夜景
「わぁっ!星形の遺跡が光ってる!」
青白い光がキラキラと輝いている。
「魔晶の色はだいたい赤色系統なんだ」
と、シーザーさんが告げる。
確かに。元々の色は赤色系統が多い。珍しく他の含有物を含んで色が変わる場合もあるし、もしくは別の魔力を混ぜることで他の色に輝くこともある。
私たちは遺跡群のすぐ傍にある小高い山の上に来ている。山と言っても本格的な登山が必要なものではなく、小中学生が遠足で行くような山で散策路完備の元、夜景を楽しめるスポットとして人気だそうだ。
ついでに展望台もあり、そこから遠くまで見渡すこともできるようで。
「青白い。水の魔力とか光の魔力が混ざっているんでしょうか」
「その可能性はあるな」
と、シーザーさんが頷く。
「けど、こうやって高台から光って見えるってことはあれは城塞のようなものとは違うのでしょうか?」
「うん、確かに塔の跡もあるし。塔があったってことはそれが目印になっていたんだよね」
アリシアも頷く。
「誰かに何かを伝えるため?」
昼間に脳内に流れてきた膨大な声。そのニュアンスと言うか、流れてきた感情は。切なく、寂しい。哀しい。
「ルビーノーグンが祀ってきた魔神さまが哀しんでいるのと関係があるのかな」
ヴィーダーシュプルフ公爵領神殿の神官長・ゼーラさまが教えてくださった言葉によると、魔神は哀しんでいる。どうして?ルビーノーグンがこの地を離れたから?
私は帝国に逃れた子孫であるお父さまの血筋だから違うけれど。少なくともヴィーダーシュプルフ公爵家にはいたんだよね。ザカリィと王都の神官長・ルークさまのお母君で先代正妃さま。先代正妃さまはどんなことを語りついで来たんだろう。
それが分かれば。
それとも彼女もあの膨大なな声を語り継いだのだろうか。
「あの、シーザーさん。ご存じだったらでいいのですが」
「何だ?」
「先代の正妃さまはどちらで成人の儀をされたのですか?もし、先代の正妃さまがルビーノーグンの子孫なら、水晶玉が赤く輝いたと思うんです」
「う~ん。叔母上は先代と違って王都で主に暮らしていたというからな。王妃教育のため王城で勉強していたはずだから」
あぁ、確かに。帝国から嫁いできたラーシュ国王陛下のお母君とは違い、先代国王陛下の妃になる方だで、先代公爵の妹君だった方だ。小さな頃から婚約関係にあったとしてもおかしくはない。
まぁ、当時王位に就く予定になかったラーシュ国王陛下は、現王妃殿下であるお義姉さまとは小さな頃からの婚約関係ではなさそう。何たって100回くらいプロポーズしたらしいし。戦場で互いに背中を預け合った絆で結ばれたのかもしれない。
「だが、水晶玉が赤く輝くなど初耳だぞ。帝国でも聞いたこともない。もしルビーノーグンの血筋で仮に女性のみに発現するとすれば、ウチの母と叔母もそうなるはずだ」
と、お父さま。確かにそうだよね。
「もしくは、伝承だけを受け継いで巫女の資格を持っていなかったか」
「女性だから選ばれるわけじゃないってこと?」
「ん~、聖女もそうだろう?」
「聖者もいますけどね」
と、アレン。確かに。神官なら全員聖者とか聖女と言うわけじゃないし。南部の先住民なら全員と言うわけじゃない。
「もしかしたら、北部に湧き出る魔力の素」
と、ザカリィ。
「考えられるな。あと、あの光。リューリ嬢が息をした時に吐いた時に見えたキラキラに似ている名」
と、シーザーさん。
「ここの魔素に反応しているんですかね」
―――あの、水晶玉も。
「まぁ、その伝説が残っているのも、ゼーラの話を聞く限りは北部のみ。と言うか俺も知らんかったぞ」
と言うことは長い間伝説が残るくらいに発現していなかったということだ。
「何でだろう」
「・・・」
「ザカリィ?」
何故かザカリィがムッとしている。
そしてぎゅむっと腰を抱き寄せられる。
「あのっ、急に何で?」
「リューリに俺の知らない秘密が隠されていそうでイライラする」
何そのイライラ―――っ!!!
「全くガキだな」
「言わんでやってくれ、オーヴェさま」
お、大人組の慰めのせいか、風が冷たいなぁ。
「そろそろ戻りますか。下に馬車を待たせています」
「うむ。冷えてはいけないからな」
『はーい』
ガイド・アレンと、アリシアの言葉で私たちは麓に付けている馬車で領主邸に帰邸することになった。




