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婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず……  作者: ゆずこしょう
年の始まり

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22/41

お母様との一時。

ヘシオネリア様とアーテリアがお茶会を追い出されたあとは、特に何事もなくお茶会を終えることが出来た。


ただ一つ。


私とオスト様を見る目が、少し変わっているように見えた。


けれど、悪い感じはしなかったので、そこまで気にすることはないだろう。


秋のお茶会の際、モンブランを皆が美味しいと言ってくれたことが嬉しくて――


もっとコルベール領のものを他の人達にも知ってもらいたいと思った。


それから私は、公務の合間に料理長と色々話をして、ケーキやお菓子を作ってみたり、それに合うお茶を探したりして、充実した日々を送っていた。


「前は本を読んでいる方が好きだったのに、人って変わるものね。


そう思わない? バネッサ……」


「そうですね、アフロディーナ様。


バネッサは今のメルティ様の方がイキイキしていて、とても好きです。


アポロ様が婚約者の時は、いつも死んだような顔をしていましたから……」


「フフ。確かにそうね。私もそう思うわ」


私がお菓子やお茶の準備をしている間に、二人はそんな話をしていたみたいだ。


「お待たせいたしました。


二人で何を話していたのです?」


テーブルにお菓子を並べていくと、代わりにバネッサがカップにお茶を注いでいく。


「なんてことないわ。ただ、以前よりもメルティが楽しそうだって話をしていたのよ」


「そうですか?


でもオスト様と婚約してから毎日充実しています。


公務も嫌いじゃないですし、最近はお菓子を考案するのも楽しく感じています」


「メルティ自身も楽しいと言っているじゃない。それが答えね。


さぁ、食べましょうか」


お母様の一言で、二人のお茶会が始まる。


今日作ったのは、胡桃のケーキと、ドライフルーツを使ったミンスパイ。


ナッツやドライフルーツを使ったフラップジャック。


そして、野菜で作ったキャロットケーキにしてみた。


コルベール領は、昔から嵐や台風などが多い地域だ。


冬になれば吹雪になることもある。


そのため、ドライフルーツや魚の干物などを保存食として置いておくことが多く、栗やナッツ、胡桃なども昔からよく食べられている。


自然災害が多い地域では、自分たちが生き残るために――


どうすれば美味しく食べられるか、どうすれば長期保存できるか。


知恵を出し合う。


その分、他の地域では食べないものを食べたりするのだ。


「今回はドライフルーツ系が多いのね」


「はい。コルベール領はこの時期、吹雪が多いですからね。


ドライフルーツやクルミ、ナッツなどを保存食として用意していますし、料理長と色々考えてお菓子を作ってみたんですよ。


お味はどうですか……?」


「そうね。ドライフルーツは好き嫌いがあるかもしれないけれど、私は好きだわ。


普通にフルーツを食べるより甘みが増して、香りも楽しめるわね。


紅茶に入れても美味しそうね」


確かに、オレンジの皮やリンゴを入れて作るお茶もあるくらいだ。


ドライフルーツを紅茶に入れるのは美味しそうだし、身体も温まりそうだ。


「あと、このオレンジのケーキも美味しいわね。


なんだか食べたことあるような味なんだけれど……」


野菜をケーキにするなんて発想は、なかなか無いだろう。


それに――お母様が実はニンジンが嫌いだということも知っている。


気づかれていないと思っているようだけれど、食べる瞬間、手が一瞬止まるから分かりやすい。


「これはですね……キャロットケーキと言います。


コルベール領のニンジンを使っているんですよ」


「え……ニンジンなの……?」


「はい、ニンジンです。


すり下ろして生地に混ぜてみました」


お母様が美味しいと言ってくれた時点で、大成功だ。


コルベール領は広いけれど、なかなか商品として出せるものが少ない。


鉱山での収益はあるが、もう少し領地としての収益が欲しいところだ。


「お母様に相談があります」


「なにかしら?」


「最近、お菓子を色々作っていると思うのですが……


ドライフルーツやナッツなどを商品化できないかと、ずっと考えていました。


他の領地でも作られていますが、一番美味しいと感じるのはコルベール領のものなのです。ですから……」


「いいんじゃないかしら」


あっさりとした返答だった。


「確かに私が育ったボードリエ領でもドライフルーツはあったけれど、美味しいとは思わなかったわ。


それしかなければ仕方なく食べる、という感じだったし」


「何事も経験よ。やってみなさい。


ただし――アレウスにはメルティから話すこと。


あと、出来ればヘルに相談しなさい。あの子はそういうの得意だから」


「年末に一度帰ってこれないか、アレウスに聞いてみるわ」


忙しいことは分かっている。


反対されるかもしれないとも思っていた。


だからこそ――


素直にやらせてくれることが、ただただ嬉しかった。


「お母様、ありがとうございます」


「いいのよ。


一、二年後にはあなたも嫁いでしまうもの。


それまでは好きなことをしなさい」


「でも――これだけは約束して。


アーテリアやヘシオネリアのように、道を踏み外すことはしないようにして頂戴ね……」


お母様。


それは約束せずとも、絶対にあり得ません……。


私はお母様を見つめて、静かに頷いた。


「約束いたします。決してあの二人のようにはならないと……」


そのあとは二人で他愛のない話をしながら、


お茶会は陽が落ちるまで続いた。

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