高校入試日の釣り倶楽部
「今日はサビキでのカタクチイワシ釣りです。群れが回遊するのを願いましょう!」
ついに、高校入試で休校の日に我々釣り倶楽部はカタクチイワシを釣りに防波堤へとやってきた。この時期は大型の群れで行動するから回遊があれば入れ食いで大漁となる。逆に回遊が無ければ釣り倶楽部初めてのボウズ、つまり全然釣れない日となる。
雪華「イワシの回遊があるって事は肉食魚やイカも来るんじゃないの?」
「残念ながら難しいな。3月下旬なら来るだろうけど、海水温が低いから沖の深い場所で生活しているからな」
「そっか。胴突仕掛けはやらないの?」
「ここの海底って微妙なんだよ。まず、砂地じゃないから砂地が好きな魚は生息していないし、岩礁帯が近場にないからメジナとかの生息も少ないと感じるんだ、だからやるだけムダなんだよ」
「うわー。こりゃイワシの回遊が無ければボウズ確定だ」
釣りを開始して数時間、まだ誰も釣れていない。女子がお喋りに夢中になっているから、俺は岸壁採集中。運が良ければ深海魚、例えば有名なリュウグウノツカイの幼魚も採集可能なんだけど、そんな都合良く採集出来ませんて。
「! みんな竿を構えて!もしかしたら最初で最後の釣れるかどうかの時間だぞ!」
海面を見ていたら黒い群れが中層付近を泳いでいるのがわかったので全員に通達!さあ、正念場だぞ。
軽く竿を上下に振ると、すぐにグラグラとしたアタリを感じるからリールを巻くと待望のカタクチイワシが釣れたぜ!もちろんサビキ釣りの醍醐味である複数に針掛かりしている。群れを留めておく為にコマセも少し撒きつつ、釣り上げていく。
鳳来「ふーっ。釣れたのは嬉しいけど忙しかったー」
烏野「ですね。入れ食いはワカサギ釣り以来でしたね」
笹嶋「その時より忙しかった」
「鮮度保持の為に海水を取り替えるよー」
群れが去り、クーラーボックス内の海水が汚れているから防波堤の先端付近の海水を汲んできてみんなのクーラーボックス内の海水を取り替えていく。釣れた状況を確認すると全員が20匹位は釣れているので、ホッとする。
「2回目の群れが来たぞー!」
「「「「「おおー」」」」」
今回は前回の群れの規模よりデカい!もしかしたら、数が減った前回の群れが合流した可能性もあるかも。悪いけど、俺達の食卓に行ってもらうぜ!
明槻「体格の違う魚が釣れたよ」
「おお!これはサッパだな。小骨が多い魚だから好き嫌いが出る魚だけど、焼き魚にすると美味しいぞ」
「くっ!また新たな魚が!」
そんな、くっ殺女騎士みたいなセリフを言わんで頂戴。顔の表情は違うけど。
「おーし。大漁だし終わりにすっかー。バイトの時間もあるし」
「「「「はーい」」」」
という訳で納竿しましょ。
雪華「終わってみれば大漁で良かったね」
「だな。カタクチイワシ釣りの釣果としては期待通りだよ」
鳳来「内宮のオススメの食べ方ってある?」
「スーパーで良く見るマイワシに比べると小型だろ?だから鮮度落ちも早いから釣り人特権の刺身だな。あとは苦みがあるから内臓処理をするかどうかは任せるけど、天ぷらやフライ。煮物なら内臓処理をしなくても味つけで変えられるし楽かもな。刺身以外は内臓処理は別として頭から骨まで丸ごと食べられるぞ」
鳳来「刺身かー。小さいから捌くの面倒かも」
「手で簡単に出来るよ。捌き方を解説している動画もあるし参考にすればいいよ」
「「「へー」」」
笹嶋「頭と内臓も簡単に取れる方法だから、つみれを作るのにも便利だよ」
鳳来「なるほどねー」
帰りの電車内での話題はカタクチイワシの調理方法。何せ70匹近く釣れたからな。群れが来ればまだ釣れただろうけど、必要以上に釣らないのが俺達の釣りだ。家族全員が美味しいと感じて食べる分だけ釣ればいいからな。笹嶋さんは桃瀬さんに、烏野さんと鳳来さんは彼氏にお裾分けするから少し多めに釣っている。尚、今日の釣りは釣れるかどうか不明だったから蔵持先生には教えてないので、お裾分けは無い。
「この格好だし、事務所には寄らずにここで。バイト頑張ってな」
「うん!」
今日、雪華はバイトなので最寄り駅から直接バイト先の洋菓子店に向かい別れる。明槻さんも一緒のシフトだけど一旦帰宅して荷物を置いてから出勤するんだって。ま、平日だから家族の迎えは無理みたいだし仕方無いのかな。パートから帰宅する母親が調理するから晩飯のおかずにはなるみたいだけど。
「ただいまー」
「お帰りなさい。あら?雪華ちゃんは?」
「そのままバイト先に送ってきた。少し早めの出勤だけどさ」
「そうなのね。釣れた?」
「おう。狙いのカタクチイワシが大漁だ!刺身は決定として、残りはどうする?」
「頭から丸ごと食べられる煮物にしましょ。内臓は取り除く必要はあるけど」
「了解だ!」
内臓を取り除くのは愛美と朝輝の為。彩夏くらいの年齢になれば大丈夫みたいだけど、念の為に内臓は食べさせないことにしている。
鳳来さんに伝えたように刺身用は手で捌き、取り除いた頭と骨も煮物用の鍋に入れていく。骨ごと柔らかく煮るなら圧力鍋の出番だけど、小魚だから普通の鍋でも十分柔らかくなるから楽だ。
刺身と煮物を妹弟達が美味しく食べているのを見届けたら雪華を迎えに洋菓子店に行き、一緒に帰宅する。
「んーっ。そのままでも美味しいけど、刻みネギと刻み生姜を加えた“たたき”もおいしー!ごはんのおかわりまだある?」
「あるぞ!少しだけ追加で炊いといたからな」
「さっすが、ひろ君。煮物でもう一杯の予定だよ」
「だよな。ただ、春休みまでは釣り倶楽部の活動を休止したいよ。海水温が上昇すればターゲットが多彩になるし」
「あはは」
そんな会話をしながら晩飯を終えるのだった。




