第24話 東京
それから東京に行けることになったのは、半年以上後だった。わたしたちはホテルを予約している。奏也くんや文香さんは帰るらしい。日向くんも。
近い席に予約した新幹線に乗り込む。息子は夫がいるから嬉しそうだ。1時間ほどすると退屈してきたので夫が抱っこして車内を歩いてくれた。
「楽しみやなー」
「なあ、東京とかいつぶりやろ」
「文香行ったことあんの?」
「うん、前付き合ってた彼氏と。旅行で行ったけど」
「でも別れた、と」
「うるさいなー」
3人は楽しそうにしていた。なんてことない会話でも楽しんでいる様子だ。わたしは少し離れた場所からそれを眺める。きちんとケータイも持って来ている。今日はAOIを含めて食事をする約束をしているようだ。
東京駅に到着。思っていたよりもひとで溢れている。女との待ち合わせ場所にみんなで向かう。わたしはベビーカーに泊まりの荷物を載せて運んでいる。
「やっほー! 悠莉〜!!」
文香さんが女を見つけて走って行く。夫の頬も緩む。ちらっと女も夫を見て微笑む。なにそれ。
「わーみんな! 明斗くんまで。ありがとう」
息子は女のところに駆け寄って嬉しそうに抱きつく。なに、やっぱり東京の女は違う。この間の何百倍も垢抜けていて、まじで有名人みたいだった。ていって、まあ有名人のフィアンセだもんなって納得。
「悠莉、めちゃくちゃ綺麗〜!! さすが東京!」
「ありがとう。でもなにもしてへんし、なまり抜けへんし……はは」
夫は女の隣に並ぶ。
「小さくなった?」
とか言って肩をくっつける夫。わたしは少しだけ夫が女の手を握ったことを見逃さなかった。
「なってへんし〜」
可愛く夫を睨む女。それからわたしたちはホテルに荷物を預けに行き、予約していたレストランで昼食を食べる。夫だけでホテルに行こうとしたけど、わたしも息子を連れ立って行った。
「蒼くんは?」
「仕事……。ほんと仕事ばっかり」
「でもいい部屋見つかってよかったなあ」
「そうそう、1番、蒼くんの職場から近いところにって」
「来年やっけ、ワールドツアー。大川も行くん?」
「迷ってるーでも行きたい気持ちもあるかな?」
「ええなー」
喋っていると料理が届いた。パエリアなど。シェアしながら食べる。息子はポテトを頬張っている。
「でも、ちょっとだけ来れるって、今日の夜は。ごめんなーせっかくやのに」
夫と女は離れた席に座っている。それなのに、なんかたまに目を優しく合わせて微笑み合ってるし。距離なんて関係ないってやつ? そうか。AOIはちょっとだけしか来れないのか。まあいい。
「いいよー悠莉がいるから。それにしても大変やなあ。悠莉はなにしてんの? 東京で」
「蒼くんの会社の事務ちょっと手伝ったり……あとは実は街でスカウト? されてさ、ちょっとしたモデルのバイトみたいなんもしてたりする」
「まじ?! すごー。さすが東京」
夫は、女が楽しそうに話すだけで嬉しそうだ。




