第21話 直撃
ついに息子の慣らし保育が始まった。息子は泣きじゃくったけど、保育士は慣れた手つきで抱っこして「いってらっしゃい」とわたしに手を振ってくれた。今日はたったの1時間半。
わたしはこの慣らし保育期間である14日間が終わったら、働き始める。だけどその前にやらないといけないことがある。
わたしはパソコンでタレコミ方法を調べる。週刊誌を検索すると、ページが現れた。わたしは音声データとともに情報をアップロードする。そして情報提供内容を記入。だけど、ニュースになったら……夫も悲しがるかもしれない。それになんかわたしの周り忙しくなりそう。てか夫も仕事クビ?
だめだ、週刊誌じゃ。
ラーのレーベルは? わたしはラーのレーベルを検索する。ラーと検索すると、動画や画像がたくさん出てくる。スクロールするとキリがない。
AOIの顔を見る。ボーカルのTOMA同様、綺麗な顔をしている。婚約者だなんてやべーなって思いながら、わたしは凝視する。レーベルにアポ取って不倫していることを言うか、それともAOIに直接言うとか。それとも女か……?
みんなに言うか? どうやったら、あの女を苦しみの底に落とせるんだろう。夫を悲しませずに。だけど、わたしは幸せなママのままで。脅すか……。おらおらって。
ラーのAOIの活動休止させる? てかさワールドツアーまで決まりそうなん? すげえな。ぐちゃぐちゃにしたい。あの女の今までの完璧な人生を。踏み躙りたい、ぎりぎりと。
とにかく女と接触して、青ざめる顔を見よう。
慣らし保育終わりに、女の家の近くを散歩する。女は買い物に行っていたようでビニール袋をさげて帰って来た。
「こんにちは、先日はどうも」
「こんにちは……」
女は明斗が動くのをぼんやりと眺めていた。
「この間、類ちゃんも休みやったから久しぶりに家族で水族館に行ったんですよ」
わたしは夫にお願いして行ってもらった水族館の記念写真を女に見せる。
「よかったですね」
「そう。子供が遊べるところもあるしさ、ゆりさんも結婚しはるんですよね? そしたら家族で行ってみてください。あ、でも東京か。あとさ、類ちゃんの幼馴染の人に言うのもなんやねんけど、わたしを求めてくるのがねすごくって。やっぱり2人目が欲しいみたいで、でもわたしも疲れてるのにさ……毎晩すごくて。出されまくりで……」
「へえ……」
「はは、幼馴染のひとにごめんなさい。昔の類ちゃんのことも知りたいんやけど、どんな感じやったんですか?」
「そうですね……」
「幼稚園から一緒なんでしたっけ?」
「まあ……でも鬼ごっこしたり、かくれんぼしたり。そんな平凡なエピソードしかないですよ。あ、類斗さんは、よく告白されるぐらい人気者でした」
「へえ、すごーい。でもほんまに困るぐらいの性欲でさ……どうしたらいいんかなって悩んでて」
「断ったらどうですか?」
「いやーもう抑えられない感じで」
「へえ」
「あとでも、なんかさー少し前から夜に出かけることが増えてて、ちょっと心配なんよね。類ちゃん、純粋やから悪い女にだまされたりしてないかなって」
「そうなんですか、それは心配ですね。サッカーじゃないんですか、奏也とかと。よく蹴ってるって聞きますけど。奥さんにぞっこんなら心配いらないんじゃないですか?」
「まあ、そっか。ありがとうございます。変なこと相談してすみません。でも幼馴染さんやってことやし、もしなんかわかったら教えてもらえませんか?」
「直接類斗さんには聞かないんですか……? 夫婦で話し合った方がいい気が……」
「夫婦って色々あるから……まあ訊いてみるわ。ありがとう」
なんであんなに冷静なのよ。腹たつ。帰ってビール飲もっと。なんか本当に他人事だし。どうすっかなあー。もっと苦しめたい。




