波乱の幕開け。
「父上!!!」
「ウラヌス!!」
「お義父様!!」
急いで皆で国王陛下に近寄り声をかけるが、反応がない。
そして国王陛下のいるところには、少しずつだが血だまりができている。
それに気づいた私は、急いで医者を呼ぶようにバネッサへ伝えた。
「バネッサ!急いで医者を呼んできて頂戴。できれば内密にお願い。皆にばれないようにね!」
「承知いたしました。メーティアお嬢様」
私の言葉である程度理解してくれたのか、バネッサは静かにその場から立ち去った。
刺されたというよりは、これは銃の跡に近い…
「オスト様…」
「あぁ…恐らくピストルに合わせて誰かが父上に発砲をしたんだ。
歓声やピストルの音に紛れ込ませれば、できないことではないはずだが…」
ただおかしい点が一つある。
建国祭の宣言の際、王宮内へ国民たちが入ることが可能だが、厳重な検査が行われる。
刃物一つ持っていれば中には入れないし、銃を持っていればなおさら入ることは不可能だ…。
寧ろ王族に反意があると取られ、その場で騎士団に捕まってしまう可能性が高い。
今は騎士団団長でもあるお父様が動いているし、絶対そんなヘマはしないだろう。
「一点だけ気になる点がございます。もし、ダルデンヌ公爵たちが絡んでいたらの話ですけど…」
私の言葉を聞いて、何かを感じ取ったのかオスト様はアルマンに指示を出した。
「アルマン。アレウスたちにこのことを伝えてほしい。
そして騎士団に巡回もかねて王宮内を探させろ。
もしかしたら他にもいたるところに銃の部品があるかもしれない。
誰にも知られないように動くんだ。わかったな?」
「承知いたしました。」
そう。ここ数ヶ月…何度言っても申請をせずにここを利用していた二人がいたはずだ。
恐らくその二人自身は何も気づいていないだろうけど…
王族でもないのに王族だと言い切り、それを盾に好き勝手してきた二人…。
知らない間に荷物運びをさせられていたとしても分からないだろう。
あの二人のことだ。
ーーー「これは花の種だから庭園に埋めておいてあげて。来年には綺麗な花が咲くはずよ。そのまま植えないといけないものだから中身は確認しなくていいわ…」
ーーー「これは私たちが王族になった時に必要になるものなの。見つからないようなところに隠しておいて…。」
なんて言われたら…
普通なら信じないけど…。
「アポロ様もアーテリアも素直さだけが取り柄だから、疑わずに信じてしまうわね…。」
あの二人が「わかったわ!」といって笑顔で頷いている姿が目に浮かぶ。
取りあえず今あの二人のことを考えてもイライラするだけだ。
ウラヌス国王陛下が撃たれたということは…ガイア王妃やヘリーオスト王太子殿下も狙われる可能性が高い。
ガイア王妃の方を見ると、ウラヌス様が撃たれたことで呆然としている。
ウラヌス様も幸い急所は外しているようなので、今すぐに何かがあるというわけではなさそうだ。
一人で色々考えていると、ガチャリと扉が開いた。
「お兄様。ごきげんよう。撃たれた気分はいかがかしら…」
「へ…シ…オネリア…か。」
先程まで意識がなかった国王の目がうっすらと開く。
「ウラヌス!!!」
ガイア王妃は国王陛下の目が開いたのを見て、ほっと息を吐いた。
そしてキッと睨んだ顔でヘシオネリアの方を見る。
「ヘシオネリア。あなた実の兄に向かってなんてことするのよ。」
「うるさいわね。お前こそ身の程を弁えなさい。私は王族なんだから!」
この下り…以前もあったような気がするけど、お母様に詰められていたと思うのだが忘れてしまったのだろうか…
「そんな死にそうな男に国王が務まるわけないでしょ!これからは私の息子が国王になるのだから!」
いやいや、国王陛下が崩御したら、その時は王太子であるヘリーオスト王太子殿下が王になるのだ。
なんでそこでアポロ様が出てくるのだろうか…
しかもガイア王妃にはいろいろ言っていたのに、オスト様には何も言わずに出て行った。
「え…まさか気づいていない…?」
高笑いをしながら扉を出ていくヘシオネリアを見ていると、どうやら本当に気づいていないようだ。
オスト様も同じように思ったのか、二人で目を合わせて今はこのままにしておこうと合図を送った。
「ロキ!あの二人を地下牢に連れて行きなさい。」
今も二人といっているし、確実に気づいていないみたいだ。
髪を伸ばしていたことで、まさかの血縁すら気づいていないとは…さすがアポロ様の親である…
「承知いたしました…奥様。」
扉の外から聞こえてくる声が、聞いたことのある声に似ている。
もう一度ガチャリと扉が開くと、そこにいたのは以前手紙をくれたヘルメントお兄様だった。
「お…お「シッ…」」
お兄様の名前を呼ぼうとすると、オスト様に手で口をふさがれる。
「恐らくヘルは今仕事中だ。邪魔してはならない。
それにヘルに任せておけば父上も母上も大丈夫だろう。」
お兄様のことをじっと見ていると、こちらに気付いたのか口パクで「お前たちはお前たちのできることをしろ」と言ってきたので、私とオスト様は力強く頷いた。




