第27話 公園
次の日は、家族3人で有名どころを観光した。テレビ局を見に行ったり、息子が遊べそうな場所だったり。そして、昼ごはんを食べ、まもなく新幹線の発車時刻だ。息子はさっき駅で買った新幹線のおもちゃを使って機嫌よく遊んでいる。よかった。これで車内はしばらくもつだろう。
夫が荷物を持ち、そして新幹線に乗り込む。荷物を、棚に載せる。息子は変わらず、座席でも機嫌よく遊んでくれている。
まもなく発車だ。座席に着く。
「あ、ベビーカー」
夫はホームを見る。
「取って来るわ」
「ありがとう、でも大丈夫? 発車するんちゃう?」
「大丈夫大丈夫」
笑って外に出る。だけど、ベビーカーを手にした時にドアが閉まる。夫も一瞬驚いた顔をして、それから「すぐ後の乗るわ!」と大声で言う。
いや、待ってよ。わたしも降りたい。絶対に、わざとでしょ? 女と約束したんじゃない?
大きく手を振る夫が遠くなる。息子は嬉しそうに手を振り返している。ありえないじゃん。
どうしよう……。1時間過ぎた辺りでわたしはAOIからもらった豆大福に手を伸ばす。真っ黒な袋の中には綺麗に包装された箱が入っていた。3人じゃ食べきれないぐらいの豆大福が包まれていた。
わたしは1つを口に入れる。おいしい。ありえないだろ、でも。女休みって言ってたもんな。駅すぐで待ち合わせて、いちゃいちゃすんのかよ。昨日のことも全部ふたりのお膳立てみたいやん。
東京旅行から帰ってしばらくして、ラーのギターAOIの熱愛及び結婚報道がテレビを騒がせた。ネットでは残念がる声。だけどその後のワールドツアーの発表で、世間からはすぐにかき消された。
それからまもなくして、AOIが父親になったというニュース。夫は知っていたのか。ニュースを見ても驚いている様子もなかった。
1年経たずに2人目の妊娠を報じるニュース。そして翌年3人目。何人産むねん。やりすぎやろ、あいつら。それを知るたびに、わたしは自分を否定されている気になった。
たまにこっちに帰って来ているようだが、夫と会っているかは定かではない。公園にいるのを見たが声をかけられなかった。女にそっくりな男がふたりと、AOIに似た綺麗な女の子。なんよ不公平すぎ。
奪いたくなる全てを。奪い去って取り替えたい、全部。全部。今までの人生も。なにもかも。
わたしたち家族は休日に近所の大きめの公園に行った。公園に入るなり息子が走って行ったので追いかけると、女がいた。私の足がぴたりと止まる。
だけど、夫は構わずにそのまま女とこどもたちのところに歩いて行く。夫の顔を見て驚く女。夫は構わず、女のこどもたちに話しかけ追いかけ回す。
なによ、お似合いすぎやん。楽しそうにする女。ボールを追いかける夫と子どもたち。なに? もしかして全部仕組まれてるんちゃうん? 壮大なふたりの陰謀に。結局全部、なにもかもがふたりの作戦で、それにただただ巻き込まれてるだけちゃうん? わたしたちって。




