↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/24

第十五話 内職ボーナス

プレハブ小屋の窓の外で、原始の太陽が分厚い地平線の彼方へと沈んでいく。未開の原生林が深い闇に包まれると同時に、ハインの指揮による鉄条網の展張や拠点の補強作業はぴたりと停止した。夜間の視界不良と、夜行性の猛獣による奇襲リスクを考慮した、極めて合理的な判断だった。


外の見張り塔には、ジル率いる軍事アンドロイドたちがM249軽機関銃を携えて完全警戒シフトで立ち尽くしている。一方、作業を終えた民間用のアンドロイドたちと、作業用の下級アンドロイドたちは、次々とプレハブ小屋の内部へと撤退し、一列に整列した。


「マスター。夜間の屋外作業はすべて中止し、兵士以外の個体をプレハブ内に待機させました」


ハインが静かに一礼する。しかし、この氷河期の長い夜の間、高性能なアンドロイドたちをただ遊ばせておくのはあまりにも勿体無い。武がそう考えていると、ハインがさらに一歩進み出た。


「待機時間を利用した内政拡充のため、マスターに共有システムの新機能をご報告します。現在、マスターと我々アンドロイド部隊との間に『共有インベントリ』が確立されています。これは最大5個のアイテムを格納でき、対象との距離や時間を一切無視して、物質を瞬時に移動・伝送できる権能の拡張領域です」


「共有インベントリ……。距離も時間も関係なく、5個までアイテムを送り込めるのか」


武はその利便性を瞬時に理解した。これを使えば、武がわざわざ動く必要すらなくなる。


今夜の作業として選んだのは、高価格帯のスナイパーライフル『CheyTac M200』の組み立てだ。M200は大型のボルトアクションライフルだが、部品単位に分解すれば場所をほとんど取らない。プレハブ小屋の限られたスペースでも、下級アンドロイド全員を動員して一斉に並行生産することが十分に可能だった。


武はパイプ椅子に深く腰掛けたまま、一歩も歩くことなく、脳内の『異世界トレーダー』のインターフェースを操作した。


CheyTac M200の完成品価格は1挺あたり約200万エン。素材パーツキットからのクラフトであれば、4分の1の材料費である50万エンで錬成できる。一度自力で組み立てを完了しているため、自動クラフトおよび自動売却の予約システムはすでに解放されている。さらに今回は、武自身の権能である「全自動連続クラフト機能(バックグラウンド予約機能)」と、下級アンドロイド全員による物理的な組み立て、「共有インベントリ」の転送能力を完全に連動させた。

武は動くことなく、全自動クラフト機能によって生成されたM200の素材パーツキットを、共有インベントリの5つのスロットへ絶え間なく流し込んでいく。


【異世界トレーダー・全自動クラフト&共有インベントリ伝送明細】


・CheyTac M200パーツキット価格(4分の1):500,000エン × 5挺分


・初期投入額:2,500,000エン


プレハブの床に座り込んだ下級アンドロイドたちの目の前で、共有インベントリから伝送されたM200のレシーバー、銃身、ボルト、ストックといった精密な金属パーツが虚空から次々と出現する。


下級アンドロイドたちは一糸乱れぬ精密さで、それらのパーツを手に取り、組み立てを開始した。構造が複雑なM200の錬成と組み立てには、システム上1挺あたり約8分の時間を要する。しかし、複数のアンドロイドによる完全な分業体制と武の全自動クラフト機能が噛み合ったことで、バックグラウンドでの並行製造ラインは完全に最適化され、無駄のないペースで生産が繰り返されていった。


時計の針が正確に1時間を刻む。その間、武はただ椅子に座り、共有インベントリの空きスロットを維持するだけで、歩くこともせず、ただひたすらに莫大な大金を稼ぎ出し続けていた。1挺あたり8分の工程を全自動連続クラフト機能で並行処理し、この1時間で合計50挺のM200が落成、即座に自動売却された。十万エンを遥かに超える大金が、完全に自動化された計算式に基づいて口座へと吸い込まれていく。


【CheyTac M200 全自動連続クラフト・売却計算明細(1時間・計50挺分)】


・M200完成品価格:2,000,000エン


・素材クラフト材料費(4分の1):500,000エン


・1挺あたりの純利益(4分の3):1,500,000エン


・1挺あたりの製造時間:約8分


・1時間での製造・売却数量:90挺


・必要材料費総額:500,000エン × 90 = 45,000,000エン


・売却総額:2,000,000エン × 90 = 180,000,000エン


・差引総純利益:1,500,000エン × 90 = 135,000,000エン


【修正前残高:148,156,000エン】


【現在残高:283,156,000エン】


カチカチ、という静かな金属の噛み合い音だけがプレハブ小屋に響く。全自動クラフト機能によって生成され、インベントリ経由で供給されたパーツは、下級アンドロイドたちの手によって瞬く間に漆黒のボルトアクションライフルへと形を成し、そして売却されて光の粒子へと消えていく。


外の氷河期の荒野は完全に闇に閉ざされ、遠くから原始の肉食獣の遠吠えが聞こえてくる。しかし、この強固に補強されたプレハブ小屋の内部は、武のチート権能とアンドロイドの労働力が融合した、莫大な富をノンストップで生み出す、極めて安全で冷徹な自動工場へと変貌していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。