ひな祭り後の日曜
「ひろ君、両生類エリアからヒナ鳥の鳴き声がするよ?逃げ出したのかなあ?」
「安心しろって、あれはアイフィンガーガエルの鳴き声だから」
「なーんだ」
現在、飼育部屋ではカナリヤ軍団が子育て真っ最中でヒナ鳥の声が聞こえてくる。雪華に伝えたように、老鳥のカナリヤ夫婦のヒナ鳥は手乗り用のヒナとして買取してもらう。カナリヤのヒナ販売は珍しいから、意外と高値で買取してくれるからありがたいぜ!買取して得た収入は最近銀行で新しく開設した口座に貯金する。この口座は雪華の婚約と結婚指輪、それと結婚式の費用にする予定で、役目を終えた後は自動車の購入資金になる予定。口座開設は今までと違う銀行にするから父さんに付き合ってもらったんだけど「何社に口座開設するんだよ」と笑われてしまった。「目的別に貯金したいんだから仕方無いだろ」と言ったら「変わってる」と言われてしまった。でも、否定はしないから理解のある父さんなのだ!
「アイフィンガーガエルちゃんも買取してもらうの?」
「いや、オークション行き。ただ、雌雄の判別が出来て繁殖可能の個体になってからだから、今から繁殖する分は来年以降だな。出品予定の繁殖可能個体はコチラに待機中でございます」
「結構いるね」
「アイフィンガーガエル以外にもグミガエルとかも出品予定だから、夏休みのガサガサ費用は問題無しだぞ」
「頼りにしてます。でも、高3の夏休みなのに遊ぶのはあたしら位じゃない?」
「鳳来さんとか一部の人達は俺らと同じく専門学校組だから余裕はありそうだよな」
「そうなのかな?でも来月から3年かあ」
「だな。ま、俺達は大学進学じゃないから今までと同じ感じで過ごしてこうぜ?」
「そだね」
内宮班は3年になっても同じクラスなのはフライングで知る事が出来たけど、その他のクラスメイトの入れ替えは知らないまま。雪華に危害を加えるような人にならなきゃいいけど。小学生時代で男子より女子のほうが陰湿な嫌がらせをしてくるのを知っているから注意するのは女子だな。現に高校入学当初は一部の女子達が雪華の容姿がモテそうだから排除しようとした動きもあったからな。ま、俺とのラブラブっぷりを見せつけて大人しくさせたけど。懐かしい記憶だな。
飼育部屋の作業も終わり、俺はキッチンにてホワイトデーに渡すクッキーの試作中で、レモンティーとかの粉末を混ぜ込んだ紅茶クッキーを作っている。
「クッキーの試作品作りも大変だね」
「彩夏の友達や内宮班には市販のクッキーでいいけど、保育園の子達はアレルギー持ちの子もいるから手作りにしてあげないと」
「優しいんだから」
「自分の子供は特に甘やかしてやるから安心しろって」
「んもう。なら、体の相性チェックしないとね」
「わかってる。来年、確かめてもらうから」
「優しくしてよね」
「もちろんだ。ただ、その後は容赦出来ないと思うから」
「お、お手柔らかにね」
「悪いけど「はい」とは言えないな」
「……あたし、どうなっちゃうの」
現在、両親は愛美と朝輝と一緒に公園に遊びに行っているし、彩夏はリビングにて宿題中。なので、雪華とのバカップルな会話内容は誰にも聞かれていない。
「よし!これで生地を寝かせて焼けば完成だな」
ついでに抹茶とほうじ茶の粉末も混ぜたクッキー生地も作ってみた。
「おにいちゃん、ここ教えて?」
「よしきた」
その後、俺と雪華は彩夏と一緒にゲームを楽しんだ。
「荷物を届けに来たみたいだから、受け取っておいたぞ。今度は何を買って飼育するんだ?」
「これは飼育じゃなくて、食材だよ」
彩夏とのゲーム時間も終わり、ダイニングテーブルでまったりしていると両親が帰宅した。彩夏と雪華はリビングのテーブルで焼いたクッキーを食べている。
「「なーにー?」」
手洗いうがいを済ませた愛美と朝輝が荷物の中身が気になっているから、取り出した中身を見せてあげる。
朝輝「おっきなサザエだ!」
朝輝の声に雪華と彩夏もダイニングへと来て、家族全員集合。
「これは、沖縄とかで食べられている夜光貝だよ。今日はこの貝のガーリックバター炒めがメインのおかずです」
「「「わー」」」
妹弟達が喜び、両親が俺が持っている以外の貝を見ている中で雪華は俺をジト目で見ていた。まさか俺がこの貝を買った理由を勘違いしてないか?
「事情聴取のお時間です」
夜光貝のガーリックバター炒めを美味しく食べた雪華さんが就寝前のいつもの時間に俺に事情聴取があるらしい。身に覚えがございません。
「夜光貝を殻つきのまま買った理由は?」
「父さんが夜光貝の貝殻加工をしてみたいって言ったからだけど?」
「え?」
「ん?何?」
「いや、てっきりオカヤドカリとかに使うのかなと思って」
「それならサザエのほうが貝殻が軽いし、大きさも幅広くあるから楽だよ」
「それもそうね。ごめん、勘違いしてた」
「はは〜ん。さては夜光貝を加工して磨かずに、別な事に使うのをツッコむ予定だったな?」
「その通りでございます」
「残念だったな。手軽なサザエがあるのに夜光貝にする必要無いじゃん」
「確かにそうよねー。それとは別に夜光貝美味しかったから、また食べようよ」
「予約だけはしておく。入荷はいつになるか不明だけどな」
「うん!」
実際に見た夜光貝のゴツい貝殻はサザエに無い魅力があったのは確かなんだよな。海水水槽のレイアウトに良さそうだと思ったのは雪華に内緒。




