王都に戻る。
お父様たちとダルデンヌ公爵について話して数日後、私とオスト様は一足先に王都に戻った。
ニケお兄様はこのまま領地に残って領地の経営をするらしい。
お父様とお母様はもう少しのんびりしてから王都に戻ると言っていた。
いつもあまり領地から出ない二人が王都に来るのは珍しいが、ウラヌス国王と話があるとのことで一旦王都に来るということだ。
「やはり、王都はにぎやかですね。」
「そうだな。メルティとはまだ王都の町を一緒に歩いていないし、公務が落ち着いたら城下町を一緒に歩かないか?」
王都には何回か来ることがあったけれど、お茶会など以外で外に出ることはなく、城下町を歩いたことはない気がする。
これから王太子妃になるわけだし、少しでも町の雰囲気や国民のことを知っておくに越したことはないだろう。
それに王太子妃になれば流行を発信する側にもなってくるのだ。周りより遅れてしまえばオスト様にも迷惑がかかる。
「そうですね。実は王都の町は出歩いたことがないのです。オスト様と一緒でしたらとても楽しそうです。公務が落ち着いてから一緒に歩きましょう。」
オスト様のほうを向きながら話しかけると、少し無言の時間が続く。
今までも一緒にいたのに、少し恥ずかしく感じるのは馬車の中で距離が近いからなのかもしれない。
外を眺めていると、ゆっくりと馬車が止まった。
「メーティアお嬢様。お屋敷に着きましたので扉を開けますね。」
外からバネッサの声が聞こえて、ゆっくりと扉が開く。
先にオスト様が馬車から降りて、私の手を引いてくれた。
アポロ様と比べる気はないが、さりげなくこういったことができるのはかっこいいと思う。
屋敷に戻ると、侍女や従者たちが門の前で出迎えてくれた。
「メルティ。今日は長い時間馬車に乗っていて疲れただろうからゆっくり休んでくれ。あまり休ませてやれなくて申し訳ないが……明日登城してもらってもいいだろうか。」
「とんでもないことでございます。オスト様もゆっくりお休みになってくださいね。明日、王城に伺います。オスト様がいらっしゃったので馬車の中も退屈いたしませんでした。本当にありがとうございます。」
オスト様にカーテシーをすると、私は屋敷の中に入った。
***
もう少し長くコルベール領地にいるつもりが、ダルデンヌ公爵のこともあり急いで帰ってくることになった。
「できればメルティが過ごした領地を見たかったのだがな……」
「仕方がありません。まさか私もあのタイミングでダルデンヌ公爵が訪ねてくるとは思っておりませんでしたよ。」
アルマンが俺の隣を歩きながら話しかけてくるのは珍しい。
大体、人がいるようなところでは一歩後ろに下がって静かについてくるようなタイプだ。
相当ダルデンヌ公爵のことは頭に来ているのかもしれない……。
「誰も想定していなかったさ……まさか領地にまで行くなんてな……しかもあの件から三か月は経っているんだ。何をするにしても動きが遅すぎる。急ぎ父上と話がしたい。アルマンは父上に空いている時間を聞いてきてくれないか?それまで少し部屋で休んでいる。」
アルマンは一言、「承知いたしました」と言って父上がいるであろう執務室へ足を向けた。
「とりあえず今回の件で、ダルデンヌ公爵家は失墜する可能性が高いだろうな……父上が今後どう動くのか。そのあたりも話をすり合わせておかなくてはいけないな……」
部屋に戻ると、俺はシャツの一番上のボタンとタイを少し緩めて椅子に腰を掛けた。
しばらく一人でゆっくりしていると、扉をたたく音が聞こえる。
「ヘリーオスト王太子殿下。アルマンです。」
外にいるアルマンに向かって「入れ。」と一言伝えると、ゆっくりと扉を開けて入ってくる。
「遅くなってしまい申し訳ございません。ウラヌス国王陛下ですが一時間後でしたら時間が取れるとのことです。その時間に執務室へ来るようにとの事ですが、ヘリーオスト王太子殿下はご都合いかがでしょうか?」
一時間後か……帰ってきてからすぐよりは少しゆとりがあった方がこちらとしてもありがたい。
「父上に一時間後執務室へ伺いますと伝えてくれ。アルマンも少し休息をとってくれ。」
アルマンは俺の声をきいて、そそくさと部屋を出て行く。
そして一時間後、俺は父上の元へ向かった。
執務室へ向かうまでの道中、侍女や従者くらいしかおらず、誰かに声をかけられることもなかったのでスムーズに向かうことができた。
「父上。ヘリーオストです。入ります。」
執務室に入る前に声をかけると、中から「入りなさい。」と声が聞こえてくる。
「オストよ。コルベール領での話は少しアルマンから聞いている。少しはゆっくり休めたか?」
「はい、とても自然が豊かで、国民一人一人も明るくいい領地でした。時期的に見ごろの花がなかったのは残念ですが……それでも楽しかったです。それで……早速本題なのですが……」
ダルデンヌ公爵とアポロがコルベール家を訪れたこと。
俺のことを侮辱していたことだけならず、アポロにこの国を継がせようとしていたこと、メルティに向かって阿婆擦れと罵っていたことや慰謝料を払うように言っていたことを伝える。
「はぁ……昔から、乗っ取りを画策しているのだろうとは思っていたが……まさかここで動いてくるとはな……ヘシオネリアが嫁に行ったからと様子を見ていたが……そろそろ潮時だな……」
確かに王家から降嫁していると考えると、簡単に動くのはなかなか難しいのも事実。
しかし、父上もそろそろ限界なのは分かっているのだろう。
窓から外を眺めながら長い溜息を吐き出して、色々考えているようだった。




