第34話 もう一度居酒屋で
息子と借りたアパートからは大きな畑が見える。やっぱりこっちは落ち着く。わたしはfacebookをチェックする。F県に戻ったことを祝福してくれるひとが多かった。
「あそぼー!」「同窓会するから来て!」
なんて声も多かった。その中には、恵吾もいた。いいねを見て驚く。恵吾はどうしているのだろうか。わたしは気づくといつの間にか、恵吾にメッセージを送っていた。ヤリちん恵吾。
《戻ってきてもうた。飲みに行こう(笑》
しばらくすると返事がきた。
《ええよ。いつでも》
《じゃあ今日の夜》
《おお、急やな。ええけど》
目の前にいる息子は、段ボールを楽しそに踏みつけたり中身を出して楽しんでいた。あなたの子供やよって言ったらええんかな? だってそっくりやし。笑ける。DNA鑑定やっけ? わたしは報告書を思い出す。ドラマだけの話やと思ってた。実在するんや。調べるって、疑ってたってことなんや。もはた夫婦は最初っから破綻してた。
わたしは「ごはん行くでー」と息子に声かけて、家の近所の居酒屋に向かう。
「いらっしゃーませー何名さまですか」
「3人です」
背後から声がする。恵吾が立っていた。
「おお久しぶり。あの腹の中の子?」
「うん」
「すげーおっきいな! 小学生?」
「4月から」
「まじかよ、すげえな」
わたしたちは案内された席に着く。息子は知らないひとに驚いたようで無言でわたしの隣に座った。
「どうした、急に」
「今日実はこっちに戻ってきて」
「ほんま、お疲れ」
恵吾は、焼き鳥を頬張る息子を愛おしそうに見ていた。
「シングルでやってこうと思ってて」
「そうなんや。てか可愛いな、子供って」
わたしたちは、サークル仲間の現在について話をしてしばらくしてから息子も退屈しだしたので外に出た。真っ暗な中を歩く。
「あの子は? 元気してんの?」
「あの子?」
「恵吾が付き合ってた、可愛らしい1個下の子」
「ああ、彩芽?」
「やったけ……」
「自然消滅かな。俺が社会人なってから1年は付き合ってたけど、まあ向こうが違う県に就職決まったしな」
「そうなんや」
「俺の子なんやろ?」
恵吾が息子を見る。
「そっくりやから、自分でもわかるわ」
「……」
「まあ色々あるよな。俺もなんとなくはわかってたけど、まあ学生やったし。なんていうか、逃げたわ」
「いいねん……そんなん……」
「気持ちの整理とか色々あるやろうからさ、落ち着いてからでええんやけど、よかったらさ、俺と付き合ってくれへん?」
「え」
息子は畑しかない道を走る。
「おいおい、暗いから危ないで!」
恵吾が追いかけてくれる。予想していなかったことだったので、頭が追いつかない。
「ええよー!!」
わたしは大きな声で叫ぶ。




