第28話 壮大な計画
壮大な計画であり、巻き込まれるだけの脇役なわたし。幼馴染なのに、お似合いすぎてて笑える。気づくのが遅かった。最初っから仕組まれていたんだ。
仲良く微笑み合う、ふたり。いちばん下の男の子の顔が、どことなく夫に似ている気がして手が震える。
もしかして……。
夫がその男の子「莉玖」と呼びながら抱き上げる。微笑む女。周りでボールを蹴る息子たち。ただの幸せそうな家族やん。ここでわたしが身を引いたら、夫は自由になれるのだろうか。そうしたら、再びわたしを愛してくれるだろうか。
手の届かない場所にいった女、それに気づいた事故で怪我をした夫はわたしを選んだ。人生を諦めて。だけど、運良くA市に戻ってきて再会。離れていたなずの心が、結びつく。ただ離れていただけの想いたち。
だけど、最高の形で引き裂きたい。だってこの物語の主人公は間違いなくわたしなんやから。邪魔すんなよ、だれも。
体をくっつけるふたり。わたしは走る。ふたりの間目がけて。
まっぷたつに分かれるふたり。驚く女。わたしは夫の腕を掴む。
「ゆりさん、おはようございます」
「あ、おはようございます」
美しい、同じ人間じゃないみたいに。夫は莉玖を抱きかかえたまま走り回る。「きゃっきゃ!」と最上級に嬉しそうな声が、うざいぐらい響く。
ていうか、怖い。なんか他の子供も全部類斗に似ている気がする。めまいがする。ありえない世界を見せられて、どうにもできない自分がいる。
「戻ってきてたんですね」
「夫の仕事の都合で」
ワールドツアーは無事に成功。いまや世界の「Lā」ラーになっている。チケットなんて取れない。遠い世界のバンドだった。
「来月に地元でじつはライブするんです。まだ公開になってないんですけど。もしよかったら来ませんか? 奏也や文香も来てくれます」
「まじかよ、はよう言ってえや。いつ?」
「わたしも行きたい、なあ、明斗預けて行こうや」
「やったあ、また夫に言っときますね」
ラーのライブか。いつか行きたいって思ってたけど。
「よっしゃーじゃあ、ボール蹴るで。ほい」
「やっボール蹴るん久しぶりやわ」
みんなでボールを蹴り合う。少し離れたベンチに座り、わたしは見守る。こんなに美しい女、楽しそうな夫を見てたらなんも言えなくなる。だけど、あかんねん、この物語の主人公はわたしで、わたしが幸せになる物語じゃないと。
それから昼過ぎに別れる。名残惜しそうに見つめ合うふたり。
「じゃまた」
「うん、ありがとうー」
「バイバイ」
「類斗くんありがとうー」
家に入って行く女。可愛いくて礼儀正しい子供たち。なにもかも違う。わたしがないもの全部持ってる。わたしが欲しいもの全部持ってる。
「焼きそばでいい? 俺スーパーで買ってから帰るわ」
「え、わたしも行く」
「いいよ、疲れたやろ? 明と戻っといて」
走ってスーパーに向かう。女の家とは真逆なのに、会う約束でもしてるんじゃないかっていちいち不安になる。




