温泉街到着と街中でのトラブル
「今回の旅行中、雨が降るのかな?」
「確かに雨雲っぽいのがあるけど、俺達の家やこれから向かう温泉街とは別方向だぞ」
「そうなの?」
「俺達が今いる高速のサービスエリアがここで、自宅方向がこっちで温泉街がここ。雨雲と思われる雲があるのは、この方向。な、大丈夫だろ?」
スマホの位置情報を見せながら、雪華に解説する。
「良かったー」
「天気予報見れば雨の予報じゃないのは、わかるだろうに」
「だって、自宅付近の設定なんだもん」
高速で小休憩に立ち寄ったサービスエリアは見晴らしが良くて、雨雲が見えた雪華が旅行中の雨を心配してきたけど、別方向なので問題無し。あの雨雲だってかなり先の県になるんだろうし、雨の観測地点を調べれば分かると思うけど、今は妹弟達と一緒にいちご味のソフトクリームを食べているから面倒臭いよ。
「あの、すみませんが帰宅時にもこの道の駅に立ち寄っていただく事は可能ですか?」
「可能ですが、どうかされましたか?」
「ここで販売している新鮮卵と野菜、それとこのお土産を購入したいと思いまして」
「それなら、当旅館で取り寄せ出来ますよ。ここと旅館は同じエリアなので業者も一緒ですから」
「それならお願いしてもいいですか?」
「はい。フロントにて要望をお伝え下さい」
「わかりました」
旅館到着前、最後の休憩場所でいいものを見つけたので購入を決めた。ここに立ち寄ったのは彩夏がトイレに行きたそうな雰囲気だったから、俺が行きたいと旅館のスタッフさんにお願いした。去年と同じ道だから到着まで10分近くあるのは理解していたし、近場に休憩出来る場所があれば「我慢出来ませんか?」と言われる事は無いと思ったからだ。
「おにいちゃん、ありがとっ」
「トイレ大丈夫だった?」
「うん」
「この事はお兄ちゃんとだけのヒミツね」
「うん!」
母さんは薄々勘付いているだろうけどね。母親の目は誤魔化せないよ。
「今回は前回と別の部屋なんだね」
「民宿とは違うんだから、毎回同じ部屋なんて事は無いさ」
「それもそうか」
今回も内宮家は内風呂付き客室となっていて、雪華達もこの風呂を利用予定となっている。もちろん大浴場もあるけど、目線の高さが違うだけで景色は一緒みたいだから行く予定は無いんだとか。
「今回は最初から味噌ラーメンにするぞお」
「雪華、残念なお知らせがあります。味噌ラーメンを提供する店ですが、本日定休日です」
「えーっ。本当に?」
「うん。仲居さんに確認したから間違い無いよ。だから別の店に行くけど、その店に味噌ラーメンはありません」
「ガックリ」
そんな会話をしながら歩いていると、ハーフヘルメットをしている男性が女性に絡んでいた。相手は妊婦さんみたいなので気になり近寄ると野次馬からは警察には通報したとの会話が聞こえてくるが、まだ到着しそうにない。
「母さんは妊婦さんのケアを!雪華は仲間がいた場合に備えて警戒してくれ」
そう伝えてから、俺は妊婦さんと男の間に割り込んだ。男が妊婦さんに手を上げようとしたからだ。
「ヤメロよ!相手は妊婦さんだぞ?」
「ウルセー!ガキが!ちんたら歩いてて腹が立つんだよ!」
「妊婦さんなんだから歩くのが遅いのは仕方無いだろ?それに道のど真ん中を歩いてた訳じゃなさそうだし。こうして因縁つけて野次馬がいる今のほうが迷惑だろうに」
「ごちゃごちゃとウルセーんだよ!」
そう言って殴ろうとしてきたから腕を取り地面に投げるように転ばせてから、うつ伏せにして関節をキメて身動きを封じる。ヘルメットしてたし、頭の保護は大丈夫だから気にせず出来たぜ!相手は何が起きたのか理解してないみたいだけど。
男のうめき声が下から聞こえてくる中、サイレンが聞こえてきたら警官が近寄ってきたので、男と一緒に立ち上がる。
男はパトカー内に連行され、俺も事情を聞かれたけど、妊婦さんが絡まれている様子を複数の人達が撮影していたのでお咎め無し。念の為にと連絡先を聞かれたけど旅行中だから、と滞在先の旅館と宿泊日数だけ答えておいた。
「母さん、妊婦さんは大丈夫?」
「お腹が張ってきたって言うから警官の人に伝えて病院に行くよう手配したわ」
「そっか。雪華も警戒ありがとな」
「どういたしまして。それより、あたしとの組み手の時に手加減してるでしょ!」
「練習としては手加減してないよ。ただ、実戦の場合は相手の動きの先を行く必要があるからな」
彩夏「おにいちゃんはやっぱりスゴイな」
「お兄ちゃんは10年以上続けているからね。あやちゃんも続けていれば出来るようになるよ」
「ガンバる!」
昼飯時間を過ぎているのに軽い運動までしたから空腹感が増してしまった。早く食べに行こうぜ!
〜親達の会話〜
「いや〜。広也君は相変わらずスゴイですね」
「そうですね。私は無理ですよ、習ってませんし」
「ただ、娘に警戒させていたのはどうなんですかね?」
「この中で広也君の次に実力があるのは雪華ですから、当然の判断よ」
「凪咲さんよりもか?」
「そうですね。わたしよりも上ですよ。たまにふたりで特訓しているみたいだし」
「ええ。最近は捨て身技を習っているんですって」
「広也君には必ず娘を嫁にしてもらわないと」
「「「ははははは」」」




