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魔導図書館の司書は、伝説の本を求めて、本日も迷宮を散策中です。  作者: ラズベリーパイ@天安門事件


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12/30

剣と持ち主が離れると爆発します

 青空はとても綺麗だ。

 やはりこういった迷宮は地上と隔絶した空間なので、息苦しかった。

 だからこそ吹き抜ける風が心地よい。


 その風に私は身を任せたい衝動にかられつつ、そろそろ周りの様子でも見るかと思う。

 ことことと周辺に小さい瓦礫が落ちてきておろを立てている。

 もしくは周りの瓦礫自体が山積みになったあと崩れ落ちようとしている音なのかも知れない。


 先ほどの剣の威力は凄まじいものだった。

 そこそこ深い場所にあるこの場所から一気に地上まで繋げてしまったのである。

 魔法でやろうと思えばできるが、魔力を込めた剣、それも明らかにカイの本気じゃない力の込め方でここまでいってしまっているのだ。


 旧式中の旧式(妖精の言葉を借りれば)の剣だがそれでもこれだけの威力がある。

 これならば、さらに強力だと思われる“みさいる”もそのうち挑戦しようと私は心に決めた。

 そして、この惨状を引き起こした剣についてだが、


「よーし、カイの近くに集まって。ちょっと話があるから」


 私がそう呼ぶと皆が集まる。

 カイは先ほどの衝撃で動けないようだ。

 仕方がないので私は、ミトとシオリに、


「それで今回の件についてなんだけれど……カイが剣であの大穴を開けたことは伏せてほしいの」

「分かりました」

「分かった」


 珍しくミトが素直だ。

 なにか考えというか気づいたことがあるんだろうかと思って、胡乱げな瞳で私は見てしまう。

 それに気づいたミトが苦笑して、


「フィーネ、どうしてそんな目で見るのかな?」

「いえ、ミトが随分と物分りが良いなと」

「ん? ありのままに事実を書いたほうが良いかな?」

「それは困ります。わかりました、これ以上は追求しません」

「そうそう、人の好意は素直に受け取っておくべきだよ。でもせっかくだからデートをもう一回かな?」


 実はミトはちゃっかりしていた。

 仕方がないので、言うんじゃなかったと思いながらふたつ目のデートというか一緒に遊びに行く約束を取り付ける。

 これくらいでどうにかなるなら安いものだと私が思っているとそこでミトが、


「それでどういった話にしておこうか。理由があったほうが良いだろうし」

「んー、実はこの場所には“罠”が仕掛けられていて~、私達は偶然助かりました、とか、魔法の防御でなんとかなりましたって所で良いのでは?」

「そうしようか」


 ミトが頷く。

 とりあえずこれで、カイが開けてしまったこの大穴は、遺跡の中にある罠が発動して、爆発が起きたために天上が崩れたが、奇跡的にも傍にいた私達は無事だった……という話になった。

 さて、口裏合わせは終了したので、そこで先程からずっと黙っているカイに目を向ける。


「ふう、でもびっくりしたわね。……カイ、いつまで固まっているの?」


 私がそう言って揺さぶるが、カイは相変わらず固まったままである。

 困ったので、もう少し揺らしてみるもまったく反応がない。

 先ほどの剣の威力がよほど答えたのだろうか?


 カイの持っている力で十分できる範囲のことだろうに、と私は思いながら深々と嘆息して、


「所で今度私、図書館のイベントで仮装しようと思うのだけれど、カイはどんなのが良い? バニーガールとかあるけれど」

「バニーガール!」


 五本のミミと角の生えた、人気の可愛らしい草食動物バニーを思い出して、そしてバニーガールの衣装、あの水着のような衣装に網タイツな様相を私は頭の中で描く。

 ふむ、今年はシオリにも手伝ってもらおうかと決める。

 ちらりとシオリを見ると、不安そうに私を見ている。


 それは良いとして、そこでカイは……我に返った。

 またかと思い、半眼で私がカイを見る。

 昔からどういうわけかそういった仮装の話をすると、カイの反応が良い事を私が知っていて言ったのだが、ここまでとなると、


「カイって、衣装フェチなの?」

「! ち、違う、俺は違う。ただフィーネだから……」

「ただ?」


 カイがそれ以上何も言えなくなったように黙る。

 つまり衣装フェチなのを言い訳したいのだろうけれど、良い言い訳が思いつかないのだろう。

 と、そこでミトが、


「うーん、これ以上はカイが気の毒だからフィーネ早めたほうが良いかな」

「なんで?」

「男には色々あるのさ。君だって隠しておきたいものがあるだろう?」

「んー、男性アイドルのプロマイドとか?」

「そんなような物だね。というわけで、あまり根掘り葉掘り効くものではないと思うよ?」

「分かりました」


 どうやら男が隠しておきたい何かがあるらしい。

 その程度大したことはない気がしたがそんな助け舟を出したミトにカイは、


「助かりました」

「いえいえ、あまりにも哀れでついてを出してしまったな」

「……」

「まあ、頑張り給え」


 ニヤニヤ笑うミトに少しだけカイは恨めしそうだった。

 だからだろうか、カイが私に、


「そもそも女の子に、そんな格好が見たいんだ! なんて言おうものなら、彼女でない限り白い目で見られるならまだしも、通報されるだろうが」

「あー、確かに変質者だものね。分かった、誤解を受けないために、カイにはこれからは聞かないようにするね」


 そんな私の言葉にカイは、さらに肩を落とし……そこでカイの目の前にいる妖精のミルがわくわくとしたように目を輝かせているのに気づいたらしい。

 ふうと大きく息を吐いてからカイは、


「そこ、楽しそうに様子を見ていないで状況を説明しろ」

「えー、せっかく面白い所なのに」


 以外に俗物的な腹黒妖精のミルにカイが、


「フィーネがミトと、裏で取引して――デートが二回に増えたからそれで良いんだが――それで話しはうやむやになりかけたが、この剣は何だ?」


 カイが問い詰めると、妖精のミルはちょっとだけ考えるように沈黙してから、


「だから、遥か異世界の旧式中の旧式である兵器です。とっても恐ろしい存在を倒すための」


 先ほど説明された事を反芻する妖精のミル。

 カイはどう聞けばいいだろうと悩んでいるようだったので私が近づき、


「とっても恐ろしい存在って、どんなもの?」

「意志もなく、無尽蔵に何かを作り上げてしまうと同時に、意志もなく無尽蔵に吸い込んでしまう存在です」

「? 吸い込んでしまうなら、作れないんじゃないかしら」

「それは筒状のような存在で、片方で何かを吸い込んで、別の何かへと変えてしまう化け物です。それを倒さなければいずれ、私達の世界も取り込まれて変質させられてしまうだろう、という事でその化け物に最も近いこの世界に私は送り込まれたのです。剣と一緒に」


 にこにこ笑いながら剣の妖精のミルが話しているが、それはそれでとんでもない話になる。

 そしてその話を総合すると、


「でもそうなると、これからその化け物に遭遇しちゃう、という事? あ、でもなくなったんだっけ?」

「それがですね、ある日この世界に近づいたと思ったら消えちゃったんですよね」

「でも……消えた?」

「ええ、忽然と。なのでこの剣は必要なくなってしまったのでお好きなように」

「お好きなようにって言ったって……カイ、この物凄く強い剣どうする?」


 その私問いかけは、要はその剣はカイの手に余るものかどうか、という事。

 あの程度の攻撃は私にも出来るが、それがどの程度のカイの力によって引き起こされたかによる。

 するとカイは、少し考えてからその剣に目を落とし、


「俺がこの剣にこめた魔力、氷を一つ、その大きさはグラスに入っている四角い氷1つ程度を呼び出す魔力だったんだ」


 その氷一つの結果が、この天井の大穴であるらしい。

 込めた魔力の変換効率が凄く良い、もしくは増幅効果がすごいのかもしれない。

 いずれにせよ、強力な道具には代わりはなさそうなので私は、


「……これは、どこかで大事にしまっておくべき剣なのかもしれないわね」


 カイの実力を知っている私はそう答え、頷く。

 もしもカイがそこそこ本気を出したら……もしかしたらこの剣のほうが壊れてしまうが、危険には変わりない。

 けれどそこで剣の妖精のミルが私に、


「え? ご主人様と離れ離れになると、この剣が爆発して半径百メートルの穴が出来るのですが」

「……何故」

「いえ、主と決めた別の人に以外に渡るのは危険なので、そういう事に。というわけでよろしくおねがいします!」


 カイを見ると顔が青い。

 ミトは苦笑しシオリは、うわー、といった顔をしている。

 私も苦笑いしか浮かべられない。

 剣の妖精さんのミルだけが楽しそうだったのだった。







 


 とりあえずは本棚に近づき、使えそうなものを私達は多数回収した。

 本日の収穫は異世界の本二十冊ほど。

 そして、ミトが図書館までついてきた。


 珍しいなと思いつつ図書館の中までやってきてからミトが、


「とりあえず久しぶりにお茶でも出してもらおうかな」


 その一言で、女性職員の瞳がギラリと輝いた。

 はっきり言って、ミトは見ている分には美青年である。

 そして図書館にシオリがいるのでそれ目当てでミトが出没する。


 シオリが好きなのは目に見えて分かっているのでそれ以上手出しをしてこないのだが、それでも彼女たちにとってイケメンは目の保養であるらしい。

 なので彼目当ての女性客もこの図書館に来るので、図書館的には来てもらえるのはとてもお得なのだが……。


「フィーネちゃん、ミトさんを連れてこないでください、って言っておいたでしょう!」


 そこに現れたのは気の良さそうな中年のおじさんだった。

 灰色のスーツをきた穏やかそうな彼。

 実際に少しのほほんとしすぎているような気もするが、悪い人ではない。

 そんな彼を見て私が、


「あ、館長。どうしたのですか?」


 その問いかけに彼は困ったように、


「どうしたのじゃなくて、偉い人が来ると接待やらなにやら色々面倒くさいから、あまりこういうのは……」

「女性司書の先輩方が、嬉しそうにお手伝いをしておりますが」

「うん、ファンが多いからね……でもこう、立場的なものとして心労が……」

「一番取るためなんです」

「そうだね……フィーネちゃん達が来るまでここ、潰れそうだったしね」

「その時よりはましなので現状に我慢していただければ」 

「人間贅沢になりがちでね……では、ご挨拶に行って来るので、本日の戦利品は後で見せてもらうよ」


 そう言って、館長は私の傍から歩いて離れていったのだった。


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