シオリは変わっていないらしい
今回少し短めです
やってきたシオリだが、やけに表情が暗い。
どうしたのだろうか?
手に持っている白い紙は、おそらく今回の検査結果だろう。
それから私は時計を見て意外に早いと気付く。
今日は空いていたのかなと思っていると、シオリが虚ろな目で私を見て、
「フィーネの言うとおり、検査を受けてきたよぅ~……」
「シ、シオリ、お化けみたいな声を出さないで。どうしたの?」
「これが検査結果ですぅ~……ですぅ……」
明らかにおかしくなっているシオリによっぽどの結果が出たのかと思って、シオリの検査結果の紙を見る。
それらに並んでいる数値を見て、
「わ~、シオリ、魔力が測定不能なんだ。すごいんじゃん」
「そうですかぁ~……そうです、ね、えぇ……ふふっ」
「え、えっと、他には……常時身体強化防御の魔法が展開されており、消す事が出来ず、へぇ、それで大丈夫だったんだ。良かったじゃない。シオリ」
「……」
「シオリ?」
無言になったシオリに私が聞くと、シオリはその顔をこてんと横に傾けて、クケケケケと変な笑い声を上げた。
呪詛のこもっていそうな暗い声でそれを行うシオリを見ながら私は傍にあった、開けていない紙パック式のオレンジジュースを取って、
「と、とりあえずシオリ。これを飲んで落ち着いて」
「ジュース、ですか?」
「そう、ジュース」
「この世界の品物ですか?」
突然訳のわからないことを言い出したシオリに私はどう答えようか迷ったけれど、
「そうよ。何か問題が有るの?」
「……意味が無いそうです」
「え?」
「私には食事の意味が無いそうです。体内の魔力で体を維持できてしまうので」
「そ、そうなんだ。でも食べていたよね?」
「はい、ただ私の場合食べていたとしても、触れた瞬間に魔力に変換して吸収されてしまうそうです。なので普通に土なんかを食べても同様だそうです」
「そうなの?」
「はい」
ぼんやりとした瞳で答えるシオリに私はどうしようかと考える。
どうやらシオリには莫大な魔力があり、それの影響で特に身体的な変化は……。
「でも味は感じるんだよね」
「はい」
「眠くもなるんだよね」
「はい」
「それってさ、シオリがずっと、それこそ元の世界からこちらの世界に来ても変わっていないってことなんじゃないかしら」
「……え?」
シオリがそこで不思議そうに声を上げた。
眠ったりする必要が無いのに眠ったり味覚があったり、言葉が聞こえたり。
シオリはきっと、こちらの世界に来ても何も変わっていない。そうなってくると、
「“魔法”になったり“変質”していないってことなんじゃない?」
「私、変わっていない?」
「うん、後は帰り方を見つければ……なんとかなるんじゃない?」
シオリがようやく生気を取り戻した瞳で私を見た。
でも土まで分解して魔力に……それって凄く便利な気がする。
後でその魔法システムを解析させてもらおうと私は新たな楽しみが増えたのだった。
そこでシオリが、
「でもこの世界で魔力を使っちゃうと、私は元の世界で魔力はどうなるんでしょう」
「さあ、でもシオリがいたのは“魔法のない世界”なのでしょう? だったら魔法を使ってもあまり関係ないんじゃないかな」
「そうなんですか?」
「たぶん。それに魔力が減っても食べ物で補給したりしているわけだし。そこまで深刻に考えることはないんじゃない?」
「そう、ですか? ……とりあえずそう考えておきます。ありがとう、フィーネ」
そこでようやくシオリは落ち着きを取り戻したらしい。
良かった良かった、そう私が思っているとそこでシオリは驚いた顔を擦る。
「フィーネ、そこにある本は?」
シオリの視線の先には、先ほど私が見つけた料理の本らしきものがあったのだった。




