家族旅行2日目(中編)
「へえ、女性は浴衣のレンタルをしてるみたいだな。雪華着てみる?」
「動きづらいから遠慮しとく」
「確かにな」
施設に到着した俺達は入場料を支払い、建物内へと入る。すると、温浴施設もある関係で浴衣のレンタルがあったから雪華に提案するも拒否されてしまった。
「それでは昼食までの時間は別行動で。私達はサウナに行きますから」
雪華の両親はサウナのあるフロアへと向かって行く。
「父さんと母さんも岩盤浴にでも行ってきたら?妹弟は俺と雪華で見てるから」
「そう?なら、お言葉に甘えようかしら」
「何かあればすぐに連絡するんだぞ!」
「あいよ」
「雪華ってサウナには入らないの?」
「中学の時におばあちゃんの所で入ったんだけど、息苦しくなったのよ。それからは入らなくなったわね」
「へえ〜。髪色は遺伝したのに、体質は遺伝しなかったって事なのかな?」
「関係無いと思うわよ」
俺は愛美と手を繋ぎ、彩夏は朝輝と手を繋ぎながら移動している。向かっているのはお土産コーナーだ。
「買うのはここから旅館に帰る時にするから、今は見るだけだよ」
「「「はーい」」」
「コーナーというより、エリアって感じね」
「だな」
ショッピングモールのように複数の店舗があるような感じなんだけど、会計は1か所で済むみたいで楽そうだ。
朝輝「おにいちゃん、このおさかな、うちにいるね」
「似ているけど別の種類だよ。これはネオンテトラでウチのはカージナルテトラ」
朝輝「わかんなーい」
お土産コーナーの休憩スぺースに水槽が設置されていたのを朝輝が見つけた。幼い子供が水槽を叩かないように柵があり、仮に大人が抱っこしても手が届かないように工夫してある。ま、妹弟はそんな愚かな事はしないけど。
彩夏「おにいちゃん、ランが売ってるよ!」
「おお。地熱でも利用してるんかね」
「きのこはないみたい」
「残念だね」
「うん」
愛美「おにいちゃん、これほしい」
「帰りに買ってあげるから、今は我慢して」
「やくそくだよ」
「はいよ」
「お土産コーナー充実してるわね」
「だな。ここで済みそうで助かるよ」
「ランは買うの?」
「帰りに売り切れてなければ、下垂シンビジュームとミルトニアは買おうかな」
「あー。ひろ君が好きそうだと、あたしも思ってた」
ここでお土産が揃うのはありがたいぜ。
「柔道か何かの稽古中かな?」
「かもな。少し見学させてもらうか」
彩夏「見たーい」
お土産コーナーを見ている内に両親の岩盤浴が終わり、現在は俺と雪華と彩夏の三人で散策中。そんな中、畳の部屋で何やらやっているので見学していると道場生?に声をかけられた。
「どうかされましたか?」
「勝手に見学してすみませんでした。さ、行こうか」
「あ、見学を咎めている訳ではありません。興味がおありですか?」
「ええ、まあ」
「実際にやってみますか?」
「俺達が習っているのは護身術なので、それで良ければ受けてもらえるとありがたいのですが」
「護身術ですか。構いませんよ」
「あやちゃん、体験させてくれるって。どうする?」
「やりたい!」
「では、お願いしてもいいですか?」
という事で体験する事になった。俺と雪華もやるかは不明だけど昼飯前の腹ごなしには丁度いいかも。
「すみませんが、相手をあの中学生?の男子でお願いできますか?」
ストレッチをさせてもらった後に彩夏の対戦相手は同年代ぽかったので体格差のある相手を指名させて貰った。見学には俺ら家族とサウナを終えた雪華両親もいるので全員揃っている。
「構いませんが、そちらは平気ですか?」
「はい。確認なのですが、君は受け身は大丈夫ですか?」
「もちろんです」
「あやちゃん。受け身大丈夫だから、投げ技やってもいいよ」
「やったー」
そう言ってピョンと跳ねる彩夏。
「では、投げ技をやってみて下さい。構わないな?」
「はい!もちろんです」
「あやちゃん。投げさせてくれるって」
「おねがいしまーす。じゃあ、ここを持ってくれますか?」
そう言って自分の二の腕の服を掴ませた瞬間に相手の腕をロックして投げる。その後、うつ伏せにしようと奮闘するもダメだった。
「おにいちゃん、ごめんなさーい。出来なかった」
「そうだな。もっと練習しような」
「うん!」
そんな俺達の、のほほんとした会話とは違い道場生達はザワついていた。体格差のある相手を簡単に投げたのに驚いているようだ!こんなの護身術では当たり前だよ?
「はいはーい。次はあたしがやりたいです!相手はそちらの男性でお願いします!」
「待ってくれ!彼氏として、男性相手は複雑なんだけど!」
「大丈夫よ。相手を暴漢と考えれば」
「でもなあ」
「んもう。ひろ君以外を自由に投げられる貴重な機会よ?ね、お願い」
「わかったよ。ただ、やりすぎるなよ」
「はーい」
てな訳で始まったんだけど、受け身をキチンと出来るもんだから楽しくなった雪華は投げ技を連発。相手の息が荒くなってきたので止めに入る。
「ヤメ、ヤメ!やりすぎるなって言っただろ?相手の息が荒いから、もうおしまい」
「えー?関節キメやれなかった」
「もう勘弁してあげて?」
「投げ技を受けて下さりありがとうございました!楽しかったです」
そう言ってぺコリとお辞儀をする。ただ相手は息が乱れて座っているけど。雪華?雪華ならあの程度なら大して息は乱れないよ。
「君達はいつもあの様な訓練をしているのかね?」
「はい。二人はしませんでしたが関節をキメて逃げる隙を作ったり制圧するまでがセットです」
「君も実力があるのかい?」
「はい!それなりに」
「では、この俺が受けよう。体重は100キロ越えだから簡単にはやられないよ?」
「では、捨て身技をやらせてもらいます」
そう言って素早く投げ、うつ伏せにして関節をキメればおしまい。ただ、この道場長?は投げた時に「うわー」、関節をキメた時には「いででででで」と騒いでたけど、上の立場として威厳は大丈夫かなあ?少し心配になるぜ!
最後は三人で全員に向かい「ありがとうございました」とお礼を伝えて部屋を出る。その時には「スゲー」とか「体格差関係無しかよ」と言ったザワつかせてしまった。そんな空気の中、彩夏は両親に向かい「ブイッ」とVサインをしてたよ。
さ、昼飯を食べにレストランフロアに行こうぜ!




