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大好きな旦那は幼馴染と不倫中  作者: hitorigasuki


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第25話 鳥肌

 わたしたちは、一度ホテルに戻って息子を昼寝させたあと、会場の居酒屋に向かった。小さな店で亭主とその嫁だろうか、が経営しているようだった。息子のためにおにぎりなどを特別に作ってくれていた。集まる前にテーブルに準備されていたので、息子は勢いよく食べる。きっと女が事前にお願いしていてくれたのだろう。貸切になっていた。


 すげーな有名人、そして東京。


「あ? これ?」


 文香さんがスマホで、なにかを検索したようだ。


「これじゃない? やばー大川もモデルとかすげえ」


 洋服の通販サイトのモデルのようだった。笑える。バイトがモデルとか。わたしなんか小さなしょぼい会社の事務やし。


「ごめーん! 待たせました。あ、今日はよろしくお願いします」

「悠莉ちゃん、こんばんはー。蒼もおつかれー」


 亭主たちと、入ってきた女はあいさつを交わす。その後ろから、AOIが入ってくる。やば、やっぱオーラが違いすぎる。近寄れない。


 座敷に女と並んで座るAOI。かっこよすぎやん。美男美女すぎ。


「はじめまして、ゆりがお世話になってます」


 丁寧に頭をさげるAOI。


「ごめんなさい、本当に。もう少ししたら打ち合わせがあって、本当は明日やったんですけど、変更になって。まじですみません。ご馳走しますので、東京の夜楽しんで帰ってくださいね」


 なんよこの完璧そうな男。


「飲み物頼もう〜」


 女がみんなにメニューを差し出す。決まったタイミングで嫁が注文を聞きにくる。それからふたりのおすすめや亭主のおすすめの料理も注文した。すぐに飲み物がきて、突き出しが出てきて乾杯する。


「お酒ひさしぶりやわ」

「この間のパーティで飲んだきり?」

「うん、酔うかも」

「ええんちゃう? せっかく友達来てくれてるんやし。明日休みやろ?」

「いいん? 休んで」

「もちろんや、ゆっくり楽しんで。まあでもひとりで帰されへんから終わったら必ず連絡してや」

「大丈夫やってば」

「あかーん。この間も声かけられてたやろ?」


 なんじゃその、羨ましい会話わ。


「え? ナンパ?」

「いやーそんなんちゃうよ。勧誘勧誘」

「大川鈍いからなあ」


 離れた席から夫が口を挟む。


「鈍くないし」

「はは、ゆりはずっとこんなんですか?」

「癒し系です。ずっとこんなんです。な、類斗」

「あ? まあ、彼氏さんの前で言うのもあれですけど、あほっす」

「連絡先? 渡されただけやもん」

「それがナンパやってば、はは」


 楽しそうに話すみんな。わたしは息子の様子を見守りながら話を聞く。夫は「うんまー」とか言いながらマイペースに飲み食いしている。


「東京はどこか行きましたか?」

「悠莉に東京タワーとスカイツリー案内してもらいました」

「そっかー。ほんまはライブとか見に来てもらいたかったんですけど、ほんまにすみません。あ、これ」


 とAOIが差し出してきたのは紙袋だった。


「まじでここの豆大福うまいんでよかったら食べてください。ほんまに申し訳ないんですけど、打ち合わせ行きます。またいつでも来てください。結婚式は身内だけでひっそりする予定で。あ、申し訳ないんですけど正式に婚約とか結婚の発表してないんで口外だけは……」

「しませんしません、ていうかお土産までありがとうございます」

「ありがとうございます」

「すみません、気つかわせて。また遊びに来ますね」

「あ、日本でもツアーするんで地元戻るときはぜひ来てください」


 と言ってAOIは立ち上がり店から出て行った。


「ありがとう! 気をつけてねー」


 店の嫁が声をかける。女が靴を履いて後を追う。


「やばーAOIかっこよすぎ」

「まじやばい。鳥肌」

「しかも土産」

「自慢しかできひんわ」

「大川の友達でよかったー」


 女がしばらくして戻ってくる。夫はトイレに立っていた。そして戻ってくると、しれっとAOIが座っていた席に座りビールを注文する。ありえへん。ため息も出んわ。ていうかAOIを巻き込む作戦失敗や。一言も話しかけることすらできひんかった。

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