“魔法”になっていないような?
シオリがその水色の本の題名を読みあげた。
私もこの文字を読めるので間違いない。
そして、リドルが驚いたようにシオリを見て、
「この本が読めると? ……学んだわけではなく?」
「あ、はい。私達の言語、“日本語”で読めます」
「……やはり貴方は、異世界人ではないのではないでしょうか」
「ええ!」
シオリが驚いた声を上げる。
だがりドルの反応はもっともだと思う。
だって私だって初めは信じていなかったから。
ほら、たまにこう、自分の存在に対して“設定”を付けたりする子がいたりする。
このくらいの年齢になっても……いや、うん、そういう子ってたまにいたりするし?
田舎から出てきて、都会の空気に馴染めずそうなっているのかもという可能性も無きにしも非ずと思っていたのも事実だ。
けれど、シオリの“異常”はこれだけではないのだ。
だってどんな言語でも読めるのだから。
そうなってくると先ほどこのリドルが言っていたように、
「本当にシオリは“魔法”になっているのかもね。言語だって読めちゃうし、異世界人なのにこの世界の物を食べても平気だし。……もしかしてこの世界で飲まず食わずでも、sぽの姿のまま永遠に歳を取らなかったりするのかな?」
「……はう」
私の口に出した推測に、再びシオリが真っ青な顔で倒れそうになって、ミトに支えられていた。
どうやら役得であったらしくミトは笑顔であったけれど私に、
「フィーネ、あまりシオリを苛めないでくれるかな」
「うーん、ちょっとした推測でね。このまま元の世界に戻ろうとして“魔法”になっているとしたならどうかなって」
「……フィーネ、さらにシオリが青を通り越して白くなっているから、これ以上は止めてくれないかな」
「そうね……とりあえずシオリ自身の体がどうなっているか軽く検査した方が良いかもね」
でないと、本当に“魔法”になっているのだとしたら、以前戯言として聞いていたあれが問題になってくるのではと思うのだ。
つまり、シオリの世界には“魔法”がない。
となると“魔法”になってしまった、否、“変質”してしまったシオリは元の世界に戻ると消滅……という可能性もある。
そこまで考えて私は、じーっとシオリを見た。
上から下まで見て、魔力の感じを感じとってから近づき、
「ちょっといい、シオリ」
「な、何でしょう」
びくびくするシオリの手を握る。
それからちょっとした“探査”の魔法を使って様子見をして、それからほんの少し私は“刺激”を与えてみる。
“魔法的”なもので、多分これで反応があると、“魔法”となっているのではなく……と思っていると、パチッと、冬場の静電気の様な刺激が私に起こる。
シオリにもそれが起こったらしく、
「い、痛い」
「ごめんごめん。気になったらすぐに確かめずにはいられない性質で。詳しくは調べないといけないけれど、多分、シオリは“魔法”になっていない」
「ほ、本当ですか?」
「ええ。ちょっと見た感じ、シオリの周りには魔法が常に展開されているみたい。もしかしたらシオリの魔力はとても大きくて、それが常時展開されている状態なのかも。それでこの世界の物を食べても何の影響も受けずというか、“抵抗”が出来るのかも」
「でも私の世界では“魔法”はありませんよ?」
シオリは首をかしげてすぐに黙る。
そうなると“魔法”に自分がなっているのか、といった話になる。
それとも私が元気づけようとそういっているように聞こえるのだろうか?
そう考えながら私は一つの推論を告げる。
「シオリは無意識のうちに魔法を使っているのでは? だからここに飛ばされても大丈夫だったとか?」
「あり得ない、そんな無意識に魔法なんて……」
そこでりドルが反論して来た。
しかも“あり得ない”だそうだ。
そうやって全ての可能性を切り捨てるのもどうかと思うが、例外については常に存在しているのだと私は思うのだ。
そもそもどうしてそれを私は素直に受け入れたかというと、
「無意識に魔法を使ったりはしていたわよ? 私やカイも」
「……どんなものでしょう」
「目の前に突然魔物が現れて、炎の魔法で倒しちゃった」
「……」
「とても珍しい才能らしいんだよね。特に魔力が大きい私達だから出来るんだって結論になったわ~」
リドルは何処か遠い目をしてから息を吐き、
「どうやらこの世界で私の常識は通用しない様ですね。ふむ、その話は置いておきましょう。今はそう、こちらの方が重要ですから」
リドルは考えるのを止めたようだ。
失礼なと思いながら、そういえば話が中断したままだったなと私はぽ持いながら、
「それでその本が起因して、“異界の門”が生じるのですね」
「ええ。そしてこの本は、我々の遺跡に、一冊づつ置かれているのです。それこそ、そのミルの剣の遺跡にも」
「そうなのですか? うーん。私は見覚えがないかも。カイはこの本は見た事がある?」
見落としがあったかなと思いつつ、私はカイに聞くとカイは首を振り、
「いや、見た記憶がない」
「それじゃあ、シオリは?」
「私も記憶がありません」
「ミトは?」
「記憶にないね」
一応は、あそこに入ったのは私達が初めてだと思う。
そして全部あそこにある本は見たはずだからそこに無いとすると、
「そういえば壁が少し動く所があったわね。そこを見てみましょうか。そうそう、その本は回収はした後どうすればいい?」
「出来れば遺跡名と共に、集めて頂ければと思いますが……」
リドルのその言葉にミトが自分の所に集める様にするといった話になる。
そして、私は、
「となると一度、剣を引き抜いた遺跡に行く必要があるわね。所で報奨金は?」
ミトに聞くとこれから相談だそうだ。
よし、期待できそうと私は思ってから、ミトはもう少しリドルと話を詰める事になり、その場で解散となったのだった。
まだ夕方よりも早い時間だったので、シオリにちょっとした魔法の検査を受けてもらう事になった。
丁度うちの図書館のすぐそばに病院があるので、そこに連れていく。
シオリは不安そうだったが、
「終わったら図書館に来てね。大丈夫大丈夫~」
「うう、全く私の事は気にしていないよ、フィーネ」
不安そうなシオリがそうぼやきながら検査の部屋に向かっていった。
そして私達は図書館に戻り、館長に事情を話す。
「大変な事になったね。今すぐ内の蔵書を調べた方が良いかもしれないね」
「はい」
といった風になり、手分けして探す事になった。
どんな本なのかを大まかに説明して探し回る事になったのだけれど、
「うう、それよりも体がなまりますぅ」
剣の妖精のミルがぼやく。
それに私が、
「ミルにはあとで閉めるために頑張ってもらわないと」
「ストレス解消させて下さい。少しでいいですからぁあああ」
といって泣くので、カイにはあの謎の吸収する石に向かって魔法を打ち込む事に。
地下深くで魔法の練習も出来る一角があるのだ。
そこで頑張ってきてねという事で、カイは渋々といったように嬉しそうなミルを連れていった。
やはり剣としてのさがで戦いたくなるのだろうかと私は思いつつ本を探しに蔵書が沢山置いてある場所へ。
他の司書のいない場所に向かい、その場所で探していく。
水色の本、水色の本……。
水色の本を探していくが、幾つか見つけたが全て違う。
無いならないに越した事は無いなと思いつつ更に本を分けていく。
危険な物が見落としされているのもそれはそれで問題なので、慎重に調べていく。
中には綺麗に描かれた料理のレシピ本もあって……そこで私は首をかしげる。
「これ、シオリの作ってくれた料理に似た物が映っているわね。おにぎり、だっけ? 後おすいもの?」
そう思ってつい表紙をじっと見てしまう私。
そこで、シオリが検査票を持って、帰ってきたのだった。




