第15話 卒業アルバム
わたしは、夫の卒業アルバムを手につかむ。カバーから取る。ドキドキしながらページをめくる。
こいつや絶対に……大川悠莉。
祥子たちが電話口で言っていた女の印象に合致する。アルバムの写真やのに、なんでこんなに可愛いねん。小学校も幼稚園も一緒? 幼馴染ってやつ? ありえへん、純粋そうな顔しやがって。死にたくなるぐらいの屈辱味合わせたるんやから。でも夫は傷つけたくない。どうしたらええんやろ。
このまま放し飼いにもしたくない。仕事で早く行った日も会ってたん? 飲み会やって言ってた日も会って、やってたん? わたしとはやらんのに。なにが違うん? わたしと女の。じゃああの日の告白はなんやったん?
いつからこのふたりは関係持ってんの? 地元に戻ってきてから? 息子が泣いている。床に涙と涎が混ざったものの水たまりができている。汚い。わたしは無視する。すると背中に勢いよく抱きついてきた。
どうしたらええんや。この女に叩きつけてやりたい、わたしたちの愛を。どうやって近づこう。
「ただいま」
夫の声が玄関から聞こえた。わたしは、駆け寄る。
「明が泣いて泣いて疲れたわ」
「大丈夫? よしよし」
夫はペーパーで床を拭いてから、息子を軽く抱き上げる。すぐに泣き止む。
「明斗を風呂入れて寝かしつけてから、ちょっと出かけてもいい?」
「え、あ、うん」
行かせたくない。でも現場を抑えるチャンスかもしれない。わたしは思う。そっと、車に乗ろう。バレないように。明斗は寝たらしばらく起きないだろう。
自分の完璧な計画に驚く。夫はささっとごはんを食べ片付けると、明斗と遊びながら風呂場に向かう。わたしはふたりの洗濯物を見ながら、ドキドキする。
今日吐かせてやろう、全部。でもそれからどうしよう。
少しして呼び出し音がしたので、わたしは明斗を風呂まで迎えに行く。湯船から立ち上がった、夫の性器に目がいく。そしてドアを閉める。タオルに包んで、息子を床におく。体を拭き、保湿剤を塗る。わたしのことをじーっと見ている。
「ママ、負けへんからね」
「ひゃは」
夫との風呂で機嫌をよくした息子は扱いやすくなっていた。夫が風呂から出てタオルで体を拭く音が聞こえ、ドライヤーの音もした。それから歯磨きをして、寝室にふたりで向かう。すぐに寝たようで、寝室から夫が出てくる。
「ごめんな」
夫が出て行く。わたしも慎重に後を追う。車に乗り込もうとしたので、わたしは荷台に入って、夫がドアを閉めるタイミングで一緒に閉めた。音が重なる。




