第14話 目撃
《咲良の旦那さんテーマパークにいるところみたけど、今日行ってた?》
今日は友達とテーマパークに行くということは聞いている。祥子から電話がかかってくる。
「ごめん、今大丈夫?」
「うん」
「いやーそのさーわたしと香織で行ったんやけど、旦那さん見たんやん」
「うん」
「ごめん、聞きたくないかもしれへんけど、前と同じ女と手繋いでたよ」
「そんなわけないやん。まあ、地元の仲間やから女もおるやろうけどさ」
「いやーそのーふたりっきりやった」
そこで電話口が香織に代わる。
「キスもしてた」
「え」
「え? ってなってふたりで。だから尾行というか、後ろ並んでんけど、ずっと寄り添ってるし、キスしたり、見つめ合ったり。すごかった……」
「どんな女やったん?」
「言いずらいけど……お似合いというか、清楚で純粋そうな柔らかい雰囲気のめちゃくちゃ可愛いひとやった」
「人違いやって、絶対。はは、この間言われたからメール見たけど、なんもなかったで?」
「そうかな……はは、ごめんごめん。忙しいのに。まあまたね」
電話が切れたのに。わたしはケータイを耳から離せなかった。ふたりの言葉がまだ残っている。
「え? ってなってふたりで。だから尾行というか、後ろ並んでんけど、ずっと寄り添ってるし、キスしたり、見つめ合ったり。すごかった……」
リピートされる言葉。完全に黒だ。連絡取らずに会ってるの? それとも削除してるとか? どうでもいいか。でもどうするの? 知ったところで、じゃあ別れるってこと? 慰謝料でも取って? いやいや金なんかいらんし。
《いまどこ? もう帰ってくる?》
返信がない。まだ女と一緒なのだろうか。息子とふたりで風呂に入っていると、戻ってきた。風呂のドア越しに声をかけられる。
「ただいま、ごめん。ケータイ見てなかった。明斗ありがとう。風呂から上がる時言って」
「なあ、奏也くんたちと行ってたん?」
「なに?」
「今日のテーマパーク」
「うん、あ、ごめんお土産買いそびれたわ、ごめん。今度は大きくなったらみんなで行こうな」
女ってだれ? わたしは風呂からあがって、自分のケータイを手にして祥子にメールする。
《嘘つかれた。黒やわ……。今度、おったら教えてくれへん?》
だけどそこまで打って、メールの文章を削除する。ダメダメ、わたしは幸せな家庭のママなんやから。不倫なんてありえへん。
髪の毛を乾かす。目の前では、パジャマの息子と楽しそうに遊ぶ、完璧な夫。この幸せをぶち壊す女は誰……?
絶対にあんたの幸せもぶち壊したるから。
でもわたしは絶対に夫を離さない。それに夫のことを傷つけない。
わたしたちには息子もいるんやから。それにもう法律上家族なんやから。あんたとは違う。




