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魔道具イグドラシル

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。


不愉快な表現があります。

 

【 隣国ボクワイ 】



 ”カツーーー……ン”


 無機質な音が響く。

 時々忘れた頃に音がする。

 でも誰もそれに疑問を持たない。


 ”カツー---……ン”


 皆が虚ろだ。

 そこには人の姿をした人形がいる。

 意味もなくいずれいなくなる。


 ”カツー--………ン”

 それがボクワイに住む人達

 朝が来る日が昇る


 ”カツーン”


 ”カツン”


 ”………”


 音が止まり鳴らなくなると

 少しずつ


 ”ザワ… ザワ……”


 人が活動する音がする。


 ”ザワ…… ザワザワ……… ”



「相変わらず気味の悪い国だな…… 」


 ドラノア侯爵は、義母の移送に従事している。

 ユリウス殿下の愛し子に、謝って睡眠薬を飲ませたという物だ。

 義母のアマラは、相変わらず弱弱しく眉を下げ、困った顔をしてしている。


 ”この姿にどれだけの人が騙された事か”


 かくいう私もその一人なのだ。


 どうしてこうなってしまったのだろう……


 義母アマラの娘カロリーナは、儚げで哀し気な女性だった。

 だから私は彼女を幸せにしてあげたいと、彼女の望みを叶えて上げようと思った。

 面倒を見るたびに、私は大丈夫ですから、と寂し気に言う。

 何度か震えて言う事さえあった。

 遠くにはユリウス殿下が本を読んでいる姿。

 その姿を悲し気に見つめ、嚙み締めている。

 願いを聞いてくれないと言う。

 今思えば可笑しなことだ。

 何故王族が一々聞かなければならない。

 時々の刺激と恐怖で執着は強まる。

 お遊びの様な悪戯。

 裏であの二人はそれは愉しげに、困った顔をして嗤っていた。


 それを憎々し気に見つめるハルアナ王女。

 雁字搦めの束縛を何とかしようと足掻いた女性だった。




 ボクワイの王城に煌びやか貴族たちがいた。


「これはこれはドラノア侯爵。ご機嫌はいかがですか?」


 その中でも、この男の悍ましさはトップクラスだ。


「まあまあですが、他に聞きたい事でも?」


 ホントは話さえしたくないが、会えて訊ねてみる。

 大体予想はついているがな。


「フフフ……黒の乙女ですよ。どうですか?そろそろ確かめたい頃合いですかね?」


 そう言って、ニヤニヤと垂れ下がり気味の口と粘っこい視線には辟易する。


「彼女はユリウス殿下の愛し子ですよ。」


 私がそう言うと、義母とカロリーナはクスクスと笑っている。


「アナタ……女は良く孕む様に仕込まなくてはならないのですよ。その方が具合がいいわ」


「ええ、そうですわ。殿下では無理だわ。若いうちから慣らせば、たくさん子も生まれるでしょう。そう言う事よね」


 そう言って二人はクスクスと嗤う。

 なんとも愉しげで醜悪染みている。


「それが私の仕事です。貴族の方々も大変満足して頂いてますよ。あちらの具合もなかなかで。フフフ黒髪で乱れる姿はそそるでしょうね。華奢な身体を暴くのはとても楽しめるでしょう。」


 3人の醜くい腐った嗤いを聞きながら私は想う。

 私の可愛がっていた猫たちの無残な姿。

 切り刻まれ、皮をはいだ様な跡。

 ハルアナ王女は見ていたのだろう。

 青ざめて震えていた。

 自分達の残虐性を全て人のせいにし愉しむ。

 伝えたくても伝えられないジレンマ。

 何としても阻止しなければ………




 ******************


【 王城執務室 】



 ここ最近はホント心休まる時間がない。

 今の私は心底チヨちゃんを抱っこしたい。

 こういう時こそ癒しはホントに必要だ。


「陛下、私も癒されたいですけどね」


 メイソン(宰相)がジロリと睨む

 実際これから始まる話は現実逃避モノだ。

 もうホント逃げ出したい。

 でもそんなことしたら、ホントの地獄の始まりだ。


「それでは地獄の会議を始める。逃げたいけどな」


「誰だってそうだろ……」


 アーサー(騎士団長)は、げんなりとした顔でいう。


「大体なんで、こんなに後手に回ったんだ?」


 私がそう言うと


「乳母のアマラとカロリーナによるものです。現在その罠は発動しつつあるようですね。」


 メイソンはそう言って、ここ最近の城内の噂をまとめた物を見せた。


「使用人をうまい具合に使い、人の良心や隙間を突くのが凄く巧みだ。単なる婆さんと思ってたら、先王の愛人だった。」


 アーサーもあれから、いろいろと動き回ったようだ。


「それどころか、映像や録音を見聞きする限り主導権があるよ。」


 ガウェインは言うが、私はそれが申し訳なくて仕方ない。


「ガウェイン、大人でも辛いものだ。これからは私達が見よう」


 子供のガウェインが見るモノではない。


「父上、その気遣いは無用です。僕はいろいろと振りきれてしまったので」


 ガウェインは私を冷めた目で見返す。


「ロバート(陛下)先に進もう。ガウェインはもう怒り狂っている。実際私もそうなのだがね。皆も一緒だろ?」


 まあ確かにそうだ。他の者も静かに頷く。


「アンリ(ルデア大司教)、教国ではどんな感じだ?」


「皆恐慌状態だ。しかしそんな事言ってられないからね。時間がなさ過ぎなんだ。秘された理由もバカげた理由からだ。魔物を悪と考え、黒を纏う者を魔の者とした時期があった。その時に古の地の一族は断罪された。不可思議な魔道具を作るからとね。そうしてルデア教国としての地位を上げたんだ。ちょうどボクワイが出始めた頃だ。つまりグルなんだろう。」


 ガウェインは、アンリから渡された書類を皆に見せる。

 そこにはとんでもない内容が書かれていた。


「何故今まで知らなかったのですか?」


 皆蒼白顔でアンリを見る。アンリも肩をすくめて言う。


「今までの基礎経典はその王が作った物だ。第一教皇ゼルネアス。神へと至った教皇と言われる者。実際は邪悪な存在だったけどな」



 ******************


【 隣国ボクワイ 】




 グフフフ……もう少ししたらここも楽園になるのでしょうね。

 私は楽しみで仕方がない。

 王城の地下深くそれは存在する。


 ”グカツー---ン”


 不気味な心地良い音を奏でる、古の地の魔道具【イグドラシル】。

 脈動の見える艶めいた水管は、動く度に煌めく揺らめく。

 管からうっすらと血が、生き生きと動いてる様はいつ見てもイケる。

 ホントにゾクゾクします。

 下を見れば、管に繋がれた人だったモノ達。

 呻き声や慟哭と怨嗟の声が心地良い空間を作っている。

 ああ、そろそろ古の地の血を足さないと止まりそうですね。

 そう、厄介なのは古の地の血が特別という事。

 それがすごく業腹だった。


「これはボクワイの物です。こんなに艶めいて使ってあげて、何が気に入らないのか」


 この時ほどこれが、古の地の物だと実感する。


「ああ、そろそろストックもないのです。臓器もすり潰して使ってますが、新鮮さには程遠い」


 ホントに頭にくる。これだけ可愛がってあげたのに一向に増えず減っていくのみ。

 魔力がないと増えないとか、魔力があっても発動させないとか、いろいろと聖約があるようだ。


「バッハシュタインで、増えそうと聞いた時は嬉しかったですが、やはりある程度大きくなったら管理しなくては」


 もう少し時間があれば、あのまま黒を増やすつもりだった。


「どんどん産めばいいのに、やはり自然ではいけないのです。捕獲して繁殖ですかね」


 じゃないとこの魔道具は止まってしまう。

 もうそれしかない状態だ。


「早くして欲しいですね。カツカツの状態でもいい魔石を産んでくれます。新鮮で力ある血ならどれほど美しいのでしょうか。」


 それを想像するとホントにたまらなくない。


「アレはダメですね。そろそろ交換です。」


 もう取れる血はない様で、シワシワの皮と浮き上がった管がなんとも滑稽で無様だ。

 魔力があるほど動くのは確かですからね。

 フフフ原料は沢山あるのです。

 起動力の古の地がいればいいのですから、最低でも一匹は確保したいものです。



「ただいま戻りました。陛下、長い間お暇をし申し訳ございません。ただ時は満ちたとお伝えいたします。」


「そうか………ではそろそろ動くとしよう」


 草臥れただらけ切った身体に、嘲笑を刻んだ顔で言う。


「先王はいかがお過ごしでしょうか?」


 恥ずかし気な表情で頬を染めて聞く。


「首を長くして待っておろうよw」


「左様でございますか。嬉しゅうございます」


 いくら歳を取ろうと女は女。

 愛しい男が待っていると知れば、女の顔でほんのりと笑う。


「ドラノア侯爵はいかがした?」


「疲れたと言って床に、カロリーナがついております。」


 だらしなく座るボクワイの王は嘲笑を浮かべ言う。

 。


「フフフ……この地の瘴気にやられたか」


 嘲りの交った目で、互いに見つめ合う。


「それでは失礼いたします。」


 アマラは、頭と腰を下げ退室していく。


 ”パタン”


 静かに謁見の間の扉は締まった。



 ******************


【 チヨside 】



 何だかみんなバタバタしている。

 どうしたんだろう?

 リディアーヌもあっちこっちと動いている。

 時々不安そうで、哀し気でどうしたんだろ。

 リディアーヌはプンプン怒っている時は可愛いと思う。


 目の前のユリウス兄は、いつも通り何かを作っている。


 今日はアレク兄が遊びに来た。

 リディアーヌが教えてくれたと、チヨに見せに来た。

 紙で織られた不思議なモノ。

 アレク兄が作ったそうだ。

 チヨにも折り方を教えてやると紙をくれた。

 アレク兄が教える様に折る。

 でもアレク兄の折り方はかなり汚い。

 角そろえた方が、いいんじゃないかな?

 角はとんがった方が、いいと思うよ?

 出来たという、アレク兄のかみひこうきを飛ばす。

 そのままベチャッと落ちた。

 私はキョトンとする。

 フワフワ飛ぶって、言ってなかったっけ?

 チヨは自分のかみひこうきを見る。


 ”行きます。”


 思いっきり腕を振ってぶん投げる。


 ”ベチャッ”


「「………………」」


 飛ばないよ??

 チヨはアレク兄を見る。

 アレク兄も、眉間にシワを寄せ考えていた。


 そんな二人を、遠くから見るユリウスは思った。

 飛ばすには、投げ方がおかしくないか?………

 もちろん、アレクシスの飛行機の折り汚さは論外だ。



 ******************


【 マーベルside 】



 はっきり言おう。

 俺は天国から地獄に堕とされた。

 俺は最近婚約者が出来た。

 めちゃくちゃ可愛い女の子。

 見た目淑女の様にしているけど、実はすこぶる破天荒な女の子。

 発想も行動も予測不可能で、見ていて楽しい。

 一緒に行動しても、ワクワクが止まらないのだ。

 それに時々甘えて来るし、頼りにされたりもする。

 それが、俺の心を凄く擽るんだ。

 俺の男として矜持が満たされる。

 でも俺がどうしようもなく落ち込んでいると、優しく包んでくれる。

 俺はまだ成人もしていない子供だけど、コイツを絶対離せない。

 どうしようもなく、心が身体が惹かれる。

 ユリウスが言っていた。

 そう言う歳になるとわかると………

 なるほど………つまりそういう事だ。

 俺はこれからさらに、大人の男に成長していくのだろう。

 多分いろいろ葛藤があるんだろうな。

 だってまだリディアーヌは5歳だ。

 いつになったら、そう言う意味で触れ合えるのだろう。

 道のりは途轍もなく遠い。

 なのにガウェインの奴!!


 俺はリディアーヌと引き裂かれる。


 婚約してからいつも一緒にいたのに。

 我慢しなきゃいけないけど、いつも近くに居れればいいかと思ってたのに!!

 物理的に離された。

 それも男ども3人もいる所に!!

 俺がリディアーヌからフラれたりしたら、マジでガウェイン殺す。

 大体なんだよ。陳腐なセリフの加護って!

 訳わかんねぇよ。

 アレは絶対ガウェインが、陥れた何かじゃないのか?!


 リディアーヌがアレクシス達と遊んでいる。

 以前も見た事あるけど、好きになってから見ると途轍もなく妬ましい。

 腹の底から、何か訳の解らないモノが溢れてくる。


 ”リディアーヌは俺の(もの)なのに…………”


 ドロドロとした何かで、頭が可笑しくなりそうだ。

 ハア~… おかしいな?

 俺がホントは監禁ヤンデレキャラじゃないの?

 そのキャラ設定であるユリウスが、今は心底羨ましい。

 なんだよ。


 ”二人の世界はどこまでも美しい”って


 俺なら


 ”お前をどこまでも掴んで離さない”かな。


 とにかく……

 今の俺は、かなり病んでいるという事はわかる。

 誰にも言えねぇけどな。

 早くラブラブできる状態にならねぇかな……


 ままならない気持ちを抑え、俺はため息をついた。




読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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