「そ。ただ、アオリイカが産卵に来るから狙えるけど中層を常に攻める必要あるから難易度高めの釣り場なんだ」
「こりゃ、あたしも無理だわ」
「さ、今日は釣り具を持参してないし、プランクトン採集をするよ」
「はーい」
まずは漏斗にプランクトンネットをセットしてから2リットルのペットボトルに付けて、と。
「それじゃあ雪華はペットボトルと漏斗がズレないように持っていてね」
「まかせて」
まずは海底付近の海水を水くみバケツで採取して漏斗に流していくのを数回繰り返せば、ペットボトルは満タンになる。
「ひろ君、ゴミもあるとは思うけどネットに集まったのはどうするの?」
「一応、この広口瓶に入れて持ち帰る予定だよ」
「わかった」
プランクトンネットは本来、培養したプランクトンを集めるためのものとなる。今回はこれを逆に利用して、プランクトンネットを通過するより微細なのをペットボトルで持ち帰るのが目的だ。
「それじゃあ、今度は中層な」
「はーい」
海底付近が終われば、次は中層。最後に海面付近のを採取して終了。プランクトンネットに集まったのも海水を採取した場所別にしておいた。
「ひろ君見てみなよ。広口瓶に入れたのはピコピコと動いてるのがいるよ」
「ヤドカリやカニの幼生とかもいるんだろうな。とりあえず、この大きさでも捕食可能な水槽に投入してやろう」
「稚魚以外にも、ヨウジウオにも良さそうだね」
「だな」
プランクトン食の海水魚も結構いるからな。培養しているから考えてなかったけど、食い付き具合によっては天然物もたまには与えてもいいかもな。
「ここの海水を採取していくの?」
今度は近場の潮溜りにやって来ました。
「多分だけど、大潮周期の時にしか海水の入れ替わりが無いと思うんだよね」
「確かに濁り水だし、岩に付着しているのも海藻とは違って“ただの藻”って感じだもんね」
「水槽内で藻の発生は困るけど、この藻以外の植物性プランクトンも採取出来るかもだしな。ただ、ペットボトル1本分だけ採取して終わりにするから」
「はーい」
ペットボトルを潮溜りに入れて海水を入れたら作業終了。
「それじゃあ、少しだけガサガサして帰ろうか。岩場に付着しているのは青のりで、上を歩くとスべるから歩いたらダメだぞ」
「うん」
念の為に危険そうな場所は手を繋いで雪華の安全を最優先にして移動する。
「夏の潮溜りでは少ないアメフラシが多いね」
「だな。アメフラシじゃなくて水槽飼育が可能なウミウシ類なら嬉しいんだけどな」
「ウミウシは綺麗なんだけどね」
「だよな。ただ、エサが判明しているウミウシでもエサを水槽に導入出来ないのは絶食になるから飼育しないけどな」
ちなみにアメフラシは海藻食でスーパーで手軽に買える生ワカメが好きな個体であれば飼育は可能。ただ、大きいのは30cm位までデカくなるし、水槽を汚す頻度が高いから飼育はしないけど。色も茶系が多くて地味だしな。ま、白いアルビノ個体なら飼育してやろう!と謎の上から目線で言ってみる。
「何だか、イソスジエビとは違う種類のエビも混じるね」
「だな。まだ幼体の可能性もあるから、同定は難しいけど」
エビ類はもちろん、小型のカニ類も採集して本日の作業は終了。
「楽しかったね」
今は帰りの電車内。潮溜りのある岩場では常に青のりを目にしていたからか、駅前の売店で青のりの佃煮の瓶詰めを雪華が欲しがったからお土産に2瓶購入しました。
「あとは、目的のプランクトンがいればいいけど」
「こればかりは、現時点ではわからないよね」
「だよなー」
「ところでさ、イソスジエビって食べられるよね?食べないの?」
「あー。かき揚げとかにすると美味いって聞くけど、ウチの家族全員分を確保するとなった場合はかなりの数を採集する必要あるだろ?だから食べない」
「確かに小さいから数が必要か」
「魚のエサで採集させてもらっているのに俺達家族の分まで、っていうのは申し訳なくてさ」
「ひろ君て変なこだわりがあるよね。でも、そういったところも好きだよ」
「ありがとな」
実はイソスジエビって水槽内繁殖が簡単な部類なんだよね。だけど、飼育魚が多いから供給が追いつかないから採集は必要なんだよ。個人的にはホワイトソックスとかの観賞魚店で高値の種類が繁殖してくれたほうが嬉しいんですけどね。
疲れからか、途中から雪華は寝てしまったから脇で頭を抱えるような体勢でいる。最寄り駅まで直通で行けるから乗り換えで起こす必要も無いからな。
「ふあ〜」
「バスでは寝ないでよ?それに寝すぎると夜に眠れなくなるぞ?明日は学校なんだから」
「わかってるよー。寝起きであくびが連発しているだけだって」
最寄り駅で乗車したバスの車内でもあくびをしている雪華を注意する。短時間しか乗らないんだから頼みますよ?
「「ただいまー」」
「「「おかえりなさーい」」」
無事にウチに到着したら妹弟に出迎えられる。いつも通りに手洗いうがいをしてから軽く頭を撫でてから飼育部屋に向かい、用意していた培養用の容器に海水を投入してエアレーションを作動!
動物性プランクトン狙いの防波堤で採取した海水には自宅培養の植物プランクトンを海水が緑色になるまで与えておく。これが薄くなれば、動物性プランクトンがいる証拠になるからな。潮溜りで採取した海水はそのまま様子見。ガサガサで採集したエビとかは水合わせを開始、風呂に入る前に水槽に導入出来るだろう。




