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第二話 チートなスキルで生活確立

この作品は自分が楽しむためのAI利用した作品です

他の人も見られるようにしていますが基本的には修正や編集は大きな間違いだけにしか対応しません

 武は這いつくばるようにして、洞窟の最奥へと移動した。背中を冷たい岩壁にぴったりと預け、視線は常に唯一の侵入経路である入り口へと向け続ける。いつあの猛獣たちがこの穴を見つけるか分からない。極限の緊張感の中、武はまず、自分が今持っている「全財産」を確認することにした。


 泥まみれのスーツ。ポケットを探ると、いつも持ち歩いている現代日本の遺物だけがそこにあった。


「スマートフォン、100円ライター、財布の中の小銭が数百円と数枚の野口英世、それから……会社の、名刺入れ」


 絶望的なほどに、この原始の荒野では役に立たないラインナップだった。だが、武にはもう一つの、文字通り「神のチート」というべき能力が脳内に確立されていた。


 武は意識を集中し、脳内に埋め込まれた【次元間トレーダー(TRADER)】のスキルを起動した。脳裏に網膜投影されるように、無機質で洗練されたシステムウィンドウが広がる。


 その詳細を確認していくにつれ、武の商社マンとしての血が激しく逆流した。


 ――【次元間トレーダー(TRADER)システム起動】

 ――【アカウント名:山門 武】

 ――【基本通貨単位:エン(¥)】

 ――【初期所持金:0 エン】


 脳内に流れ込む絶対的なシステム知識。それは、武の想像を遥かに超越した万能の交易権能だった。


 まず、取引に使用する通貨は、武にとって馴染み深い「エン」であること。

 そして、取引可能な対象は、単なる現代日本の工業製品に留まらない。並行世界の日本の品々、未知のテクノロジーで組まれた「科学製品」、ファンタジーの概念を具現化した「魔法製品」、理を歪める「超能力製品」一つ一つありとあらゆる次元の物質や概念を、いつでも、何個でも、制限なしで取り寄せることができる。


 もちろん、この世界の物質をシステムに「買い取り」させることも可能で、そこから無限にエンを稼ぎ出すことができる。さらに、市場の相場を感知して自動で資源を換金する「自動売買機能」など、極めて使いやすい便利機能まで標準搭載されていた。


「これがあれば……」


 武の乾いた唇が、不敵に吊り上がった。

 2026年の東京では、満員電車に揺られ、上司の理不尽に耐えるだけの歯車に過ぎなかった。だが、タイムトラベルという運命の悪戯は、彼にこの「手付かずの無限の富」と「最強のチート能力」を与えたのだ。


 誰もいない地球。すべてが未開の資源。そして、次元を超えるトレーダーの力。


 暗い洞窟の奥で、山門武の目が、捕食者たちとは違う意味でギラギラと輝き始めた。絶望は一瞬で消え去り、脳内はすでに、この過酷な太古の地球で生き残る為ためのロードマップを描き始めていた。


 武は不敵に笑い、システム画面の『買い取り』項目へと手を伸ばした。まずは、この過酷な初日の夜を生き抜くための、圧倒的なミリタリーと内政の力を手に入れるために。


 システム画面の右上に表示された【初期所持金:0 エン】の無機質な数字を見つめ、武はがっくりと肩を落とした。


(チートスキルがあっても、軍資金がゼロじゃ意味がないか……) 


 これさえあれば衣食住に困ることはないと分かっただけに、落胆は大きかった。神田駅のホームで意識を失ってから一体何時間が経過したのだろうか。時計の代わりであるスマートフォンの画面を見るが、時間の感覚が完全に狂っている。 


 その時、ぐぅ、と情けない音が洞窟の奥に響いた。


(小腹が減ってるな……) 


 緊張が少し解けたせいか、急に胃袋が自己主張を始めていた。本格的に飢餓感が襲ってくる前になんとかしなければならない。武は焦る気持ちを抑え、すがるような思いで脳内のシステム画面にある『食料』のタブをクリックした。 


 視界にずらりと並んだ商品リスト。それを見た武は、驚きに目を見張った。


(おいおい、これって……!) 


 画面に表示されていたのは、日本のコンビニやスーパーでお馴染みの光景だった。

 おにぎり、惣菜パン、カップ麺、ミネラルウォーター、そしてキンキンに冷えていそうな缶ビールまで。驚くべきことに、そのすべてのラインナップと値段は、武が昨日まで生きていた現代社会とまったく同じだった。


 高級おにぎり(鮭):160エン

 特盛り特製カップ焼きそば:240エン

 国産ミネラルウォーター(500ml):110エン 


 どれも数回、自動販売機にコインを入れれば買えるものばかりだ。いつもなら見向きもしないようなジャンクフードの画像が、今の武には最高級ホテルのフルコースよりも魅力的で、眩しく見えた。


(値段は据え置きか。だったら、たった数百エンさえ稼げれば、すぐにでも日本の美味い飯が食える……!) 


 目の前に並ぶ「現代の味」への渇望が、武の商社マンとしての思考を完全に覚醒させた。

 財布の中には、いつも持っている数百円の小銭と野口英世が数枚ある。これをそのままシステムに入金して換金できるか試すか。あるいは、この未開の洞窟に転がっている「何か」をシステムに買い取らせるか。 

 武は生唾を飲み込みながら、最初の「エン」を稼ぎ出すための獲物を探すため、鋭い視線を洞窟の闇へと走らせた。


「……チッ、やっぱりダメか」 


 武は財布から取り出した千円札3枚と、100円玉や10円玉が混ざった小銭、合わせて数千円分の「現代日本の現金」をシステム画面に押し当ててみたが、虚しくも弾かれた。画面には『未対応のオブジェクト、または換金価値のない概念です』と冷酷なエラーメッセージが出るだけ。 


 どうやら、並行世界から持ち込んだ既存の「紙切れや金属片」は、このトレーダーシステムにおいてはただのゴミ扱いらしい。この世界の、手付かずの「純粋な資源」でなければ、システムはエンとして認識しないのだ。


 目の前には、160エンのおにぎりや110エンの水が並んでいる。手が届くところにあるのに、手持ちの現金では1粒の米すら買えない。極限の飢えと渇きが、焦燥感となって武の胸を締め付け始める。


(落ち着け……。商社マンが手ぶらでパニックになってどうする。軍資金がないなら、現地調達するだけだ) 


 武は泥まみれのスーツの袖で額の冷汗を拭い、背中の壁に預けていた身体をゆっくりと起こした。視線は入り口に警戒を向けたまま、屈んだ姿勢で、自分の座っている周囲の地面を、文字通り血眼になって手探りで調べ始めた。 


 ここは人類誕生前の太古の地球、それも何万年も手付かずだった洞窟だ。現代の地球では枯渇してしまった超希少な鉱物や、未知のエネルギーを秘めた物質が、必ずこの足元に眠っているはずだった。


「何か……システムが『資源』と認めるような、価値のある物は……!」


 しかし、現実はそう甘くはない。暗がりを手探りで探したものの、そう都合よく価値のありそうな宝石や未知の鉱石が見つかるわけもなかった。

 焦っても仕方がない。武は小さく息を吐き出すと、少し休憩がてら、再び脳内のシステム画面に意識を戻し、販売内容を詳しく眺めてみることにした。


 ふと、画面の隅にある『年代』という項目が目に留まる。

 何気なくそこをタップしてみると、驚いたことに「2026年」を基準として、タイムラインが上にも下にもスクロールできるではないか。


(過去の時代の物も買えるのか……?)


 試しに、歴史の授業で習った「江戸時代」のページを開いてみる。すると、当時流通していた職人手作りの和傘や着物、精巧な陶磁器などが、すべて「現代日本の価格(物価)」に換算されてずらりと並んでいた。

 現代の骨董品としてのプレミア価格ではなく、当時の生産コスト基準の価格だ。そのため、現代の職人技なら何十万円もするような見事な工芸品が、驚くほど安い値段で販売されているように感じられた。


(これ、もし現代に戻れたら大儲けできるな……)


 商社マンとしての妄想を膨らませながら、武はさらに指を動かして時代を遡っていった。戦国時代、平安時代、弥生時代――そしてついに、人類の黎明期である「石器時代」までたどり着いた。


 ラインナップに並んでいたのは、磨製石器や「石斧(いしおの)」といった原始的な道具たちだ。

 値段を見て、武は思わず目を見張った。現代日本の子供の小遣いでも、おもちゃ感覚で何個もまとめ買いできるような、信じられないほどの超低価格が設定されていたのだ。


(待てよ……。これを量産してシステムに買い取らせれば、確実な種銭(たねせん)になるんじゃないか!?)


 一瞬、天才的な閃きに胸を躍らせた武だったが、すぐに現実に引き戻されて自嘲気味に首を振った。


(いや、ダメだ。石斧を買い取るってことは、俺がこの世界の材料で石斧を『作って』売らなきゃいけないんだろ? 俺はただのサラリーマンだ。石を削って木の棒に縛り付けるなんて、そんな器用な芸当ができるわけがない……) 


 やはり地道に売れそうな珍しい鉱石を探すしかないのか。諦めて画面を閉じようとしたその時、武の脳裏に、先ほど確認したスキルの詳細が鮮烈によみがえった。


(……いや、違う! このスキルには、確か便利な機能があったはずだ!)


 焦る思考を整理し、スキルの拡張便利機能のタブを猛スピードでクリックする。 

 そこに表示されたのは、まさに現代のクラフト系オープンワールドゲームそのものの画面だった。


 ――【拡張便利機能:自動作成(クラフト)システム】

 ――【インベントリ(所持資材枠)および作成キュー(生産予約ライン)を解放中】

 ――【概要:レシピを選択し、必要な『材料』がインベントリに揃っていれば、システムが自動かつ一瞬で製品を構築・作成します】


「……これだ!!」


 武は思わず暗闇の中で拳を握りしめた。

 器用さも、職人の技術も、一切関係ない。ゲームのように、その辺に落ちている「石」と「木」を拾ってシステムに放り込み、作成ボタンを押すだけで、システムが完璧なクオリティの石斧を自動で、しかも一瞬で大量生産してくれるのだ。 


 これなら、不器用な現代人の武でも、原始の生産ラインを無限に稼働させることができる。

 そして完成した石斧をそのままシステムに売却すれば、念願の「最初のエン」を手に入れられる。衣食に困らないどころか、ミリタリー兵器を配備するための巨万の富を築くための、完璧な必勝パターンが見えた瞬間だった。 


 小腹の空きなど、もう忘れていた。武は入り口への警戒を怠らないまま、まずは最初の材料となる「手頃な石や枝」を洞窟内で集めるべく、目をキラキラと輝かせた。

不定期更新です

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