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ドラノア侯爵の帰国

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 




 今日ものんびりと皆でお茶してます。

 マリエ夫人もお茶をしながら、折り紙を折っている。

「久しぶりにすると、なかなか難しいわ。」

 そう言って見せたのは手裏剣。

 何故に手裏剣?!

「ほらこれって小物入れにも飾りにもできるでしょ!組み合わせ自由自在じゃない」

 そういえば私も飴を入れて、友達にプレゼントたな。

 なるほどと思い、うんうんと頷いていると

 マリエ夫人の持っている物に、興味を示すアレクシス殿下。


「マリエそれなんだ?」


 満面の笑顔で聞いて来る。

 苦笑交じりにマリエ夫人は、アレクシス殿下に差し出す。

 受け取ったアレクシス殿下は眺めている。


「何かわかんないけどカッコいいな♪」


「殿下、それは手裏剣という物です」


 ニッコリ笑ってマリエ夫人は手を差し出す。

 アレクシス殿下は手裏剣を返す。


「いいですか、見ていて下さいね」


 そう言ってマリエ夫人は立ち上がり、手裏剣を眺め辺りを見まわした。

 そしておもむろに手裏剣を構え投げる。


 ”ビシッ”


 えっ、どういう事?


 ”ドサッ”


 落ちて来たのは、木になっていた果実。

 琵琶みたいなものだ。


「すっげー!!俺もしたい!!」


 そう言ってぴょんぴょん跳ねながら、手裏剣を強請るアレクシス殿下。

 回りはビックリしてみている。


「フフフ魔力で強化したからできたのです。アレクシス殿下は危ないので、紙のままで遊んでくださいね。」


「わかった!」


 アレクシス殿下はとても楽しそうだ。


「マリエ夫人、何故か構えが凄く様になっていましたが?」


「フフフ……旅行の時に、忍びの体験スクールに行ったの。楽しかったわ」


「そうですか…… 」


「私センス良かったの♪」


「そうなんですね…… 」


 そういえば私もしたわ。サバゲーを………

 職場の同僚に誘われしたわね。

 アラサーって、時々やる事が迷走するのよね。

 二人で遠い目をし、意味もなくフフフ、フフフと笑い合った。




 あれから城の雰囲気はかなり良くなっていた。

 あの訳のわからない噂も、バカげた話と誰も気に留めない。

 ユリウス殿下も、意味なく怖がられなったと言っている。

 ホント相当な被害受けていたアレクシス殿下。

 つくづく何てヤツだと思う。アマラ親子どもめ!!

 不審な者達も、かなり捕まったと聞いている。

 これで大丈夫ならいいけれど、まだまだ予断は許さない状況らしい。


「どうやらボクワイが動き出しそうよ。どんな動きをするかわからないわ。」


 そう言ってマリエ夫人が目を眇めどこか見ている。

 私は精神(こころ)を落ち着かせるためにお茶を飲む。


「アラ、あそこにいるのはドラノア侯爵じゃなくって…… 」


 どうやら隣国ボクワイから戻ってきたようだ。

 隣にはカロリーナが、儚げな雰囲気で寄り添っていた。


「ホント見るだけでムカつく存在ってあるのね」


 扇を広げ、顔半分隠し言うマリエ夫人。

 私も確かにと思い、扇を開く。

 ただいるだけなのに、ドラノア侯爵が連れて来たように見える。

 あの歩き方と距離感がそう思わせるのかしら。

 でもそれは功を奏さない。

 周りは不審げな目をカロリーナに向けている。

 だからどまどった目をして、まわりを観察している。


 ”お生憎様、貴女達の思惑には乗らないわ”


 私達はニンマリと扇に隠れ笑った。



 *****************


【 カロリーナside 】



 ”どういうことなの。”


 私はバッハシュタインに来て、思ったのはそれだった。

 だってなぜか皆、機嫌良さげに働いているのだ。

 ホントなら上の者の噂で、あちらこちらに不審げな空気があるはずなのに………


 ”どういうことなのよ。”


 いない間に何かあったのだろう。

 予定とは違う状態になっていた。

 ドラノアと城の敷地内を歩いていると、いっそう賑やかな場所に出る。

 沢山の使用人や騎士達もいて、憩いの場の様な雰囲気だった。

 ドラノアも気になるのか、眉をひそめてそちらに向かって行く。


 ”何なのよ?!”


 そちらに向かって行くと、使用人や騎士達がヒソヒソと話している。

 目線は私を見ているようだ。

 不審げなまなざしは人を不愉快にさせる。

 歯茎をグッと食いしばり、今の状態を我慢した。

 それが途轍もない腹が立ち煮えくり返る。


 ”たかが家畜が偉そうに…… 群れを成して何なのよ!!”


 家畜の匂いを気にする様に、ハンカチで鼻と口を覆う。


「カロリーナ、先に帰っているか?」


 ドラノアが私をチラッと見て聞いて来る。

 感情の読めない眉間のシワがなんとも不機嫌そうな顔だ。


「い、いいえ…… 」


 私は震え怯えた様に応える。


「そっか…… 」


 それ以上何もないように、歩いていくドラノア。


 ”こんなに健気に応えたのに、そっかって面白みのない人だわ”


 つくづく不愉快だわ。

 ここの国は存在するだけで不愉快だ。

 と言ってもどこの国も同じですけどね。

 キモチの悪い力を身に潜めて存在する。

 考えただけでも悍ましい者達だ。

 ボクワイ城の奥深く、魔石の原料以外使い道がないだろう。


 ”ホント全て亡くなってしまえばいいのよ”


 そうしたらスッキリするのにとつくづく思う。


 ”でも原料は必要よね。先達が失敗したから、私達はホント大変だわ。”


 それを考えると業腹だが、慎重にならざる得ない。

 そんな事を考えドラノアに付いて行くと、そこには黒髪(えもの)がいた。



 *****************



 ドラノア侯爵が、カロリーナを連れて私達の所へ向かってくる。

 ユリウス殿下がすぐにチヨちゃんを回収して、ギルバート侯爵に預けた。

 ガウェイン殿下はニコニコ笑いながら、私達のいるテーブル席に着く。


「フフフ……面白ことが起きそうだね」


 不謹慎にもワクワクしているようだ。

 マーベルを見ると、ユリウス殿下の隣でのんびりと話している。

 でも目線はドラノア侯爵達にくぎ付けだ。

 アレクシス殿下は相変わらず、紙飛行機で遊んでいる。

 それを追いかけ、ドラノア侯爵を気にしているヨシュア。

 ガーランドは二人を見つつ、警戒している様。

 皆が皆待ち構えた状態だ。

 そんな中でも、飄々と気負う事なくやって来るドラノア侯爵。

 さすがとしか言いようがない。


「ホント凄いわね…… 」


 マリエ夫人は目を伏してポツリと言った。

 確かにそうだ。だからこそ気を抜けない。

 そんな私をガウェイン殿下はジッと見つめ、ニヤリッと笑った。


「これはこれは皆さまお揃いで、とても賑やかですな」


 にこやかとは言いがたい顔で言うドラノア侯爵。

 相手するのはユリウス殿下だ。


「ドラノア侯爵。世話になったな。無事届けたか?」


「ええ、老体には少々キツイ旅路だったとは思いますがね。」


 そう言ってカロリーナを見る。

 カロリーナは怯えた風に急ぎカーテシーを執った。

 見る者が見たら、怯え畏れた風に見えるだろう。

 ユリウス殿下もチラッと見るだけで何も言わない。


「ご苦労だった。今から陛下の所か?その後は身体を休まれよ」


「ありがとうございます。ところで、アレクシス殿下が遊んでいる物は紙飛行機ですか?」


 ドラノア侯爵が、ユリウス殿下に訊ねる。


「ああ……… そうだがドラノア侯爵は()()()()()のか?」


「ええ、まあ私も少し習いましたからね」


「そう言えば、ハルアナ王女が作ってましたわね。」


「母上が、か……… 」


「ええ、殿下に興味を持って貰おうとされて、作られたはず……… 」


 そう言って困った風に笑うカロリーナ。


「フフフ……興味を持ったのは貴方でしたわね」


 そう言ってソッとドラノア侯爵の腕に手を添えた。

 ドラノア侯爵はスッとカロリーナを見て、ユリウス殿下を見て頷く。


「なかなか奥深くものですな。幾つか教えて貰いましたが…… どうやら私のお気に入りはない様ですな」


 そう言って微かに笑った。とても寂し気に………

 私達はガウェイン殿下にカロリーナを、ここに呼んで貰う事にした。

 ソッとユリウス殿下を見るとやや茫然とし、マーベルがフォローに入っていた。





 *****************





 向こうの方では、ドラノア侯爵が折り紙を折っている。

 どんな紙飛行機が出来上がるのだろうか?

 凄く気になるが、こちらはこちらで気が抜けない。


「初めましてかしら。ドラノア夫人」


 扇で口元を隠しひっそりと笑い、声をかける。

 身分的には同等。だが相談役に収まったマリエ夫人。

 立場的にはこちらが上だ。

 私は5歳児のように、無邪気にお菓子を食べている。

 食べないと、胃に穴が開きそうだしね。


「こちらこそ…… お初にお目にかかります。グラッセ侯爵夫人」


 目を伏せてゆっくりと言うカロリーナ。


「こちらに戻って来たばかりなの?」


 ガウェイン殿下が、紅茶を飲みつつ聞いた。

 カロリーナはそのまま目を伏せてハイと応える。

 私はその間も黙々と食べる。

 何も言う事ないし、いたたまれない。

 そんな私が気になったのか、カロリーナがこちらを見た。


「ああ、彼女はカスタネエ公爵のご令嬢でリディアーヌだ」


「初めまして、リディアーヌです」


 そう言って挨拶をする。以上他に言う事はない。

 その間も向こうでは、何故か賑やかで騒がしい。

 一体何があったのだろうか。

 私もあっちに行っていいだろうか?

 チラッチラッと見る私。

 そんな私を苦笑交じりにカロリーナが見ていた。


「カスタネエ令嬢はアレクシス殿下の婚約候補と窺いましたが…… 」


 私は眉をひそめて不機嫌な顔をする。


「ドラノア侯爵夫人、えらく不躾な質問だね。初対面に対して失礼なのでは?」


 ガウェイン殿下が注意をした。

 それに対して慌てて謝るカロリーナ。

 でもその目は、私をジッと見ている。


「彼女はチヨの友人なの。アレクシス殿下とチヨもなかよしで、何故かアレク兄と呼ばせているわ。彼女達はまだ5歳よ。遊び盛りだわ」


 そう言って笑うマリエ夫人。

 でも私はそれどころじゃない。


「マリエ夫人。チヨちゃんアレクシス殿下にアレク兄って呼んでいるの?」


 そう、そこがとても重要なの。

 どういうこと?なんでアレクシス殿下が、チヨちゃんと話しているの?


「確かにチヨちゃんはアレクシスにアレク兄と言っているな」


 ガウェイン殿下がクスクス笑いながら話す。

 そんな私を憐れむ様に背中を摩るマリエ夫人。


「最近グラッセ侯爵令息とよく一緒にいると伺いまして、申し訳ございません。親類で気にする者がいたものですから、代わりにと思ったもので」


 そう言って悲し気に弱弱しく言う。


 ”ホント言う事はズゲズゲ、態度は弱弱ってムカつくわね”


 久しぶりに悪役令嬢リディアーヌが参上しそうだわ。


「マーベルはチヨちゃんのお兄さんよ。ついでにマーベルと呼び捨てするのは「そう言えば蹴ったんだよね。マーベルを」」


 かぶせる様に言うガウェイン殿下。


「兄上が言ってたよ。あの日以来マーベルは、リディアーヌ嬢の下僕だって」


 クスクスと笑って言うガウェイン殿下。

 それを可笑しそうに頷いているマリエ夫人。


「下僕ですか?」


 カロリーナが、あり得ない者を見るように私を見た。


「兄上にも確か水をぶっかけてるし、怒鳴り散らしたんだよ。実際僕も、僕の側近もそれを見ている。彼女は二人のボスだよね。」


 とても楽しそうに言うガウェイン殿下。

 カロリーナは「ユリウス殿下まで…… 」と二の句が継げない様子だ。


 私は思った。

 なんか私に対して酷くない?!


 つくづくこのテーブルから、離れたくて仕方がなかった。




 *****************


【ドラノア侯爵 】



「何か面白い情報は手に入ったのか?」


 私はカロリーナに聞く。

 屋敷に帰る間、ブツブツと言って考え込んでいるカロリーナ。

 ハッキリ言って不気味だ。


「カスタネエ公爵令嬢のお話を伺ったの。」


 ああ、そう言えばグラッセ侯爵令息の番じゃないかと言われた令嬢だな。

 なるほど確認して、もしそうなら連れて行こうという事か。


「それでどうだったんだ?」


 私は強めの酒を飲みながら聞く。

 最近酒でも飲んでないとキツイからだ。


「貴方………最近お酒の量が多いのではなくって?」


「へえ………心配してくれるのかい?」


 私は可笑しそうに聞く。

 彼女は憎々し気に私を睨み、続きの話をする。


「どうやらグラッセ侯爵令息の、というかユリウス殿下もそうなんだけど、彼女に頭が上がらないそうよ」


 困惑気味な表情でいうカロリーナ。

 しかしそれは私も同じだった。


「君は何を言っているんだ?」


「わかってるわよ。私も可笑しな事を言っているって、でもあの子「だってあんまりにも弱っちいんですもの。発破かけて差し上げただけですわ」って言ってたわ。あの子なんだか恐ろしい子だわ」


 カロリーナが恐ろしいと言われるリディアーヌ穣。

 なるほど、なかなか面白い事になっているようだ。


「君が恐ろしいとはな。私も話をすればよかった」


 ホントに残念な事をした。


「フン…… そんな暇も時間もないわよ。予想以上に城の状態が宜しくないわ。ホントにどうしてくれようかしら。どうやら部下も見当たらないし……… 」


 そう言って、ブツブツ言いながら部屋へ帰って行った。



 私はそれを見送り、またそのまま酒を飲む。


 ”暇も時間ないか………”


 どうやら近々仕掛ける様だ。

 それがどんなものなのかわからない。

 何だかんだと私を警戒しているのだろう。

 いつも肝心要な事は、終わって気付くようなものだからな。

 それが何よりも悔しい。

 手元には、今日折った紙飛行機があった。

 久しぶりの紙飛行機。

 懐かしくて愛おしい。


「ハルアナ王女、今日紙飛行機をユリウス殿下にお教えいたしました」


 私はそう呟いて、ソッと紙飛行機を飛ばす。


 紙飛行機は、微かに羽ばたき、旋回して静かに落ちた。










読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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