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婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず……  作者: ゆずこしょう
国王主催のパーティーで。

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交換いたしましょう!

「メーティアもいいんだね?」


ウラヌス国王に声をかけられ、私は一言だけ返した。


「勿論です」


正直に言えば、アポロ様との婚約がこのまま続く方が地獄でしかなかった。


これほど嬉しい誤算はないと思っている。


「アーテリアは『交換しましょう!』と言っていたが……」


確かに、そんなことを言っていた気がする。


ヘリーオスト王太子殿下については、ヘルお兄様と仲が良いということもあり、そこまで悪い印象はない。


今もヘルお兄様と親しげに話しているし、人前であれほどどもっていた人物と同一人物とは思えないほどだ。


「そうですね。ヘリーオスト王太子殿下がよろしいのであれば、私は構いませんが……。十六の小娘ですが、本当によろしいのでしょうか?王太子殿下のご年齢を考えると、早めに結婚なさる必要があるのでは……?」


この国では結婚できるのは十八歳からだ。


成人と認められるのも同じく十八歳。


つまり、あと二年待たせることになる。


王族であればなおのこと、早めの婚姻が求められるのではないかと思うのだが——。


「私は構わないよ。二年くらい問題ない。それにヘルの妹であれば安心できる。この二年で互いを知っていけばいい。父上も、それで構いませんか?」


「はぁ……本当に我が息子ながら、何を考えているのかわからないな……。お前がそれでいいと言うなら、私は何も言うまい」


二人のやり取りを見ている限り、王宮での王太子殿下の様子は演技だったのだろう。


おそらく、髪を伸ばしているのも——ただ面倒なだけか、あるいは都合がいいからか。


そんなことを考えてしまうほど、先ほどとの印象が違っていた。


「最初はヘルお兄様のご友人と聞いて疑ってしまいましたが……少しわかった気がします」


ヘルお兄様は頭の回転も早く、言葉も巧みだ。


そんなお兄様と付き合えるのだ。


ヘリーオスト王太子殿下も、同じなのだろう。


「まぁ、俺のことはこれから知っていってくれ。——とりあえず、今は会場に戻って先ほどの続きをしよう。いいですね、父上」


そう言うと、王太子殿下はさっさと部屋を出ていった。


ウラヌス国王もガイア王妃も、その背中を見ながら大きく溜息をついている。


「ウラヌスはいつも、息子と嫁に頭が上がらないんだ」


お父様が私の耳元で、楽しそうに囁く。


——だが。


それが聞こえていたのか、お母様がぼそりと呟いた。


「あなたもじゃないですか……」


思わず、くすりと笑ってしまう。


確かに、お父様がヘルお兄様やお母様に口喧嘩で勝っているところは、一度も見たことがない。


***


国王陛下たちが会場に戻ると、それまで流れていた音楽が止まった。


ダンスを楽しんでいた人々も何事かと振り返り、国王の姿を認めると、一人また一人と膝を引き、胸元で手を交差させて頭を下げる。


——その中で、ただ二人だけが頭を下げなかった。


「楽しんでいるところ、何度も邪魔をしてすまないな。頭を上げてくれ。急だが皆に伝えておきたいことがある。聞いてほしい」


国王の声に、ゆっくりと頭が上がっていく。


全員が立ち上がったのを確認してから、国王は再び口を開いた。


「先程の騒ぎを見ていた者もいるだろう。アーテリア嬢より、婚約者を交換したいとの申し出があった。本来であれば一度婚約を解消し、その後新たに結ぶのが通例だが……今回は事情が事情だ。それに、貴族がこれだけ揃う機会も少ない。この場を借りて正式に伝える」


会場の空気が、さらに張り詰める。


「ヘリーオスト・アンベールとアーテリア・ジュアン、アポロ・ダルデンヌとメーティア・コルベールの婚約を破棄し、新たに——ヘリーオスト・アンベールとメーティア・コルベール、アポロ・ダルデンヌとアーテリア・ジュアンの婚約を認めることとする。皆には証人となってもらいたい。よろしいか?」


その宣言に、会場は一斉に拍手に包まれた。


中には悔しそうな表情を浮かべる女性たちもいたが、見ないことにした。


そして国王は最後に付け加える。


「——もう交換はできないからな」


「アポロも、これで構わないな?」


「えぇ、叔父上。構いません。それにメーティアよりアーテリアの方が私の好みですし、性格も似ていますから」


……一応、公の場なのだが。


叔父上呼びでいいのだろうか、と少し思う。


だが確かに、アーテリアとアポロ様はよく似ている。


そう言われて、むしろほっとしている自分がいた。


「そ、そうか。ではアポロよ。今日はアーテリアと共に帰りなさい。近いうちに登城するよう、家族にも伝えておいてくれ」


一言一言、子供に言い聞かせるように話す国王陛下を見て、思わず驚いてしまった。


「承知しました。父上にそのように伝えます。アーテリアの父にも。——それでは失礼いたします。行こう、アーテリア」


そう言って、二人は手を取り合いながら会場を後にした。


あれだけの騒動があったにも関わらず、両家の親が最後まで姿を見せなかったのは、ある意味予想通りとも言える。


私たちだけでなく、周囲の貴族たちもようやく嵐が去ったとばかりに安堵の表情を浮かべていた。


やがて再び音楽が流れ始める。


先ほどと同じ旋律のはずなのに——


なぜか、少しだけ明るく感じられた。

こんばんわ。

ゆずこしょうです。

明日からは、8:10、12:10、21:10更新予定です。

よろしくお願いします( .ˬ.)"

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