建国祭開催。
ヘルお兄様からの手紙が届いてから、あっという間に時間が過ぎ、ついに建国祭の日が来た。
開幕は国王の開幕宣言後に、何回かピストルの音が鳴り響いてのスタートとなる。
ピストルと言っても音が大きいだけのもので、空に向かって撃つので誰かが怪我をする心配はない。
今回は私のお披露目もあり、開幕の宣言の時に一緒に顔を出すことになっている。
今回のドレスはベルラインのドレスとなっており、胸元には大きめのリボンが付いている。
そして、細かい金色の刺繍が入っており、所々散りばめられたダイヤがキラキラと光っていた。
冬が終わり春になり暖かくなってきたため、今回は袖なしだ。
胸元はハートの形になっている。
赤色のドレスということで少し派手かと思っていたけど、そんなことも無く安心した。
「バネッサ…ど、うかしら?」
「…と、とても素敵です。お嬢様!」
オスト様と婚約するまではパーティーやお茶会に参加するのも面倒で、ラフなドレスばかり着ていたのに、オスト様と出会ってから自分でも笑ってしまうくらい変わった気がする。
「バネッサが仕上げてくれたのだから当たり前よ。」
「メーティアお嬢様は変わられましたね…。バネッサは今のメーティアお嬢様の方がとてもお嬢様らしいと思いますよ。」
「私も今同じことを考えていたわ。家から出るのも面倒だと感じていたのに…家にいる方が短くなっているし、嫌いだった人付き合いも今はそこまで嫌いじゃないの。」
今までもパーティーに参加したくないというわけじゃなかったんだろう。
ただ、アポロ様と一緒というのが嫌だったんだと思う。
人間関係も…お茶会やパーティーに参加すればアーテリアが関わってくる。
あの二人が絡むと大抵の人達は遠巻きにしか見てこない。
それもそのはずだ。無駄に2人とも爵位だけは高いから…
「これもオスト様のおかげね…」
「何が俺のおかげなんだ?」
バネッサと話していたはずが、いつの間にかオスト様と入れ替わっていて吃驚した。
扉を開ける音が聞こえなかったけれど、いつ入れ替わったのだろう。
バネッサの方を見ると、顔色も変えずに扉の前にいた。
どうやら、私が話していることに夢中で気づかなかっただけのようだ。
「な、なんでもありません。そ、それよりもオスト様、とてもお似合いです。」
白のスーツに金色の刺繍が入っていて、刺繍は私と同じ柄のものになっていた。
「ありがとう。メルティもすごく似合っている。できれば他の奴には見せたくないくらいだ…」
オスト様は恥ずかしげもなく、相手が欲しい言葉をくれるから反応に困ってしまう。
オスト様の言葉に顔が熱くなってくるが、気づかれていないだろうか…。
「あ、ありがとうございます。そろそろ時間ですね…」
「あぁ、時間だから呼びに来たんだ。一緒に行こうか。」
「はい…。」
オスト様の腕に自分の腕を絡ませて部屋を出る。
今日から3日間かけて、貴族たちが国王に挨拶に来る。
その間、私もオスト様と一緒に挨拶に参加しなくてはならない。
1日目は公爵、侯爵、辺境伯家の人たちだ。
2日目は他国の貴族、3日目は伯爵、子爵、男爵家の人たちが挨拶に来る。
お父様やお母様たちも今日来ると仰っていた。
ニケお兄様はアテナお義姉様と来るようだ。
この中にヘルお兄様とオルフェウスお祖父様たちがいないのは少し寂しいけれど、こればかりは仕事だから仕方がない…
「あれからヘルお兄様たちから連絡は…」
「ないな…本当にどこにいるんだか…でも手紙を見ただろう?
あいつのことだ。大丈夫さ。まずは目の前のことを考えよう。」
私のところにも連絡は来ない。
オルフェウスお祖父様たちはお父様たちと連絡を取っていそうだが…
聞いても絵葉書が届いたとしかお父様も言わないから、私には全然わからない。
「そうですね!不安な顔は国民にも伝染してしまいます。
ここまで皆で準備を頑張ってきたのです。成功させましょうね!」
国民たちだって一年に一回行う建国祭のために色々準備してきたはずだ。
それを蔑ろにはしたくない。
たくさんの出店の準備をして、春先だから色とりどりの花を飾る。
国民たちの中で好きな相手や恋人に花を渡すというイベントもあるそうだ。
「そうだな…4日目以降は少し時間に余裕もできるし、その…一緒に城下町を回らないか?」
「いいですね!建国祭は今まで挨拶と夜会に参加するくらいでしたので…
国民たちがどのようなことをしているのか、とても興味があります。」
アポロ様とでは回る気にならなかった城下町も、オスト様と一緒だったら楽しく回れそうだ。
4日目を楽しみにしながら、私はオスト様と一緒に国王たちの横に並んだ。
「皆のお陰でこの1年も無事過ごすことが出来た。感謝する。
そしてこれからの1年が皆にとって良き1年になる事を祈っている。
そしてもう1つ、皆に伝えておきたい。
我が息子ヘリーオストに婚約者ができたので紹介しよう。メーティア・コルベールだ」
国王の言葉と共に、私はオスト様と一緒に前へ出て国民に向けて手を振った。
「未来ある若者に祝福を!」
国民たちからどっと拍手が沸き上がった。
そして再び国王が前に出たので、私たちは一歩後ろに下がる。
「これより建国祭開幕を宣言する。」
ピストルの音が鳴り響き、大歓声の中、私たちは王宮内へ戻った。
そして——
王宮内に戻ると同時に、その場で国王が倒れたのである…




